「字母」の割り当て
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/10 09:33 UTC 版)
「クラテュロス (対話篇)」の記事における「「字母」の割り当て」の解説
上述した「命名術」の「「字母」の「事物」への割り当て」を、試しにソクラテスが以下のように行ってみせる。 「r」(ロー)は、あらゆる「動き」(kinēsis)を表現する。例えば、流れる(rhein)、流れ(rhoē)、震え・揺れ(tromos)、粗い(trachys)、叩く(krouein)、砕く(thrauein)、裂く(ereikein)、粉々にする(thryptein)、寸断する(kermatizein)、旋回する(rhymbein)など。割り当ての理由は、「r」は巻き舌であり、最も静止することが少なく、震動することが多いから。 「i」(イオータ)は、「細やかで、通り抜けて行くことができるもの」に用いられる。例えば、行くこと(ienai)、急ぐこと(hiesthai)など。 「ph」(ペー)、「ps」(プセー)、「s」(シーグマ)、「z」(ゼータ)は、強い息吹(気息)を伴って発音するので、「気息」に関するものに用いられる。例えば、冷たい(psychron)、沸き立っている(zeon)、揺れる(seiesthai)、震動(seismos)など。 「t」(タウ)と「d」(デルタ)は、舌を圧縮し、歯の裏側へ押し付ける作用を持っているので、束縛(desmos)と静止(stasis)に用いられる。 「l」(ラブダ)は、舌が最も滑るので、つるつるした(leia)、滑る(olisthanein)、油のある(liparon)、にかわ質の(kollōdes)などに用いられる。 「g」(ガンマ)は、「l」の滑りを引き止める力があるので、「l」と一緒に、粘り気のある(glischron)、甘い(glyky)、ねたねたする(gloiōdes)などに用いられる。 「n」(ニュー)は、鼻音で音が内にこもるので、内に(endon)あるもの、中に(entos)あるものに用いられる。 「a」(アルパ)は、口を大きく開いて発音するので、大きいもの(mega)に用いられる。 「ē」(エータ)は、口を開き長く発音されるので、長さ(mēkos)に用いられる。 「o」(オー)は、口を丸めて発音するので、丸い(gongylon)ものに用いられる。 そしてソクラテスは、昔の命名者(立法者)は、これら「最初の名前」を組み合わせて、様々な「派生的な名前」を合成していったのだと主張する。 ヘルモゲネスは、議論をクラテュロスへと譲り、ソクラテスの説に賛成するのか否かを、また、ソクラテスの前で自分の考えを明瞭に話すよう促す。
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