IMI タボールAR21 バリエーション

IMI タボールAR21

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/24 06:10 UTC 版)

バリエーション

タボールには使用目的により、以下の九種のバリエーションが存在する。

TAR-21(タボール・スタンダード・モデル)

後述するX95(マイクロ・タボールMTAR-21)とシビリアン・モデルを除く全てのタボールの基本形。後述のCTAR-21、STAR-21、GTAR-21とストックや基本部品などは共通で、この四つを総称し「タボール21シリーズ」とも呼ばれる。

全長725mm、バレル長460mm、ライフリングは6条・7インチ右一回転。重量は前述の通りで約2,800gだが、基本オプションを追加すると約3,300gとなる。銃口初速は910m/s。ストックのカラー・バリエーションはオリーブドラブ、イスラエルグリーン、ブラックなどがあり、現在ではブラックが標準となっている。

タボールには専用のドットサイトとして、EOテック社のサイトとデザインがよく似たITL社製のMARS(マーズ)サイトがある。これは、真中に赤い光点を表示してそれを照準とするレッド・ドット式であり、レーザーサイトも付属していたが、最近ではMARSより安価なメプロライト社のM21(リフレックス式)およびモア(Mor、MARSと同等の機能を持つ)など、別のサイトを取り付けている場合も多い。

ドットサイトを標準の照準器としているものの、照準器の故障電池切れなど、トラブルの際にのみ使用する非常用アイアンサイトも存在する。ハンドガード上部の通風口を兼ねた部分にある折りたたみ式フロントサイトと、照準器取付け部の真下にある折りたたみ式のリアサイトがそれである。基本的にリアサイトは照準器を外さなければ使用できないが、前述のMARSサイトには一体成形の簡易的リアサイト用途の溝が上部に存在し、これと組み合わせる事でアイアンサイトとすることができる。

サイト取り付け部の後ろには、ITL社やメプロライト社で生産される暗視スコープやブースタースコープがねじ込み式で取り付けることができる。そのため、ドットサイトと組み合わせて、暗闇でも容易に照準を定めることができる。装着されたマガジンは挿入口前方にあるレバー式のマガジンキャッチ・スイッチを押して取り外せる。

ハンドガードを取り外し、アメリカ軍などが制式採用しているM203 グレネードランチャーを装着可能であるが、ランチャーバレルが長いため、バランスがあまり良くない。この箇所は今後改良される可能性がある。ちなみに、暗視スコープ用取り付け部に専用のランチャー用サイトを取り付けられる。他に、後述のSTAR-21用バイポッドを取り付け、簡易的な軽機関銃としても利用できる。

最近では、タボール・シリーズを更に発展させた「タボール2/タボールOICW」と呼ばれる最新鋭の全天候対応型「MPRS」光学サイトを取り付けたモデルや、装甲車両防弾ガラスに小改良を施しガンポート化した上で、タボールを取り付けてポートガンとするための専用装着パーツも公開されている。

CTAR-21(コンパクト・タボール)

基礎のTAR-21よりバレル長が80mm短い380mmの長さのバレルを装備したカービン(騎兵銃)・モデル。初期のモデルはコマンド(Commando)、コマンダー(Commander)などと呼ばれていたが、現在のIWI社では"コンパクト(Compact)"が正式な名称である。

全長は640mmで、重量はTAR-21よりも軽い2,700g(基本オプション無し、オプション取り付け時3,230g)、銃口初速は890m/sである。全長が短く小回りが利くため、メーカーは落下傘兵戦車兵、特殊部隊向けとしている。イスラエル軍では、このCTAR-21の方がTAR-21より多く配備されている。

ディスカバリーチャンネルの「フューチャー・ウェポン・21世紀 戦争の真実では、ナビゲーターリチャード・マコウィッツがCTAR-21をイスラエル軍の施設でテスト射撃し、300m先の標的のに命中させている。

STAR-21(シャープシューター・タボール)

TAR-21のハンドガードを前述のバイポッド付きハンドガードに取替え、ドットサイトの代わりに各種狙撃照準器を取り付けるためピカティニー・レール付きとしたタボール・シリーズ中の簡易狙撃用モデル。CTAR-21と同じく初期のモデルはシャープシューティング(Sharp shooting)とも呼ばれていたが、現在ではシャープシューター(Sharp shooter)となっている。

バレル長と銃口初速はTAR-21と同じだが、様々なオプションを取り付けているため約4,730gと、タボール・シリーズの中では重い部類に入る。従来の狙撃銃でも採用される米国ハリス社製の汎用バイポッドが標準だが、近年ではFA-MAS風のバイポッドを装着したモデルもある。

分隊狙撃手向きモデルで狙撃には適しているものの、5.56x45mmの有効射程は200-300m前後なので、あくまで「簡易」的に使うのが基本であろう。なお、イスラエル軍ではSTAR-21そのものではなく、バイポッドや狙撃用照準器を組み込み、分隊狙撃運用向けとしたCTAR-21を扱っている。

GTAR-21(グレネードランチャー・タボール)

M203を取り付けたTAR-21の名称。本来「GTAR-21」は非公式な通称であまり一般的ではなかったが、2009年度からIWI社の方針転換により、正式な名称となっている。

M203を取り付けた影響から全長853mm、重量5,700gと、タボール・シリーズの中では最もサイズが大きい。イスラエル軍ではCTAR-21に次いで使用される。

全長の長いM203を取り付けた際のバランスが良くない点を改善すべく、2010年からM203より多少短いブルガリアのアルクス(Arcus)社製40 UBGLも新規オプションとして追加された。

ウクライナのフォートがライセンス生産したモデルでは南アフリカのミコル社製40mmUBGLが装着されていた。

2014年からはIWI製のIWI GL 40に変更された。IWI GL 40はTAR-21とX95に対応すべく設計されており、銃身が短いCTAR-21やMTAR(ピカティニーレール)にも装着が可能である。

MTAR-21 (マイクロ・タボール)

MTAR-21マイクロ・タボール)として、従来のタボールの設計を元にサブマシンガン並みの全長を実現したタボールの一系統であった。CTAR-21よりも短いが、そのため、本来のタボール系統とは若干異なった形状のストック、ハンドガードからグリップ上部に移動したコッキングハンドル、専用サウンド・サプレッサー取り付けを前提とした広い銃口付近の開口部や口径9mmサブマシンガン・モデルの存在(後述)など異なる部分が多く、過去のメーカーのオンラインカタログの同じアサルトライフルのジャンルでも他のモデルと区別して扱われていた。

2009年におけるIWI社の大規模な方針転換の一環として、MTAR-21はX95に改称され、本来のタボール・シリーズとは完全に独立した派生モデル扱いとなった。ただし、基本仕様や外見は変わらず、メーカーのカタログ(一部)ではマイクロ・タボール(MTAR-21)の名称も引き続きニックネームとして併記されている。

最初期の試作型MTAR-21は、ハンドガードまで切り落としたような特徴的なスタイルだったが、そのあまりにも短すぎる全長からバランスが悪く、二世代目からはハンドガードが追加され、グリップが独自のピストル・グリップに変更された。その後三世代目からは従来のタボールに近いデザインのグリップに変更された。また、マガジンを取り外す際のスイッチはレバー式ではなく押ボタン式に変更されている。

X95L(マークスマン・マイクロタボール)

また三代目には銃身長を15インチに延長したマークスマン・マイクロ・タボール(X95L)とM203を装着可能な様に銃身を延長したモデルが存在する。

銃口付近の開口部が広いことを利用して、専用のサウンド・サプレッサーが取り付け可能である。これはタボール・シリーズが汎用品を利用することに対し、IMI(IWI)社オリジナルのオプションパーツであり、銃身ほぼ全体を包み隠すタイプの品である(ただし、フラッシュハイダーは共通品なので、汎用サプレッサーも取付けられる)。

最大の特徴として、口径5.56x45mmモデルが基本だが、同社のウージー用32発マガジン(試作モデルではグロック・ピストル向けロングマガジン)を流用、作動機構をクローズド・シンプルブローバック方式へ変更し、口径9x19mm(9mmパラベラム/ルガー)に変えたサブマシンガン・モデル、および5.56x45mmモデルから改造するコンバージョン・キットがある。内部機器とバレル、マガジンを交換するだけなので、ストックに取り付けたドットサイトなどのオプションパーツはそのまま引き継いで使用可能な利点を持っている。口径そのものを変える機能は従来型タボール・シリーズには存在せず、よりユーザーの要求に合わせられることも大きな相違点となっている。

5.56x45mmモデルのバレル長は330mm、全長は590mmだが、重量は2,950gと、意外にCTAR-21より重いのも特徴である。メーカーではCTAR-21と同じく特殊部隊向けモデルとしている。

X95

タボール・シリーズから派生したモデル。

初期型はMTAR-21から名称変更したものだったが、2013年中頃からハンドガードの形状を変更、 銃身長419mm(16.5インチ)モデルの登場で、MTAR-21とは別物となった。 ハンドガードの形状変更が最大の特徴であり、側面と底面にもピカティニーレールがあり、専用カバーが取り付けられている。上面のピカティニーレールは以前のタボールシリーズと異なり、一体化されたレールがマウントされている。ユーザーの要求に合わせて、ピストル・グリップのパーツ交換が可能となっている。 2015年からIWIのアメリカ法人IWI US社でもセミオンリーの民間向けモデルの販売が始まり、銃身長470mm(18.5インチ)のモデルも販売された。

使用弾は5.56x45mm、5.45x39mm、.300AAC Blackoutの3種類のライフル弾と9x19mmのピストル弾がラインナップされている。

タボール7

7.62x51mm NATO弾のモデルとして2017年に発表されたもの。マガジンはナイツ SR-25のマガジンと同規格のものに対応している。

ジッタラ(Zittara)

後述のインド軍が最も興味を示し、タボール系統の中でも特に購入したモデルはMTAR-21(X95)であったが、それとは別にインド軍は同国製INSASライフルにも採用された口径5.56x30mmミンサスのモデルをIMI社(当時)に発注した。この5.56x30mmミンサスを採用したMTAR-21はジッタラと名付けられ、IMI社のカタログにはないインド独自の亜流モデルとして位置づけられた。当初はIMI社生産の品を直接購入していたが、後にタボール自体のライセンス権を購入し、インド国内での生産も開始した。主にインド軍の特殊部隊で採用されているほか、イスラエル軍特殊部隊でもテスト採用されている。

なお、"ジッタラ"と言う名称は後のインド軍におけるタボール全般のニックネームにもなったが、インド以外の諸外国でジッタラと言えば5.56x30mmミンサスのモデルのみを指す場合が多い。

シビリアン・モデル

通称タボール・カービン。MTAR-21を元に製作されたタボールの民間販売用で、バレット社がディーラーとして米国内で販売していたが、現在は生産が中止されている。

なお、現在でも一般民間販売用としてのセミオートマチック仕様のタボールは存在するが、これはTAR-21をセミオートのみにしただけで、警察用モデルとほぼ変わらない外見である。オリジナルのIWI(イスラエル)製がカナダヨーロッパなどに輸出されている他、2012年には銃規制法の関係上セミオート仕様であっても輸入販売は困難であったアメリカでも、複数のパーツをアメリカ国内で生産し組み立てた上でアメリカ製セミオートライフルとし、銃規制法の問題を解決した民間向けタボール(フルサイズのTAR-21)の販売がアメリカ代理店チャールズ・デイリー社より発表され[3]、後にIWI社により直接の米国代理店IWI US社および専用の製造ラインを設立し、タボールSARの名称でUZI プロと共に生産販売される事となった。

5.56x45mm弾以外に、9x19mm弾を使用するモデル、アメリカ市場で人気のある.300AAC Blackout弾モデルも販売されている。

フラットトップ

近年の多様化する軍事マーケットへの対応策として2012年に発表された、従来品以上に多くのオプションパーツ装着を可能とするべくコッキングハンドル上部の折りたたみ式リアサイト部分から専用のドットサイトベース・ねじ込み式専用オプションサイトベース部分までをロングタイプのピカティニー・レールに置き換えたモデル。この仕様変更に伴い、非常用アイアンサイトはオプション装着の邪魔にならないよう、従来より小型でレール内に収納されるタイプに改修されている。

タボールおよびX95の全機種でオプションとして選択可能で、アメリカ市販型セミオートモデルSARではこのタイプが標準となる予定である。

タボール TS-12

セミオートショットガンモデルで、口径は12ゲージ。18.5インチのバレルアンダーにトリガーガード内部のリリースボタンの操作による3本の手動回転式チューブマガジン(1本のチューブに2.75インチショットシェルが5発、もしくは3インチショットシェルが4発)を内蔵しており、装弾数は計15発、もしくは12発となっている。レシーバートップにはピカティニーレールが搭載。セーフティはクロスボルトセーフティが採用されている。アンビデクストラウス仕様により、左右両側からロード、アンロードが可能である。3.6kgもの重量から反動も小さくなっている。


  1. ^ 月刊『Gun』2008年1月号 国際出版株式会社 特集「ミリポル2007」89ページ
  2. ^ 月刊『Gun』2008年1月号 国際出版株式会社 特集「ミリポル2007」89~90ページ
  3. ^ 月刊『ガンマガジン』2012年9月号 ユニバーサル出版株式会社 特集「ショット・ショー2012」120ページ
  4. ^ イスラエル国防軍公式HP
  5. ^ RPCフォート社公式HP
  6. ^ Difesa Brasil.com
  7. ^ 月刊『Gun』2005年3月号 国際出版株式会社 特集「バイオハザードⅡアポカリプスのステージガン」71-73ページ






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