ふじみ野市立大井プール
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国土画像情報(カラー空中写真)国土交通省
ふじみ野市立大井プール(ふじみのしりつおおいプール)は、埼玉県ふじみ野市大井武蔵野にあったプール施設。
概要
- 1986年7月、大井町立町民プールとしてオープン。
- 2005年10月の上福岡市との合併により、施設名が変更された。
- 2006年に発生した事故によって後の運営は中止され、2008年2月に閉鎖[1][2][3]。
- 2010年末から解体された[3][4]。
所在地
- 埼玉県ふじみ野市大井武蔵野1393-1[3]
設備
- 競泳プール - 25m
- 幼児プール
- 児童プール
- スライダープール
- 流水プール
2階のテラスに休憩所があり、食堂が併設されていた。当時の駐車場収容台数は約80台分。
アクセス
死亡事故

- 2006年(平成18年)7月31日、小学2年生の女児が流水プール内の吸水口より地下水路パイプに吸い込まれて死亡する事故が発生した[6][7][1]。検視の結果、死因は吸い込まれて脱出不可能になったことによる窒息死ではなく脳幹損傷で、急なスピードで吸い込まれ、水路壁に頭を強打し即死したものと判断された[7][8]。なお、地下水路から女児を救出した際に重機でプールサイドを掘り返すなどしたためプールは使用不能となり、しばらく休館[9][3]。のちに老朽化などもあってそのまま閉館となりプールは全て取り壊された[3]。
- その後の捜査により、ふじみ野市から管理委託を受けていた太陽管財は下請け会社京明プランニングに業務を丸投げしていたこと、プールの監視員に関してはきちんとした研修や指導を行なっておらず泳げない監視員も多数いたこと、蓋が外れているとの通報が事故前にあったにもかかわらず、客をプールから出さずに係員が工具を取りに向かっている間に事故が発生したこと等が明らかになった[10][11][12][13][14]。問題の蓋は固定するボルト孔は設置時に手作業で穿孔していたためそれぞれの蓋が決まった場所でないと蓋と吸水口のボルト孔がずれてしまい固定できないにもかかわらず、その旨が引き継がれていなかったため、ボルトでの固定ができない蓋を針金でくくりつけることで固定していた[15][16][17][18]。
- 同年10月17日、ふじみ野市事故調査会による「ふじみ野市大井プール事故調査報告書」を公表して事故原因を「ずさんの連鎖」と結論付けた[19]。一方で、調査会のメンバーは当初市職員で構成されたが市民の批判により第三者を交えた調査を進めた[20][19]。しかし、実際にはメンバー9人のうち6人が市関係者であり、更に市関係者が調査会の席で「自分は専門家ではない」・「捜査権限が無いから詳しいところまでは解らない」と発言したことで非難が高まった[20]。市は、管理会社が捜査中で意見聴取ができず、書類も警察に押収されて事実確認が出来なかったために不十分な結果になったと釈明している[21]。
- 市職員3人(体育課長、管理係長、同係員)と委託先業者社長、再委託先業者社長、同業者現場責任者が同年11月15日に書類送検され、翌年6月8日に市の体育課長・管理係長の2名が業務上過失致死罪で在宅起訴[22][23]。2008年5月27日にさいたま地方裁判所(傳田喜久裁判長)は、体育課長に懲役1年6月・執行猶予3年、管理係長には禁固1年・執行猶予3年の判決を言い渡した[24][25]。体育課長は判決を受け入れ、管理係長は最高裁まで上訴をしたものの、いずれも棄却となり2009年8月28日に判決が確定した[26][27][28]。他4名は起訴猶予処分だったが、遺族がさいたま検察審査会に申し立てたことにより「起訴相当」議決が出たため、さいたま地方検察庁は2009年4月15日に、再委託先業者社長・同現場責任者の2名が略式起訴し、さいたま地裁は100万円の罰金刑を言い渡した[29][30][31][32]。
- 民事では、2007年(平成19年)3月24日に被害女児の両親と、ふじみ野市・プール管理会社との間で、損害賠償の示談が成立した[33]。
- 「ふじみ野市大井プール事故に関する報告書 ―検証と対策― (PDF) 」 ふじみ野市 平成21年8月
脚注
- ^ a b 『読売新聞』2006年8月1日 全国版 東京朝刊 一面1頁「小2女児、吸水口に吸い込まれ死亡 流れるプールで/埼玉・ふじみ野」(読売新聞東京本社)
- ^ 『読売新聞』2008年2月22日 全国版 東京朝刊 2社34頁「吸水口死亡事故のプール取り壊しへ 跡地にテニスコート/埼玉・ふじみ野市」(読売新聞東京本社)
- ^ a b c d e 『朝日新聞』2010年11月18日 朝刊 埼玉・1地方 30頁「女児死亡プール、24日に解体着手 ふじみ野市「跡地は白紙」/埼玉県」(朝日新聞東京本社)
- ^ 解体工事始まる 女児死亡 ふじみ野市営プール - ウェイバックマシン(2016年2月8日アーカイブ分)
- ^ “小2女児、プール吸水口に吸い込まれ死亡 悲惨な事故から13年 ふじみ野市長ら安全確認の徹底誓う”. 埼玉新聞 (2019年8月1日). 2020年1月25日閲覧。
- ^ さいたま地方裁判所 第3刑事部 2008, p. 3,4.
- ^ a b 『朝日新聞』2006年8月1日 朝刊 埼玉・1地方 27頁「「なぜ、こんな事故が」困惑する利用者ら ふじみ野・プールで女児死亡 /埼玉県」(朝日新聞東京本社)
- ^ さいたま地方裁判所 第3刑事部 2008, p. 4.
- ^ 『朝日新聞』2008年2月22日 朝刊 埼玉・1地方 35頁「解体、テニスコートに ふじみ野市、「要望多い」プール事故/埼玉県」(朝日新聞東京本社)
- ^ 「国の通知、ふじみ野市が見落とす プール事故」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年8月3日。オリジナルの2006年8月5日時点におけるアーカイブ。2025年3月20日閲覧。
- ^ 「プール事故、監視員の大半が高校生 13人中11人」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年8月3日。オリジナルの2006年8月5日時点におけるアーカイブ。2025年3月20日閲覧。
- ^ 「プール事故の委託業者、監視員調査書未提出のまま落札」『読売新聞』読売新聞社、2006年8月5日。オリジナルの2006年8月6日時点におけるアーカイブ。2025年3月20日閲覧。
- ^ 「埼玉プール事故 管理会社、救命講習修了証提出せず受注」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年8月5日。オリジナルの2006年8月8日時点におけるアーカイブ。2025年3月20日閲覧。
- ^ 「職員のプール巡回、料金回収が主目的…安全点検せず」『読売新聞』読売新聞社、2006年8月8日。オリジナルの2006年8月13日時点におけるアーカイブ。2025年3月20日閲覧。
- ^ 「プール事故、6枚中5枚は別の吸水口のふただった」『読売新聞』読売新聞社、2006年8月4日。オリジナルの2006年8月6日時点におけるアーカイブ。2025年3月20日閲覧。
- ^ 「さくと壁面のネジ穴にずれ 埼玉プール事故」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年8月4日。オリジナルの2006年8月5日時点におけるアーカイブ。2025年3月20日閲覧。
- ^ 「プール事故、吸水口のふた固定に補修用の針金常備」『読売新聞』読売新聞社、2006年8月5日。オリジナルの2006年8月6日時点におけるアーカイブ。2025年3月20日閲覧。
- ^ さいたま地方裁判所 第3刑事部 2008, p. 10.
- ^ a b 『朝日新聞』2006年10月18日 朝刊 埼玉・1地方 27頁「ずさん管理「断罪」全容解明は今後に ふじみ野プール事故、市最終報告 /埼玉県」(朝日新聞東京本社)
- ^ a b 『読売新聞』2006年8月12日 埼玉 東京朝刊 埼玉南27頁「事故のプールを視察 ふじみ野市調査委が初会合=埼玉」(読売新聞東京本社)
- ^ 『読売新聞』2006年10月18日 埼玉 東京朝刊 埼玉南35頁「ふじみ野市プール事故調査報告 市長「厳しく受けとめる」=埼玉」(読売新聞東京本社)
- ^ 『朝日新聞』2006年11月17日 朝刊 埼玉・1地方 29頁「両親の悲しみ癒えず ふじみ野市長、進退は言葉濁す プール事故書類送検 /埼玉県」(朝日新聞東京本社)
- ^ 「ふじみ野プール事故 業者起訴猶予に戸惑い 遺族「罪として償って」」『埼玉新聞』埼玉新聞社、2007年6月9日。オリジナルの2007年6月29日時点におけるアーカイブ。2025年3月20日閲覧。
- ^ さいたま地方裁判所 第3刑事部 2008, p. 1.
- ^ 『読売新聞』2008年5月28日 埼玉 東京朝刊 埼玉南31頁「ふじみ野プール事故、元市課長ら有罪 地裁「管理業務怠った」=埼玉」(読売新聞東京本社)
- ^ 『朝日新聞』2009年8月22日 朝刊 埼玉・1地方 37頁「元係長の上告棄却 ふじみ野市のプール事故 /埼玉県」(朝日新聞東京本社)
- ^ 『朝日新聞』2009年8月25日 朝刊 埼玉・1地方 29頁「被告側、最高裁に異議 市は報告書発表 ふじみ野プール事故 /埼玉県」(朝日新聞東京本社)
- ^ 『朝日新聞』2009年9月16日 朝刊 埼玉・1地方 29頁「元市係長、有罪確定し失職 最高裁が異議棄却 ふじみ野プール事故 /埼玉県」(朝日新聞東京本社)
- ^ 『読売新聞』2008年4月11日 全国版 東京朝刊 社会35頁「プール女児死亡 管理業者に「起訴相当」議決/さいたま検察審」(読売新聞東京本社)
- ^ 『朝日新聞』2009年4月18日 朝刊 3社会29頁「ふじみ野・プール事故で略式命令 大宮簡裁」(朝日新聞東京本社)
- ^ 『読売新聞』2009年4月18日 埼玉 東京朝刊 埼玉南31頁「プール事故で業者に罰金命令 簡裁=埼玉」(読売新聞東京本社)
- ^ ふじみ野市職員労働組合執行委員 鶴田昌弘 (2010年9月17日). “ふじみ野市大井プール事故後の実情から事故調査機関に望むこと 〜複合要因型事故から真の教訓をひきだすために〜” (PDF). 第2回事故調査機関の在り方に関する検討会ヒアリング. 消費者庁. 2014年10月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年6月29日閲覧。
- ^ 『朝日新聞』2007年3月25日 朝刊 埼玉・1地方 35頁「遺族、市・業者と示談 損害賠償、「京明」とは未成立 ふじみ野プール事故 /埼玉県」(朝日新聞東京本社)
参考文献
- 刑事裁判の判決文
- “平成20年5月27日宣告 平成19年(わ)第779号 業務上過失致死被告事件” (PDF). さいたま地方裁判所 第3刑事部 (2008年). 2025年3月20日閲覧。
外部リンク
- ふじみ野市プール事故 縦割り行政と責任の所在 - ウェイバックマシン(2016年3月4日アーカイブ分)(nikkei BPnet「林志行の「現代リスクの基礎知識」、2006年8月8日)
- 失敗事例 > 流水プール、吸い込まれ事故 - 畑村創造工学研究所(失敗事例データベース)
- 大井プール - ウェイバックマシン(2008年3月27日アーカイブ分)
座標: 北緯35度50分39.4秒 東経139度29分14秒 / 北緯35.844278度 東経139.48722度
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