産業用ロボット 産業用ロボットの概要

産業用ロボット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/21 21:45 UTC 版)

自動車製造ラインに配備されたKUKA製産業用ロボット。

概要

厳密にはティーチングプレイバックという方法で動作する産業用の機械を指す。しかし、最近では人間の代わりに作業をする機械としての役割が重視されることから、ある程度自律的に動作する人間のに似た部分を有する機械として解釈されるのが一般的である。また、国際標準化機構(ISO)は「3軸以上の自由度を持つ、自動制御、プログラム可能なマニピュレーター」と定義している。

主に自動車電子部品生産する工場の現場で使用されている。例えば自動車の生産工場で使われるロボットの場合、スポット溶接を行うロボット、ボディ塗装を行うロボット、部品取り付けを行うロボットが多く見られる。人間が作業を行う場合、決められた動作を繰り返したり、重量物の運搬を必要としたり、霧散している塗料を吸い込んだりする危険性など、肉体的・精神的負担の大きい労働環境である場合が多い。このような環境での作業時、労働者への大きな負荷から作業ミスを誘発する恐れもあり、品質安定の面からもロボットが用いられる。

また、労働者の賃金が高い国で工場を維持するために、工場全体をロボット化して、最低限の要員のみで運営している事例も存在する。このような工場の自動化をファクトリーオートメーション(FA)と呼ぶ。

同じロボットでも、歩行ロボットとは大きく異なるものである。設計思想が異なり、使われているテクノロジーも少々違う。歩行ロボットが産業用に使われた例は今のところ無いが、将来的な可能性はある。また後述のように、ロボットの用途が接客や愛玩、清掃など第三次産業という「産業」であっても、非工業向けは産業用ロボットでなくサービスロボットなどと呼ばれることが多い。

主な用途

歴史

知られている初期の産業用ロボット(ISOの基準を満たす)はオーストラリア/カナダ人の"Bill" Griffith P. Taylorによって作成され、『メカノマガジン』1938年3月号に掲載された。[1][2] クランクのような素子はメカノの部品を使用して作られ、1台の電動機を動力にした。掴み掴んで回転を含む5軸の動きが可能だった。自動化はパンチテープによって電磁石の作動を制御する事により起重機の制御レバーの動きを制御した。このロボットは積木を予めプログラムされた類型に積み重ねる事が出来た。それぞれの動作のために複数の電動機の革命が必要で、最初はグラフ用紙に記録された。情報は同様にロボットの8台の電動機で駆動された紙テープに移された。Chris Shuteは1997年にロボットの完全な複製を製作した。

ジョージ・デボル,1982年撮影

ジョージ・デボルは1954年にロボットの最初の特許を出願し、1961年に登録された。ロボットを最初に生産した最初の会社は1956年にデボルの基本特許を基にデボルとジョセフ・F・エンゲルバーガーによって設立されたユニメーション社だった。 ユニメーション社のロボットは同様にプログラム可能なトランスファーマシーンと呼ばれ、移動せず、ベルトコンベアーの横に設置される形態が定まった。それらは油圧式アクチュエータを使用し、プログラムされた関節座標を備える事で多様な関節は入力工程で保存された動作を運転中に再現する。それらは正確に繰り返される。ユニメーション社は後に川崎重工とイギリスのGKN社に日本とイギリスのユニメートの製造権を与えた。ユニメーション社の競争相手は一時期、オハイオ州のCincinnati Milacronのみだった。1970年代末に複数の日本の大企業が類似の産業用ロボットの生産を開始した事により状況は一変した。

1969年に米国スタンフォード大学のVictor Scheinmanはアーム・ソリューションに基づく全電動式6軸関節式ロボット「スタンフォード アーム」を開発した。これは空間内を正確に移動する事を企図しており、組み立てや溶接など、より高度な用途にロボットを使用できる可能性を秘めていた。Scheinmanは米国マサチューセッツ工科大学人工知能研究所で"MIT arm."と呼ばれる2番目のアームを設計した。ユニメーション社の協力を受けた後、Scheinmanは彼の設計を開発するためにこれらの設計をゼネラルモーターズ(GM)から支援を受け、さらに後に組み立て用ロボット(PUMA)として販売するユニメーション社に売却した。

産業用ロボットは欧州において1973年にABBロボティックスKUKAの両社により速やかに市場を開拓された。ABBロボティックス(正確にはアセア)はIRB6を世界初の商業的に入手可能な完全電気式マイコン制御ロボットとして発売した。最初の2台のIRB6ロボットはスウェーデンのMagnusson社に販売され切削と研磨管の曲げのために1974年1月に製造工程に組み込まれた。同様に1973年KUKAロボティックスはFAMULUSとして知られ、同様に電気機械式駆動の6軸を有する関節ロボットの一つでもある最初のロボットを製造した。[3][4]

ロボットへの関心は1970年代末に高まり、ゼネラル・エレクトリック(GE)、ゼネラルモーターズ(日本のファナックとの合弁事業GMファナック ロボティックス)やフランスの創業間もないAutomatix(市販品では初のマシンビジョン搭載したロボットを開発)と アデプト テクノロジーを含む多くのアメリカの企業が進出した。1984年にロボットブームは最高潮に達し、ユニメーション社はウェスティングハウスによって107百万ドルで買収された。ウェスティングハウスはユニメーション社を1988年に現在でも関節ロボットを産業とクリーンルーム用に製造するフランスのStäubli Faverges SCAへ売却してその後、さらに2004年末にロバート・ボッシュのロボット部門を買収した。

日本企業以外でこの市場で生き残った主要な企業は: アデプト・テクノロジー、Stäubli-Unimation、スウェーデン-スイスABB アセア ブラウン ボベリドイツKUKA ロボティックスイタリアのComauである。

類型

形状による分類

用途による分類

  • 溶接ロボット
  • 組立ロボット
  • 搬送ロボット
  • 塗装ロボット
  • 検査ロボット
  • 研磨ロボット
  • 洗浄ロボット

(参考)非工業向けロボット

産業用ロボットはIndustrial robotの邦訳である。したがって、サービス産業などで使われているロボットは産業用ロボットとは区別するのが適当である。


  1. ^ “An Automatic Block-Setting Crane”. Meccano Magazine (Liverpool UK: Meccano) 23 (3): 172. (March 1938). 
  2. ^ Taylor, Griffith P. (1995). Robin Johnson. ed. The Robot Gargantua. Gargantua: Constructor Quarterly 
  3. ^ KUKA-Roboter.de: 1973 The First KUKA Robot English, 28th of March 2010
  4. ^ History of Industrial Robots”. 2012年10月27日閲覧。
  5. ^ a b c d Executive Summary World Robotics 2020 Industrial Robots
  6. ^ 世界の産業用ロボット稼動台数推定 (マニピュレーティングロボットのみ)
  7. ^ 「中小に産業ロボ普及へ144社 協会設立、指針を作成」『日本経済新聞』朝刊2018年7月14日(企業面)2018年7月14日閲覧。


「産業用ロボット」の続きの解説一覧




産業用ロボットと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「産業用ロボット」の関連用語

産業用ロボットのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



産業用ロボットのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの産業用ロボット (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS