桐紋二引両透図鍔
二引両は図案的に幔幕(まんまく)を彷彿とさせ、これに桐紋が配されて、陣中にある武人の姿がおぼろげに浮かび上がってくる。細川三斎忠興の美意識を受け継ぐ西垣勘四郎の作風は、多くの肥後金工と同様に鉄や素銅などが持つ質実な美観への追求があったと思われる。前時代の林又七や尾張鍔にみられる鉄骨などのような偶然に起ち現れてくる異質な素材に拠ることから離れ、より創造的な試みとして、なにものにも囚われない感覚から安定を排した図案構成という形で作品化したところに特徴がある。例えば、わずかに歪みの感じられる丸形や泥障形(あおりがた)、危うさのある左右非対称形、斜めに切り込まれた透かし部分の線の有り様など、総てが意識的に創造されいるにもかかわらず、ごく自然に見る者に訴えかけてくる。微細な槌目が残された鉄地は色合い黒く、渋い光沢を保っており、素朴な毛彫と微かに残された鑢目の痕跡は錆との複合の美感を呈している。 |
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