《ご芳名》の消し方
招待状を返送するような際、名前記載欄に「ご芳名」もしくは「御芳名」と書かれてあった場合には、「ご芳」の部分に二重線を引くのが、マナーとして定着している。二重線によって「ご芳」を《取り消す》の意味を示すためである。
「ご芳名(御芳名)」は「(相手の)名前」を指す尊敬表現である。もともと「芳名」が「名詞」に対応する尊敬語だったが陳腐化し、尊敬の意味を示す「御」が加えられ、「御芳名」で定着した。つまり、「御」も「芳名」も敬語表現にあたる。
人から貰った招待状や案内状の、自分の名前に対して、「ご芳名」と書かれていた場合、これは送り主が自分の名前に対して敬意を表していることを示す。これを相手方に返送する場合、「自分の名前に敬語表現が付いた状態で送り返したくない(不遜になる)」ということで、わざわざ「ご芳」部分を取り消し、ただの「名」に修正するわけである。
「ご芳」を消して「名」にする慣習は、下らないようにも思えるが、実際のところ「自分に対しては敬語を使わない」という言語感覚に通底する。そのために一般的なマナーとして定着しているともいえる。
- 《ご芳名》の消し方のページへのリンク