Ubuntu Studio
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/05 02:29 UTC 版)
Ubuntu Studio 24.04 LTS "Noble Numbat" | |
開発者 | Ubuntu Studio Project |
---|---|
OSの系統 | Unix系, Linux, Ubuntu |
開発状況 | 開発中 |
ソースモデル | FLOSS |
最新安定版 | 24.04 (Noble Numbat)[1] / 2024年4月25日 |
使用できる言語 | 英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語 |
パッケージ管理 | Advanced Packaging Tool (APT) |
プラットフォーム | IA-32, x64 |
カーネル種別 | モノリシックカーネル(リアルタイムカーネル) |
既定のUI | Xfce KDE |
ライセンス | GPLおよびその他のライセンス |
ウェブサイト | ubuntustudio.org |
以前のデスクトップ環境はGNOMEであったが、派生元の環境が変更された事によりXfceを標準として採用していた。Ubuntu Studio 20.10からはKDE Plasma5がデスクトップ環境として採用された。[2]
コンテンツクリエイター向けにマルチメディア関連の機能が大幅に強化されている。従って、伝統的にはソフトウェア開発機/サーバ構築に用いられてきたUnix系オペレーティングシステム (OS) としては、極めて特殊な位置付けとなっている。
特徴
先述のとおり、Ubuntu Studioはマルチメディア(音楽・映像・画像)編集に特化しており、そのためのソフトウェアを多数、標準でインストールする。また、実行遅延(レイテンシ)を低減する設定が行われており、それらソフトウェアが即時処理(リアルタイム処理)を行うことを可能としている。派生元のUbuntuとは、割り込み発生回数を毎秒1000回に増やしたlow-latencyカーネルを採用することにより、音声再生の遅延を低減している点で大きく異なっている。
テーマについては独自のアートワークに基づき、青と黒で構成されたものを用いている。
Ubuntuに直接の支援を受けているプロジェクトであり[3]、マルチメディア編集環境に関するフィードバックを行うことで貢献している。Ubuntuとは標準でインストールされるパッケージの種類やシステム設定が多少異なるのみで、ベースシステムは同じである。
インストール
Ubuntu Studioは、ISOイメージファイルの形で提供されている。
使用者はまず、ダウンロードしたこのファイルからブート可能なディスクを作成し、そのディスクからコンピュータを起動してインストール作業に入る。インストール作業は、画面に表示されたメッセージに従ってキーボードで操作を行うことで進行する。Ubuntu StudioのISOイメージファイルのサイズは1GB以上であり、標準的なCD-ROMの記憶容量を超えている。そのため、ブート可能なディスクはDVD、もしくはUSBやネットワークで起動するディスクに作成する必要がある。
Ubuntu Studioの必要なシステム条件は以下の通りである。[4]
必要なシステム要件 | 最低条件 | 推奨条件 |
---|---|---|
CPU | Intel Core 2 Duo 同等 | Intel Core i5 同等、それ以上 |
RAM | 2GB | 8GB |
ディスク容量 | 16GB | 64GB |
既にUbuntuをインストールしてあれば、インターネット経由でパッケージ「ubuntustudio-desktop」といったパッケージを導入することでもインストールできる。
短い実行遅延(低レイテンシ)の実現
実行遅延(レイテンシ)とは、デバイスからの入力信号をコンピュータが処理し、その処理結果を帰すまでの遅延時間のことである。コンピュータのハードウェアとしての制約がその原因であり、どれほど高性能なコンピュータだろうが、どのようなデバイスを用いた操作だろうが、大なり小なりレイテンシは発生する。
製作環境においては、例えばMIDIキーボードを押して発信した信号が音声として出力されるまでの遅延時間や、ペンタブレットによる入力が画面に描画されるまでの遅延時間がこれに該当する。実行遅延の大小は製作者のパフォーマンスに直接影響するため、可能な限り短いのが望ましい。
サウンド処理に限定すると、実行遅延の短縮は、WindowsではASIOドライバ、macOSではCore Audioドライバ(Mac OS 9以前はSound Manager)などで実現している。
ではLinuxの場合はというと、カーネルがドライバを含む構造(モノリシックカーネル)となっているため、カーネル周りを調整することで対策している。具体的には以下である。
- カーネルにCONFIG_PREEMPT_RTパッチを適用したリアルタイムカーネルを利用する[5]
- カーネルの設定を変更しタイマー割り込みの頻度を増やす[6]
- PAMの設定を変更し、アプリケーションのカーネル・スケジューラー内での処理の優先度を変更する[7]
これらの設定はオーディオに限らずシステム全体に影響するため、多様な製作目的に合致したシステムを構築することが可能である。
リアルタイム・カーネルとは、通常のLinuxカーネルにCONFIG_PREEMPT_RTパッチを適用して、リアルタイムオペレーティングシステムとしての性能を発揮させたものである。入力信号を素早く処理することが可能となっている。そこに着目したUbuntu Studioプロジェクトチームは、リアルタイム・カーネルのパッケージをUbuntuリポジトリに提供してきた。リアルタイム・カーネルの提供は、Ubuntu Studioの最初のリリースである7.04ではなく、バージョン8.04から始まり、続く8.10ではパッチのバグなどの事情により提供が見送られたものの、9.04と9.10にて再び提供が開始された。しかしメンテンナンスの負担などの事情により、10.04以降から再び提供が中断している。
この間、CONFIG_PREEMPT_RTパッチの成果の多くがLinuxカーネルのメインラインにマージされつつあり、リアルタイムパッチを適用しなくても十分なパフォーマンスを得られるようになってきている。[8]
これを受けてUbuntu Studioコミュニティでは、Ubuntuの標準カーネルの設定を変更しただけのlowlatencyカーネルの提供を計画している。[9]すでに11.04向けlowlatencyカーネルのパッケージが開発者のPPAから提供され、テストが重ねられている。[10]
- ^ [1]
- ^ “Ubuntu Studio 20.10 Released – Ubuntu Studio” (英語). 2021年10月17日閲覧。
- ^ “Ubuntu derivatives”. 2010年12月5日閲覧。
- ^ “Download – Ubuntu Studio” (英語). 2021年10月17日閲覧。
- ^ “RT Linux Wiki”. 2011年4月22日閲覧。
- ^ “Linux Kernel Watch 8月版 割り込み頻度変更で消費電力は低下するか?”. 2011年4月22日閲覧。
- ^ “The Linux-PAM Guides 6.15. pam_limits - limit resources”. 2011年4月22日閲覧。
- ^ “[tip:irq/core] genirq: Provide forced interrupt threading”. 2011年4月22日閲覧。
- ^ “Will Ubuntu Studio official relase Natty on 2011-Apr-28?”. 2011年4月22日閲覧。
- ^ “Lowlatency & Realtime kernels”. 2011年4月22日閲覧。
- ^ “Tasks, Workflows, and Packages for Ubuntu Studio Natty”. 2011年4月23日閲覧。
- ^ “UbuntuStudio Workflows”. 2011年4月23日閲覧。
- 1 Ubuntu Studioとは
- 2 Ubuntu Studioの概要
- 3 日本語環境
- 4 関連項目
- 5 脚注
固有名詞の分類
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