煙幕
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/21 01:00 UTC 版)
概要
煙幕は古く[いつ?]から、敵の照準に対して自らの活動を隠すことを主目的として用いられてきた。日本では忍者が使う手投げ煙幕弾(煙玉)が知られており、江戸時代前期に成立した忍術書「万川集海」に「鳥の子」(卵の意)という煙玉の記述がある。2015年から行われた再現実験でも多量の白煙を出すことに成功している[1]。また煙玉を模した玩具の煙幕花火も古くから親しまれている。
赤外線やレーザーを利用したセンサーが普及した20世紀末以後現在の戦闘では、より新たな目的に利用される。例えば、可視光線と同様に赤外線をさえぎることで赤外線に反応するセンサーや赤外線を利用した暗視装置に露見することを防ぎ、また、測距用や照準用のレーザーをさえぎることで車両や兵士に対する攻撃を防ぐことができる。空中にアルミ箔などを散布しレーダーの電波をさえぎるチャフも、センサー側の扱う波長に応じて散布する粒子の大きさが異なるだけで、原理的には煙幕と同様のものといえる。
発煙手榴弾
発煙手榴弾は、個人が煙幕を展開するために使用する小型の発煙弾である。主に歩兵部隊の自衛に使われる。
狼煙として使うために色をつけたものもあり、合図や場所の指示、目印などに使われる。
手榴弾本体は、上部と底部に煙を放出するための数個の穴をもった鉄製のシリンダーと発火装置から構成され、
シリンダー内部には煙を発生させるための混合物が約250-350グラム詰められている。
この赤、緑、紫、黄色などの色のついた煙を発生させるための混合物は、塩素酸カリウム、重炭酸ナトリウム、ラクトース、染料などからできている。また、煙そのものを作り出す物質としては、HC発煙混合物(六塩化エタン/亜鉛)またはTA発煙混合物(テレフタル酸)が用いられることが多い。
他の種類の発煙手榴弾として、爆発性のものがある。
これらは白リン(WP)で満たされており、爆発によって周囲に散布される。空気中でリンは、自然発火して明るい黄色の炎をあげながら激しく燃焼し、同時に大量の白煙(五酸化二リン)を発生させる。このWP手榴弾は、焼夷手榴弾の代わりとして用いられることもある。
発煙弾
大砲および迫撃砲用の発煙砲弾は、軍事目的で煙幕を発生させる主な手段のひとつであり、特に陸上戦で戦術上有効なものとされる。これらの迫撃砲は元来、通常弾を撃つためのものであり、発煙弾以外の専用装置を用意しなくてもよい。 砲発射の発煙弾は攻勢用で比較的遠方に持続的な煙幕を形成するのに対し、戦闘車両が装備する発煙弾発射機は不意遭遇・奇襲に備えた自己防御用が主で、小型の単発式発射筒を束ねて近距離に複数の発煙弾をばら撒き、一時的に濃密な煙幕を形成させる。
- ^ “煙幕弾「鳥の子」威力実証”. 読売新聞. 2022年5月1日閲覧。
- ^ “室蘭市における戦災の状況(北海道)1-8.日鉄の鋳造工場の破損状況”. 総務省ホームページ. 2020年1月1日閲覧。
煙幕と同じ種類の言葉
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