アンカー (リレー)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/29 03:28 UTC 版)
アンカー(英語: anchor, anchor leg)は、リレーレースにおいて、最後に競技する者。一般的には、チームの中でも最速、ないしは、最も経験豊富な競技者が、アンカーを務めることが多い。アンカーは、先頭走者に追いつくか、チームメイトたちが作ったリードを保ったまま競技を終える責任がある[1][2][3]。
陸上競技
「ブレット(Bullet=弾丸)」と渾名されたボブ・ヘイズは、1964年東京オリンピックの陸上競技において、アメリカ合衆国の400メートル(4×100m)リレー走のアンカーを務めた。5位でバトンを受け取ったヘイズは、先行した4人を抜き去り、優勝した。競走相手であったフランス・チームのジョスリン・デルクールは、アメリカ・チームの先頭走者だったポール・ドレイトンに、「ヘイズ以外は何もしていないじゃないか (You haven't got anything except Hayes)」と言い、ドレイトンは「それで十分なのさ (That's all we need, pal)」と返した[4]。
カール・ルイスは、アメリカ代表として400メートルリレー走のアンカーを務めた全てのレースに勝利した[要出典]。アンカーとしての彼は、常に9秒以内で走り、5度に及んだアメリカ代表チームの男子400メートルリレー走世界記録の更新に貢献した[5]。1992年バルセロナオリンピックでアメリカ代表チームが樹立した 37.40秒という記録は、16年間も破られることがなかった[6]。
1984年ロサンゼルスオリンピックの女子リレー・チームでアメリカ代表のアンカーを務めたエベリン・アシュフォードは、9.77秒で走ったとされる。第1走者アリス・ブラウン、第2走者ジャネット・ボールデン、第3走者チャンドラ・チーズボローと組んだこのチームは、この競技の歴史上、最大の差をつけて優勝を果たした[要出典]。
ウサイン・ボルトは、2012年ロンドンオリンピックの400メートルリレー走で、ジャマイカ・チームのアンカーを務め、チームは 36.84秒の世界記録を出した[7]。
パム・マーシャルは、ローマで開催された1987年世界陸上競技選手権大会において、個人として女子100メートル競走の8位となった後、アメリカ代表として400メートルリレー走のアンカーを務め、決勝では東ドイツのアンカーであったマルリース・ゲールの 10.41秒を上回る 10.11秒で走り、優勝した。[要出典]
時には、個人競技において必ずしも最高級の成績を残さなかった選手が、リレーのアンカーとして素晴らしい成績を残すこともある。イギリスの400メートル競走選手であったフィル・ブラウンは、1600メートルリレー走のイギリス代表チームのアンカーとして、オリンピック、世界選手権、ヨーロッパ選手権などでメダルを獲得したが[8]、個人競技ではメダルを獲得したことはなく、予選を突破することも稀であった。[要出典]
イギリスのハードル競走のスペシャリストであったクリス・アカブシは、東京で開催された1991年世界陸上競技選手権大会の1600メートルリレー走イギリス代表チームにおいて、1996年アトランタオリンピック400メートル競走の銀メダリストで普段であればリレーのアンカーを務めるロジャー・ブラックに代わって、アンカーを務めることになったが、このレースでアカブシは、400メートル競走の世界チャンピオンだったアントニオ・ペティグルーを抜き去り、イギリス代表チームに優勝をもたらした[9]。1600メートルリレー走では、第2走者以降はオープンレーンとなるため、アンカーにも、基本的な走力に加え、通常なら中距離走選手に必要とされるような技術である、戦術意識、追い抜きの技術、他の選手を寄せ付けない身体的強さ、などが求められる。[要出典]
歴代最速のアンカーたち
順位 | タイム | 選手名 | 国 | 日付 | 競技会 / 場所 | 典拠 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 8.65 | ウサイン・ボルト | ![]() |
2015年5月2日 | 2015年IAAF世界リレー / ナッソー | [10] |
2 | 8.68 | アサファ・パウエル | ![]() |
2008年8月22日 | 2008年北京オリンピック / 北京 | |
3 | 8.78 | アカニ・シンビネ | ![]() |
2024年8月10日 | 2024年パリオリンピック / パリ | [11] |
ツァーネル・ヒューズ | ![]() |
2024年8月10日 | 2024年パリオリンピック / パリ | [11] | ||
5 | 8.79 | フレッド・カーリー | ![]() |
2024年8月10日 | 2024年パリオリンピック / パリ | [11] |
6 | 8.80 | リチャード・トンプソン | ![]() |
2015年5月3日 | 2015年IAAF世界リレー / ナッソー | |
7 | 8.83 | ライアン・ベイリー | ![]() |
2015年5月2日 | 2015年IAAF世界リレー / ナッソー | |
8 | 8.85 | カール・ルイス | ![]() |
1992年8月8日 | 1992年バルセロナオリンピック / バルセロナ | |
フィリッポ・トルトゥ | ![]() |
2021年8月6日 | 2020年東京オリンピック / 東京 | |||
10 | 8.89 | アンドレ・ドグラス | ![]() |
2024年8月10日 | 2024年パリオリンピック / パリ | [11] |
1964年東京オリンピックにおけるボブ・ヘイズのアンカー・タイムは、8.5秒とされ、何十年にもわたって伝説となっているが、これは手動計時であり、公式な記録ではない。記録された映像から検証すると、実際には、9.00秒であったと推定される。
水泳
2008年北京オリンピックにおいて、ジェイソン・レザックは、競泳アメリカ合衆国代表チームで男子の最年長者であった。彼は、アメリカ合衆国代表チームのアンカーを務め、金メダルを獲得し、世界記録を樹立した[12]。
2012年ロンドンオリンピックでは、マイケル・フェルプスが、男子4×100mフリーリレーのアンカーを務めて、オリンピック史上最高となる15個目の金メダル、他の色も合わせて19個目のメダルを獲得した[13]。フェルプスは、2016年リオデジャネイロオリンピックでも、再び4×100mフリーリレーのアンカーを務め、21個目の金メダル、他の色も合わせて25個目のメダルを獲得した[14]。
脚注
- ^ Ask the Coaches: Relay Strategy Archived 2014-05-23 at the Wayback Machine.. Running Times (2002-07-02). Retrieved on 2014-05-23.
- ^ Anchor Leg Archived 2014-05-23 at the Wayback Machine.. Los Angeles Times. Retrieved on 2014-05-23.
- ^ Missy Franklin's Unreal Anchor Leg Secures 800 Free Relay Victory for California Archived May 23, 2014, at the Wayback Machine.. Swimming World (2014-03-21). Retrieved on 2014-05-23.
- ^ Litsky, Frank (2002-09-20). Bob Hayes, Stellar Sprinter and Receiver, Is Dead at 59 Archived 2017-08-11 at the Wayback Machine.. The New York Times. Retrieved on 2014-05-23.
- ^ “Carl LEWIS”. Olympic Channel. 2020年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月26日閲覧。
- ^ “USA Men's 4x100m - Olympic News” (英語). International Olympic Committee (2017年3月17日). 2018年9月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月26日閲覧。
- ^ “USA Track & Field | Ashford's 100m record earns her USATF Throwback Athlete of the Week honors”. usatf.org. 2020年8月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月26日閲覧。
- ^ “Local Olympian to start 17th Great Midlands Fun Run” (英語). Great Midlands Fun Run (2019年6月1日). 2020年9月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月27日閲覧。
- ^ “Kriss Akabusi on the Olympic medal that changed his life” (英語). International Olympic Committee (2019年3月5日). 2017年8月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月27日閲覧。
- ^ “Usain Bolt Ran History's Fastest Anchor Leg at World Relays - Athletics Live Streaming, videos, news, results - Watch Athletics”. 2018年7月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年7月12日閲覧。
- ^ a b c d Men's 4×100m Relay Final Results - ウェイバックマシン(2024年8月16日アーカイブ分)
- ^ “12th 男子4×100mフリーリレーAnniversary of Jason Lezak's Epic Anchor Leg at Beijing Games (Video)” (英語). Swimming World News (2020年8月11日). 2020年8月27日閲覧。
- ^ “U.S. wins 4x200 freestyle relay gold, Michael Phelps sets career Olympic medal record” (英語). www.cbsnews.com. 2020年12月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月27日閲覧。
- ^ Auerbach, Nicole. “With Michael Phelps as anchor, U.S. 4x200 free relay wins gold” (英語). USA TODAY. 2020年3月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月27日閲覧。
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