アル・キンディーとは? わかりやすく解説

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キンディー【al-Kindī】

読み方:きんでぃー

800ころ〜870ころ]イスラム哲学者。アラブ人ギリシャ哲学移入し数学天文学医学など諸学にも広く通じた。著「知性論」は、のちのイスラム哲学出発点となった


キンディー

(アル・キンディー から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/14 14:48 UTC 版)

キンディー

アブー・ユースフ・ヤアクーブ・イブン・イスハーク・アル=キンディーアラビア語: أبو يوسف يعقوب ابن إسحاق الكندي; Abū-Yūsuf Yaʿqūb ibn Isḥāq al-Kindī, 801年 - 873年?)は中世イスラーム哲学者科学者数学者音楽家。広範な分野の著作のアラビア語訳を行い、諸分野、特にイスラーム哲学の基礎を作った人物である。数学を基礎として、天文学医学光学政治学弁論術、音楽論などから哲学に及ぶ広範囲にわたる著作二百数十点を著わした。ヨーロッパ語圏では、ラテン語化されたアルキンドゥス(Alkindus)の名でも知られている。 また、ペルシア人やユダヤ人の学者の多い中で、数少ないアラブ系の部族にルーツを持つ偉大な哲学者の1人であったので、「アラブの哲学者」という敬称も持つ。

生涯

イラククーファの生まれ。5世紀から6世紀かけて、アラビア半島の北部から中央部のナジュド高原のアラブ遊牧民を統合してキンダ朝を築いた名族キンダ族にルーツを持つ。父親は、クーファの役人であった。

キンディーは、クーファのほか、バスラバグダードで学んだ。彼の知識は抜群であり、アッバース朝の時のカリフ、マアムーンの目に止まり、キンディーはバクダードの知恵の館に呼ばれた。知恵の館は、ギリシア哲学やギリシア科学の著作をアラビア語に翻訳をする中心的な施設でキンディーは当地でアリストテレスの哲学書やプトレマイオスの『地理学』などを翻訳した。彼自身はギリシア語を解さなかったようだが、ギリシア語文献からの翻訳の依頼や、生粋のアラブの名族のひとりとして豊富なアラビア語の知識を生かし、それらの翻訳指導にあたっていた。特に、アラビア語による哲学語彙の確立に多大な貢献をしている。翻訳した範囲も哲学地理学論理学医学物理学数学天文学にも及びその翻訳書数も、260に及ぶという(しかし翻訳の大半は散逸してしまい、わずかに40程の作品が現存する)。

百科全書的に広範な分野に知識を持っており、当時は一級の学者としてその名が知られていた。特にキンディーはこの翻訳活動を通じて、イスラム世界にギリシア哲学、特にアリストテレスの哲学を移入させた功績は大きい。ギリシア思想などの外来の学問の浸透に批判的なアラブの保守層に対抗して真理の探究とその普遍性について説いた。また、彼の思想的特徴としては、神による無からの創造啓示の優位性など、「完全なる一者」から創造がはじまったとするプロティノス系の流出説が優位となる後世の哲学者たちには見られないものがある。マアムーンに続くカリフ・ムウタスィムのもとでも活躍し、当時のヨーロッパキリスト教文明圏で哲学が表舞台から退いていったのと対照的に、イスラームが哲学を継承していく機縁を作った。

特にキンディーの知性論の考え方は、後のイスラームの哲学者たちに引き継がれ、それは後のヨーロッパの中世哲学にも影響を与えたものになる。 また彼はフワーリズミーに先駆けて数学に暗号論を初めて導入した

しかし、やがてカリフが変わりワースィク、ムタワッキルの代になると、キンディーとの不和が生じた。さらに知恵の館に多くのライバルができ、さらには合理主義的なムウタズィラ派神学との親和性を持つキンディーの哲学は正統派イスラーム神学者たちから激しい迫害を受け、一時期著作も没収された。こうして不遇のうちに873年(866年という説もある)に没した。

著書「知性に関する書簡」が、『中世思想原典集成.11 イスラーム哲学』(平凡社、2000年)に日本語訳されている。

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