染色 (生物学) 代表的な染色用色素

染色 (生物学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/12 03:00 UTC 版)

代表的な染色用色素

染色に用いられる色素(染色剤、染色薬)にはさまざまなものが知られている。これらは、それぞれ細胞や組織の異なった部分に反応・集中し、それらの性質の違いは特定の部位を明らかにする事に役立つ。よく知られている染色剤を下へ示した。特に断わりがない場合、その色素はすべて固定された細胞と組織に使用され、生体色素である(生きている生物へ使うのに適している)ことは記述した。

ビスマルクブラウン

ビスマルクブラウン(Bismarck brown、Bismarck brown YまたはManchester brownとも)は酸性ムチンを黄色くする。生きた細胞に使用できる。

カーミン

カーミン (Carmine) はグリコーゲンを強く赤に染める染料である一方で、アルミニウムを媒染剤として使用すると核を染める。

クマシーブルー

クマシーブルー(Coomassie blue、またはCoomassie brilliant blue, CBB)はタンパク質を非特異的に強い青に染める。R-250とG-250の二種類がよく用いられる。R-250は各種の電気泳動後、タンパク質の位置を検出するのに用いられる。簡便なタンパク質染色法であるため多用されるが、感度は銀染色よりも大幅に劣る。G-250はタンパク質と結合すると色が赤から青に変化するため、差スペクトルからタンパク質を定量することにも用いられる(Bradford法)。

クリスタルバイオレット

クリスタルバイオレットは適切な媒染剤と組み合わせると細胞壁をにする。グラム染色に不可欠な色素である。

DAPI

DAPIは蛍光性のDNAと結合する核染色で、紫外線に励起されて強い青の蛍光を出す。DAPIは通常の透過顕微鏡では見る事が出来ない。生きた細胞と固定された細胞で使用できる。

エオシン

エオシン(eosin)はヘマトキシンの対比染色に最もよく用いられ、細胞質、細胞膜、一部の細胞外構造をピンクや赤に染める。これは赤血球には強い赤色を与える。エオシンはグラム染色の対比染色や他の多くの手順にも使う事ができる。二つの非常に近縁な化合物がエオシンと呼ばれている。よく使われているのはエオシンY(eosin yellowish, eosin Y ws)で、非常に薄く黄色がかった種類である。もうひとつのエオシンがエオシンB(eosin bluishまたはimperial red)で、非常に幽かに青みがかった種類である。二つの染料には互換性があり、どちらを使うかは好みと伝統の問題である。

臭化エチジウム

臭化エチジウム (ethidium bromide) はDNAに挿入されて、赤橙色の蛍光を放つ。しかしこれは健康な細胞を染めることはできず、膜の透過性の高い、アポトーシスの最終段階にある細胞を検出するのに使われる。結果的に、臭化エチジウムは細胞群の中のアポトーシスとゲル電気泳動でのDNAの位置を示すマーカーとして使われる。

フクシン

フクシン (fuchsine) はコラーゲン、平滑筋、ミトコンドリアなどの染色へ使う事ができる。これはよくマッソン・トリクロームの一部として使用される。フクシンは塩基性と酸性が存在し、PAS反応には塩基性フクシンが用いられる。

ヘマトキシリン

ヘマトキシリン(英語:haematoxylin [英], hematoxylin [米])は核を青紫または茶色に染色し、媒染剤(英語:mordant)が必要である。組織学で共通して使われる方法の一つであるヘマトキシリン・エオシン染色においてエオシンと共にいつも使用される。ヘマトキシリン色素で核を静紫色に、エオシン色素で細胞質を赤黄色に染色することで、ホルマリン固定パラフィン包埋された組織の薄切標本を染色する方法が、全世界的に普及している。

光学顕微鏡(英語:light microscope)を用いた組織学的研究や、病理診断などで最も一般的に用いられている染色法であり、染色法の頭文字をとってHE染色(エイチ・イー染色)とも略称される。またヘマトキシリン染色は免疫組織化学(同義語:免疫染色)を行った後の核染色(対比染色とほぼ同意)にも広く用いられる。

Hoechst染色

Hoechst 33258Hoechst 33342は近縁の蛍光色素である。DNAと結合して強い蛍光を放つが透過光の元では見えない。この二つの化合物は機能が非常に似通っている。

ヨウ素

ヨウ素デンプン指示薬として使われる化学物質である。溶液にデンプンとヨウ素があると、強烈な暗い青色のデンプン・ヨウ素複合体が出現する。デンプンは殆どの植物細胞に共通の物質であり、薄いヨウ素溶液が細胞に存在するデンプンを染める。グラム染色として知られる、微生物学の技術にヨウ素は使われている。

ルゴール液 (IKI)は、細胞核をはっきり見えるようにするために使え、茶色の溶液がデンプンの存在で黒く変わる。

マラカイトグリーン

マラカイトグリーン(malachite green, diamond green Bまたはvictoria green Bとしても知られる)は細菌へのヒメネス染色において青緑の対比染色をサフラニンに対して使える。また、これは芽胞を直接染色するのにも用いられる。

メチルグリーン

メチルグリーン (methyl green) はクリスタルバイオレットと近縁の化学物質である

メチレンブルー

メチレンブルー (methylene blue) はヒトの細胞などの動物細胞に使われ、核を見やすくする。

ニュートラルレッド

ニュートラルレッド(neutral redまたはtoluylene red)は核を赤く染める。対比染色によく使われる。

ナイルブルー

ナイルブルー(nile blueまたはNile blue A)は核を青く染める。生きた細胞へ使用できる。

ナイルレッド

ナイルレッド(nile red、nile blue oxazoneとしても知られる)はナイルブルーを硫酸と煮る事で作られる。 ナイルレッドは親油性の色素で、細胞内の油滴に貯蔵されてそれらを赤く染める。生きた細胞へ使用可能。

ローダミン

ローダミン (rhodamine) は蛍光染料である。

サフラニン

サフラニン(Safranin、またはサフラニンO)は核を赤く染色し、対比染色へよく使用される。また、コラーゲンを黄色く染める。

アリザリンレッドS

アリザリンレッドS(alizarin red S)は金属イオンのような陽イオンと結合し、赤く発色する。そのため、硬骨組織のようなカルシウムイオンの沈着部位を染色するのに用いられる。

アルシアンブルー

アルシアンブルー(英語:Alcian blue)はフタロシアニン色素の一種である。粘液(厳密にはムコ物質、ムチン)を染める組織染色法としてSteedman(1950年)が導入した色素である。他のムチン染色に比較して簡便で染色時間も30分以内と短いのが特徴である。アルシアンブルー分子の中心には銅が結合しているためcopper phthalocyaninという化学構造を有している。水溶性を増すために化学的な修飾が施されている。現在、染色に用いられている色素はSteedmanらが使用したAlcian blue 8GSから進化した8GXという色素が普及している。

現在ではシアル化されたムコ物質(シアロムチン)、硫酸基を有するムコ物質(スルホムチン)、軟骨や線維性結合織に含まれるコンドロイチン硫酸ヘパラン硫酸デルマタン硫酸ヒアルロン酸のような酸性ムコ多糖類を特異的に染色するために用いられる。色素が結合した部位は青藍色に鮮やかに染色される。

アザン・マロリー染色

膠原線維を青く染める。筋組織を赤く染める。

ワンギーソン染色

膠原線維を赤く染める。筋組織を黄色く染める。

ムチカルミン染色

粘液を赤く染める。




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