風土記 風土記の概要

風土記

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/30 21:00 UTC 版)

古風土記

奈良時代初期の官撰の地誌。元明天皇の詔により各令制国国庁が編纂し、主に漢文体で書かれた。律令制度を整備し、全国を統一した朝廷は、各国の事情を知る必要があったため、風土記を編纂させ、地方統治の指針とした[2]

続日本紀』の和銅6年5月甲子ユリウス暦713年5月30日先発グレゴリオ暦6月3日)の条が風土記編纂の官命であると見られている。ただし、この時点では風土記という名称は用いられておらず、律令制において下級の官司から上級の官司宛に提出される正式な公文書を意味する「」(げ)と呼ばれていたようである[2]。なお、記すべき内容として下記の五つが挙げられている[3]

  1. 国郡郷の名(好字を用いて)
  2. 産物
  3. 土地の肥沃の状態
  4. 地名の起源
  5. 伝えられている旧聞異事

現存するものは全て写本で、『出雲国風土記』がほぼ完本、『播磨国風土記』、『肥前国風土記』、『常陸国風土記』、『豊後国風土記』が一部欠損した状態で残る[4]。その他の国の風土記も存在したと考えられているが、現在は後世の書物に逸文として引用されるのみである。ただし、逸文とされるものの中にも、本当にオリジナルの風土記の記述であるか疑問が持たれているものも存在する。

各国の風土記

  • 太字は写本として現存するもの。
  • ※は逸文として他の書物に残っているもの。
  • 無印は逸文であるか疑わしいものしか残っていないか、未発見のもの。

畿内

  • 山城国風土記※
  • 大和国風土記
  • 摂津国風土記※
  • 河内国風土記
  • 和泉国風土記

東海道

  • 伊賀国風土記
  • 伊勢国風土記※
  • 志摩国風土記
  • 尾張国風土記※
  • 参河国風土記
  • 遠江国風土記
  • 駿河国風土記
  • 伊豆国風土記
  • 甲斐国風土記
  • 相模国風土記
  • 下総国風土記
  • 上総国風土記
  • 常陸国風土記

東山道

北陸道

  • 若狭国風土記
  • 越前国風土記
  • 越後国風土記※
  • 佐渡国風土記

山陰道

山陽道

南海道

  • 紀伊国風土記
  • 淡路国風土記
  • 阿波国風土記※
  • 讃岐国風土記
  • 伊予国風土記※
  • 土佐国風土記※

西海道

  • 豊前国風土記※
  • 豊後国風土記
  • 肥前国風土記
  • 肥後国風土記※
  • 筑前国風土記※
  • 筑後国風土記※
  • 日向国風土記※
  • 大隅国風土記※
  • 薩摩国風土記
  • 壱岐国風土記※
  • 対馬国風土記

中国の風土記

中国書籍の名。の平西将軍の周処による『周処風土記』に始まり、盧植による『冀州風土記』、沈瑩による『臨海風土記』、陸恭之によるとされる風土記、『後魏風土記』などがあったといわれるが、存在が確認できるわけではない。辺境生活の見聞をまとめたものであろうといわれるが、詳細は不明。


  1. ^ 『ビクトリア現代新百科』 学習研究社 11巻33頁
  2. ^ a b 坂本勝 2011, pp. 16–17.
  3. ^ 『続日本紀』6巻[1]

    五月甲子 畿内七道諸國郡郷名著好字其郡内所生銀銅彩色草木禽獸魚䖝等物具録色目及土地沃塉山川原野名号所由又古老相傳舊聞異事載于史籍言上

  4. ^ 栄原永遠男『日本の歴史4 天平の時代』集英社、1991年、40頁


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