聖デイヴィッド大聖堂 内部

聖デイヴィッド大聖堂

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/06 02:54 UTC 版)

内部

大聖堂の身廊。12世紀のアーケード(拱廊)、14世紀の内陣障壁英語版、16 世紀の天井、20世紀のオルガンなどの東方向の景観[52]

大聖堂の西正面は塞がれており、大聖堂の入口は南側の西端にある[53]。身廊に入場するこの張り出し玄関(ポーチ、Porch)は、14世紀[53]、主教ヘンリー・ガウアー英語版の時代に追加されている。

肩にハトを乗せた聖デイヴィッド

身廊

身廊 (Nave) の通路のアーケード(拱廊[54])は、ノルマン様式ロマネスク建築である上部半円形のアーチがある[25]。一方、その上部のトリフォリウム英語版には、細く尖った初期のイギリス・ゴシック建築英語版のアーチが見られることから、ノルマン移行様式に位置づけられる[25]。身廊の上には緻密な彫刻が施された16 世紀の木製(オーク)の天井がある[55]。また、東の壁側には彫刻で装飾された14 世紀からの内陣障壁英語版があり、身廊の端を形成している[52]。その障壁ないしプルピトゥム英語版の南側付近には、当時の主教ヘンリー・ガウアー自身による壊れたがある[56]

袖廊の中央塔下に位置するクワイヤ
クワイヤ上の扇形ヴォールトを模った天井装飾

クワイヤ

十字形のクロッシングの中央塔の真下にあたる現在のクワイヤ (Choir) は、15 世紀末から 16 世紀初頭のうちに構築されたもので、オルガン後方に聖歌隊席を備える[57]。天井の装飾などは19世紀のジョージ・ギルバート・スコットの修復による[58]

かつてクワイヤの障壁に設置された1883年のオルガンは、1953年に改修・拡張されていた[45]。2000年にハリソン・アンド・ハリソン英語版により完成した新しいオルガンは、当初のオルガンのパイプの構成から着想を得て再設計・拡大されたものである[59]

南東の一角にある14 世紀の主教座(Bishop's throne〈ラテン語: Cathedra、着座椅子〉)は、16 世紀初頭にこの位置に移された[60]。特別な儀式を執り行なうこの椅子は主教の象徴であり、大聖堂(カテドラル、cathedral)の呼称に通じる。

復元された聖デイヴィッド祠堂
内陣の装飾された天井

内陣

16世紀、主教エドワード・ヴォーンのもとに構築された内陣 (Presbytery) は、クロッシングにあるクワイヤの東に隣接してある[53]。典麗な装飾が見られる天井は、19世紀の修復において、はり部材が付加されている[58]。また、内陣の高祭壇 (High alter) の後方にある黄金色のモザイクも、19 世紀に加えられており、それらはガラスやモザイクを専門とするヴェネツィアのサルヴィアティ (Salviati) によるものである[58]

クワイヤと内陣との間には、エドマンド・テューダーの墓(石棺)が配置され[61]、また、向かいの内陣の一角に聖デイヴィッドの祠堂がある。かつて聖デイヴィッドおよび同時代の聖人である聖ユスティニアン英語版の遺物を保管していたといわれる祠堂は当初の位置にあり[36]、復元された壁面の3つのアーチ内には、中央に聖デイヴィッド、左に聖パトリック、右に聖アンドリューの像がそれぞれ描かれている[19]

トマス・ベケット礼拝堂の聖デイヴィッドのステンドグラス(20世紀)

礼拝堂

内陣の東には、主教ヴォーンによる扇形ヴォールトのある聖三位一体礼拝堂 (Holy Trinity chapel) が隣接し、その祭壇および祭壇上の装飾は中世の断片により復元されたものである[62]。また、ここに見られるオークの小箱(カスケット、casket[63])には、聖デイヴィッドと聖ユスティニアンの遺骨が納められていると長らく信じられていた[64]

北翼廊 (North transept) 付近にある聖トマス・ベケットの礼拝堂 (St Thomas Becket's chapel) には[53]、聖デイヴィッドを描いたステンドグラス20世紀)がある[65]。南翼廊 (South transept) には、カラスに食べ物を与えられたエリヤ列王記第一17章6節)の17世紀のクレタ島イコンがある[66]

大聖堂の東端の南側には、証聖者聖エドワードの礼拝堂 (Chapel of St Edward the Confessor) がある。ここに安置された墓(石棺)は、主教ジェンキンソン(John Banks Jenkinson、1825-1840年)の孫娘であるメイドストーン伯爵夫人のものである。ここからすぐ、1901 年に修復された聖母礼拝堂英語版に通じている[53]


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