資格商法 資格商法の事例

資格商法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/04 14:01 UTC 版)

資格商法の事例

難易度が低いが実用性がない、著名であるが実態が知られていない、国家資格ではあるが就職に結びつくとは限らない、難易度が高く合格が難しい等の性質をもつ資格・試験が利用されることが多い。

試験に合格することによって何らかの業務独占資格が得られると宣伝し、そのための学習講座の勧誘や教材販売を行っているケースが見られる。国家資格の場合は通信教育が教育訓練給付制度に対応していることを宣伝材料としていることもある。

資格商法に用いられる資格の例には次のようなものがある。

マイナー又は有用性の高くない国家資格を過剰に宣伝するもの

国家資格であり需要もあるが、試験に合格しただけで就職できるなどと謳い、教育商法予備校の講座などでの看板として用いられる事が多い。
情報処理技術者試験そのものは国家試験であるが、業務独占資格ではない[6]。あくまでも能力認定であるため、採用時に参考にされる程度である。
国家資格であり、就職活動を控えた大学生が金融や保険や不動産の仕事の採用を目指す際に多少有利になるのは事実であるが[7]、国家資格を持っていなくてもファイナンシャル・プランナーを名乗って働くことは可能であり、FP技能士の国家資格を持っていても独占して行える業務はない[8]。税理士や司法書士や保険外交員などの本業のある人が副業として顧客にファイナンシャル・プランニングを行なっているケースが多く、ファイナンシャル・プランナー単体の求人も少なく、本業にするのは狭き門である[9][10]

業務独占資格である国家資格の業務を侵害する違法な民間資格を過剰に宣伝するもの

業務独占資格国家資格)である美容師免許がなければ美容を業にすることは違法であるが、化粧品関連資格やカモフラージュメイク化粧療法等の民間資格が存在する。メイクの仕事や医療機関への就職に有利であるかのごとく、段階的な試験を作り、それに伴う教材の販売、関連企業の化粧品を購入させる仕組みもある。
整体学校」、「カイロプラクティック学校」などを称し、独自の認定にすぎない資格を社会的に有力とうたって取得させる。

有用でなく、または法的に不要な民間資格を過剰に宣伝するもの

2016年頃からドローンスクールが現れ、2018年には200校を超えるまで乱立。 国家資格ではなく民間認定に過ぎない。 わずか2~5日間の数日間で、自動車教習所並みの20~40万円前後の高額費用がかかる。しかし、JUIDA(日本UAS産業振興協議会)・DPA(ドローン操縦士協会)・DPCA(ドローン撮影クリエイターズ協会)・JUAVAC等団体の認定を掲げるスクールでは、あたかも免許(ライセンス)のような説明をしたり、受講しなければ飛行許可が取れない、取得すれば仕事があるなどと勧誘し、スクールを受講させるなど、悪質な運営をしている。更新料を徴収している。スクールでは、これから仕事に必要と宣伝し、産業用など高価なドローンの販売促進もしており、ツルハシビジネスの一端も担っている。
以前は民間団体の技能認証により飛行許可が必要な際に申請する書類の一部を省略可能であったが、国家資格である無人航空機操縦者技能証明の創設により令和7年12月をもって優遇措置が終了する[11]国交省が認定する登録講習機関となれば実地試験の免除が受けられるため、一部の団体が移行を開始している[11][12]
資格を持っていないと就職ができないなどと言って高額な教材を購入させることがある。
  • ヨガのインストラクター
国家資格ではなく民間認定にしか過ぎず、無資格でヨガのインストラクターをしても問題ない[13]。何十万円もかけてRYT(全米ヨガアライアンスが認定する民間資格)を取ったのに働き口がないこともある[14]。ヨガ教室の運営企業が独自に認定する民間資格を、数十万円以上の受講料を払って取得し、さらに1年ごとに8000~5万円程度の更新料を払って更新しなければ、その企業でのインストラクターの仕事ができないケースもある[14]
  • ベンダー資格
ベンダー資格は能力認定であり就職を保証するものではないが、人材派遣業を兼業するITスクールが、受講特典として取得後に就職を斡旋するというもの。現実にはスクールを利用せずとも資格取得・就職は可能である。スクールが中小零細企業と斡旋に関する取引を行う悪質なケースもあり、スクール側は就職支援という公約を果たせ、企業側は薄給でも就職を受け入れる人材が手間なく確保できるというメリットがある。
  • 法律・法務に関係する民間資格
法律関係の業務は一般人には対応が難しいことが多く、実務的にも国家資格を有する士業者が関与する場面が多い。
そのためか、民間資格業者の中には、民間資格を取得すれば、独立開業して顧客から相談を受け、関連する業務を行えると宣伝するものもある。
しかし、そもそも、法律関係の業務は難解で高度な専門性が必要であるがゆえに、消費者保護などの公益目的の実現を図る必要があるため、国家資格を有する者のみに業務の独占が許されているのである。
そのため、当然、民間資格を取得しても、法令上何らの法律関係の独占業務も可能となるものではない。
また、「お客様と各士業との間に入り調整する」などと謳う業者もあるが、複数職種の士業者が関与する場合であっても、士業者のみで相互に又は依頼者と直接コミュニケーションを取った方が確実かつ簡便であるから、間に入ろうとする民間資格業者の手数料を正当化できる場面はまずないと考えられる。
遅くとも2016年頃までには、「相続●●士」「相続●●アドバイザー」等を称する民間資格が乱立する状況が生じている。
相続税に関するアドバイスを謳うものがあるが、税務相談は税理士の独占業務であり(税理士法2条1項三号)、無償であっても無資格で行えば犯罪となる(税理士法52条、59条1項4号)。
相続人間の意見が対立する場合は弁護士でなければ介入できず、民間資格業者が相続人の利害調整や交渉等に関与すれば非弁行為として犯罪となる可能性が高い(弁護士法72条、77条3号)。また、民間資格業者が弁護士に相続紛争案件の受任をあっせんすれば、非弁提携行為として犯罪となる可能性が高く(弁護士法72条、77条3号)、弁護士にも受任を断られる可能性が高い(弁護士職務基本規定11条)。
  • 交通事故に関するもの
交通事故においても、保険の手続や示談交渉が必要になり、一般人には分かりづらいことが多いことから、専門職の支援が求められることが多く、「交通事故の被害者救済に役立つ助言、また被害者・加害者間の調整」を謳う民間資格業者も現れている。
しかし、交通事故は典型的な法的紛争であり、弁護士の独占業務である。民間資格業者が「被害者・加害者間の調整」を行うことは非弁行為となる可能性が高い。
なお、近年では自動車保険において弁護士費用特約の普及が進んでおり[15]、被害者は保険会社に連絡しさえすれば弁護士の紹介を受けられることが多い。
高齢化が進展する中で、成年後見制度の利用は年々増加している[16]。しかし、成年後見制度も家庭裁判所への申立てが必要であるなど分かりづらい点が多く、弁護士や司法書士による援助が必要となることが多い。
そうした中で、成年後見制度に関する専門知識が習得できるなどと謳う民間資格業者が出現している。
しかし、家庭裁判所へ成年後見開始の審判を申し立てる際に、手続代理人となることができるのは弁護士のみである。また、申立書類の作成やその相談のみに留めるとしても、司法書士の資格が必要である(司法書士法3条1項4号、5号)。したがって、民間資格のみでは申立てに関する業務には一切関与することができない。
また、家庭裁判所から選任されて後見人になろうとしても、裁判所が親族以外で選任する者は弁護士、司法書士、社会福祉士を初めとする国家資格を有する者が大多数であり[16]、民間資格を取得したとしても選任される可能性は極めて低い。
公正証書を利用する任意後見制度もあるが、任意後見人になるためには何らの資格も必要としない。
なお、一般人が成年後見制度の一翼を担う方法として、市民後見人として参加するという方法がある。一般市民として成年後見制度に貢献したい場合は、市区町村が開催する市民後見人の養成講座に参加すれば足りる。
報道やテレビドラマ等において言及されることが増えたためか、パラリーガルに関する資格を認定する業者も出現している。
しかし、パラリーガルは日本においては公的な制度ではなく、現状、一部の法律事務所弁護士を補助する事務職員の一部を内部的にそのように呼んでいるに過ぎず、その職務内容すら所属する法律事務所によって異なりうる(極めて高い専門性を要求されることもあれば、単なる雑用係を採用戦略上そう呼んでいるに過ぎないこともある。)。
したがって、パラリーガルの就職及び業務は完全に採用する法律事務所次第であり、民間資格を取得したとしても有用性は疑わしい。

民間資格を国家資格と誤認させるような方法で宣伝するもの

民間資格を国家資格と誤認させる、一部悪質な団体もあった。
2007年6月に公正取引委員会から「景品表示法第4条第1項第1号(優良誤認)の規定に違反する事実が認められた」として排除命令を受けた。株式会社日本経営経理指導協会が受けた命令であり他の協会がすべてではない。民間資格だと表示している協会もある、一部の悪質協会により風評被害をうけ認定協会が減っている[17]
職業能力開発促進法に基づくものではない職種の技能士を称して、高度な技術をもつと誤解させる。また、業者の提供する講座を受講すればその資格を容易に取得できるように誤認させる。
国家資格である潜水士は実技試験が無く座学のみで取得出来ることから、民間の技能認定であるCカードが通用している。このため認定を行う団体が乱立し、高額な講習料を請求したり、無料と偽り高額な関連器材購入をさせる問題がある。
権限を持たない一民間資格を、その名称から正規の国家資格である弁理士と関連性があるかのように宣伝したため、誤解を招く恐れがあるとして、商標登録を取り消された[18]
「短期で取得でき就職活動に有利な心理カウンセラー資格がある」「大学入試の際に有利である」などと称して受講生を募り、独自資格を発行する。しかしながら現実には、スクールカウンセラー等の公的な心理職や、心理判定員等の公務員心理職、そして心理療法士等の医療機関に勤務する心理職などの採用要件として規定・推奨されるのは、そのほぼ全てが「臨床心理士」資格のみである[19]。その他では、「学校心理士」資格や「臨床発達心理士」資格であれば採用に繋がる場合もある。しかし、少なくともこれら3心理士資格は、大学院課程修了を基本要件・一部要件において前提としており、通信教育のみや数回〜数十回程度のセミナーで取得できる独自資格では、まず採用は見込めない。
  • 学位
日本においては学位は学校教育法に定める機関(大学独立行政法人大学改革支援・学位授与機構のみ)が正式な手続を経て授与するもの以外は正式な学位として認められないが(学校教育法104条、学位規則1条)、これら以外の者が博士号等と称して学位に類する称号を販売することがある。
また、ディプロマミルの修士号博士号を公的に使用していた場合、称号詐称の罪(軽犯罪法第1条15項)で処罰される危険性もある。

  1. ^ a b c d e f 講座・士(資格)商法”. 長野県消費生活情報. 2021年11月17日閲覧。
  2. ^ 資格商法(士:さむらい商法)”. 大阪市. 2021年11月17日閲覧。
  3. ^ a b c d 資格商法 | 牛久市公式ホームページ”. www.city.ushiku.lg.jp. 2021年11月17日閲覧。
  4. ^ 資格商法の二次被害に注意! 習志野市”. www.city.narashino.lg.jp. 2021年11月17日閲覧。
  5. ^ 就職活動につけ込む資格商法 警視庁”. www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp. 2021年11月17日閲覧。
  6. ^ 産業構造審議会情報経済分科会情報サービス・ソフトウェア小委員会人材育成ワーキンググループ(第1回) 配付資料-配付資料 資料4
  7. ^ FPの資格を大学生は取るべき?何級まで取得すれば就活で有利になる?”. FP試験コラム (2022年5月10日). 2024年2月11日閲覧。
  8. ^ ファイナンシャルプランナーは仕事がない?実は将来明るい理由を教えます”. 株式会社アルファ・ファイナンシャルプランナーズ (2023年6月28日). 2024年2月11日閲覧。
  9. ^ ぶっちゃけFPという仕事で食えるのか?現役3人が赤裸々トーク【FP本音座談会・前編】”. ダイヤモンド・オンライン (2021年9月9日). 2024年2月11日閲覧。
  10. ^ FPと税理士の知られざる「縄張り」、そのお金相談は実は法的にNGかも?”. ダイヤモンド・オンライン (2021年9月12日). 2024年2月11日閲覧。
  11. ^ a b 航空安全:無人航空機操縦者技能証明等 - 国土交通省”. www.mlit.go.jp. 2023年2月26日閲覧。
  12. ^ 国土交通省の登録講習機関として登録 専用WEBサイト開設! | 一般社団法人DPCA(ドローン撮影クリエイターズ協会)”. dpcajapan.org (2022年12月28日). 2023年2月26日閲覧。
  13. ^ ヨガインストラクター資格取得?費用?養成講座?│inStyle<インスタイル>全米ヨガアライアンス認定校”. instyle.sc. 2024年2月11日閲覧。
  14. ^ a b 「生徒よりも講師募集のほうが人が集まる」ヨガインストラクターの労働実態 #生活危機(Yahoo!ニュース オリジナル 特集)”. Yahoo!ニュース. 2024年2月11日閲覧。
  15. ^ “[bengoshi_hiyou_insurance.pdf (nichibenren.or.jp) 交通事故では弁護士特約は当たり前]” (pdf). 2021年6月10日閲覧。
  16. ^ a b “[20210312koukengaikyou-r2.pdf (courts.go.jp) 成年後見関係事件の概況 -令和2年1月〜12月-]” (pdf). 最高裁判所事務総局家庭局. 2021年6月10日閲覧。
  17. ^ 株式会社日本経営経理指導協会に対する排除命令について 2007年6月15日 公正取引委員会
  18. ^ 「特許管理士」商標事件の最高裁上告に棄却決定 - 日本弁理士会
  19. ^ 文部科学省 (2008年). “資料6 スクールカウンセラー等活用事業補助”. 2010年2月1日閲覧。


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