国鉄ED79形電気機関車 運用の変遷

国鉄ED79形電気機関車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/01 09:46 UTC 版)

運用の変遷

各区分とも検査は苗穂工場が担当し、同工場入場時および同工場検査後の試運転では工場近辺の札幌近隣区間で本形式が稼動していた。配置区から苗穂工場までの経路に非電化区間を含むため、DD51形DF200形などのディーゼル機関車が牽引して回送を行っていた。

JR北海道

快速「海峡」を牽引するED79形(五稜郭駅、1992年撮影)

1986年度改造落成分は、函館運転区に配置された[5]。また、1987年度改造分の種車となるED75形10両については国鉄分割民営化までに函館運転区に転入している[14]。青函トンネル開通を目前にした1987年5月12日の五稜郭準備運転区が発足し、1986年度落成分については同日付で同区に転入した[14]。1987年度落成分については、改造日と同日に同区に転入している[5]。五稜郭準備運転区は、青函トンネルが開通した1988年3月13日付で青函運転区に改称され、基本番台・100番台の全機を配置し、津軽海峡線の青森 - 五稜郭・函館間で、旅客列車には単機で、貨物列車には100番台などとの重連で運用された。

本形式は仕様上方向転換ができないため、津軽線 - 青森駅 - 青い森鉄道線 - 青森信号場 - 奥羽貨物支線 - 津軽線 で構成されるデルタ線を一度に経由する貨物列車 - 旅客列車の連続運用は行われない。

1998年からは「ドラえもん海底列車」牽引のため、一部の車両に「ドラえもん」のキャラクターイラストが描かれた。

2002年12月の東北新幹線八戸開業による列車体系変更で快速海峡」が廃止され、同列車および「ドラえもん海底列車」での運用が終了[注 5]した。これに伴い「ドラえもん」塗装車は元の塗装に復旧されている。

2006年3月ダイヤ改正でJR貨物からの運用受託が解消され、貨物列車の定期運用が終了した。これはJR貨物が投入を進めていた新型のEH500形電気機関車による東北本線系統からの直通運用拡大によるものである。同改正では寝台特急日本海1・4号」が区間廃止され、同列車での運用が終了している。

継続使用する車両には特別保全工事が施工される一方、仕業減少や老朽化により廃車も進行し、2003(平成15)年度に3両(3, 6, 21)、2004年度に2両(2, 16)、2005(平成17)年度に3両(5, 8, 17)、2008(平成20)年度には保留車扱いだった3両(1, 15, 19)が廃車された[15]。さらに、2012年(平成24年)10月に10が五稜郭から苗穂へ部品取り車として回送、20の修繕に一部の部品を流用した後10月31日付で廃車解体され、11も部品取り用途として廃車となった。稼動車の一部には、第2エンド側の集電装置をシングルアーム式パンタグラフの PS79 形に交換した車両が存在した。その後、2016年(平成28年)3月26日に北海道新幹線(新青森 - 新函館北斗)が開業し、海峡線の架線電圧が交流20 kVから同25 kVに昇圧されたため、全機が運用を離脱。最後まで残った5両(4, 7, 13, 14, 20)が2016年3月31日付で廃車され、形式消滅した[16]。これにより、2016年(平成28年)4月1日を以って同社から電気機関車が消滅した[注 6][17]

100番台は基本番台との重連で貨物列車の牽引に充当されたが、新形機関車の導入などによって順次廃車が進み、2006年(平成18年)3月のダイヤ改正で定期運用から撤退した。その後も保留車として3両(104, 107, 108)が残存していたが、2009年(平成21年)3月24日付で廃車され、消滅している[15]

廃車後は0番台・100番台共に解体され、2005(平成17)年度に廃車された5号機のみが五稜郭機関区に残存していたが、これも2020年(令和2年)2月に解体された。

牽引した列車。

JR貨物

苗穂工場から五稜郭機関区への無動力回送苗穂 - 白石

50番台は五稜郭機関区に配置され、津軽海峡線青森信号場 - 五稜郭間の貨物列車牽引に重連で運用されていた。

貨物列車増発用として1989年(平成元年)3月ダイヤ改正で6両(51 - 56)が落成して運用を開始する予定だったが、落成が遅れたために当初は青函運転区の0番台ないし100番台を借用する形となった[18]1990年3月改正で4両(57 - 60)が追加された。1991年3月ダイヤ改正では青森信号場での間合いを生かし、運用範囲が盛岡貨物ターミナル駅まで、1997年3月ダイヤ改正では長町駅まで拡大したが、2001年3月ダイヤ改正で青森信号場以南の運用をEH500形に移管した[18]

2000年(平成12年)に五稜郭駅構内で発生した衝突事故で56号機が廃車された。2015年(平成27年)3月1日の時点で9両が在籍していたが[19]、北海道新幹線の開業を待たずに2015年(平成27年)4月に全機が運用を離脱し[20]、廃車となった[21][22]

廃車後は全て解体処分されており、現存しない。


注釈

  1. ^ この年はEF66型100番台EF81形500番台も増備されている
  2. ^ MT52Cは1991年、1992年に増備された関門トンネル用のEF81形450番台でも採用された。
  3. ^ 国鉄時代以来、交流電化区間で運転される電気機関車は、進行方向後ろ寄りのパンタグラフのみを使うことになっており、北海道でも1968年(昭和43年)に函館本線が交流電化された際に投入された、試作機のED75形501と量産形のED76形500番台は同様の扱いであった。しかし、1975年(昭和50年)頃から2エンド側(上り、小樽方)を常用、1エンド側(下り、旭川方)を予備とする扱いに変わっており、ED79形も函館本線全体で見ると同様の扱いとなっている。
  4. ^ a b c 1987年3月1日以降は秋田運転所秋田支所
  5. ^ 「ドラえもん海底列車」は2003年以降781系電車を用いて運転された。
  6. ^ JR旅客6社のうち、発足以来電気機関車を保有したことがないJR四国を除く5社で電気機関車を廃絶したのは、2008年(平成20年)のJR東海、2012年(平成24年)のJR九州に次いで3例目となる。

出典

  1. ^ 『車両技術』180号 日本鉄道車輛工業会 1987年 p.3
  2. ^ a b c d e 『車両技術』180号 日本鉄道車輛工業会 1987年 p.4
  3. ^ 『車両技術』180号 日本鉄道車輛工業会 1987年 p.5
  4. ^ 鉄道ファン1990年10月号75p、「近代形電機転身の記録6」より。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 『鉄道ピクトリアル』通巻712号、p.62
  6. ^ a b c d e f 『鉄道ファン』通巻579号、p.33
  7. ^ a b c d e f g 『鉄道ファン』通巻519号、p.84
  8. ^ 『鉄道ファン』通巻484号、p.87
  9. ^ 『鉄道ファン』通巻496号、p.86
  10. ^ a b 『車両技術』187号 日本鉄道車輛工業会 1989年 p.9
  11. ^ 『車両技術』187号 日本鉄道車輛工業会 1989年 p.8
  12. ^ 『車両技術』187号 日本鉄道車輛工業会 1989年 p.4
  13. ^ 『鉄道ファン』通巻471号、p.83
  14. ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻712号、p.63
  15. ^ a b 「JR 各社の車両配置表 平成21年4月1日現在」 - 『鉄道ファン』 2009年7月号 No.579[要ページ番号]
  16. ^ 鉄道ファン編集部、2016、「北海道旅客鉄道(本誌2016年7月号特別付録 補遺)」、『鉄道ファン』56巻(通巻665号(2016年9月号))、交友社 p. 208(JR旅客会社の車両配置表・データバンク2016、補遺)
  17. ^ 鉄道ファン編集部、2016、「JR旅客会社の車両配置表」、『鉄道ファン』56巻(通巻663号(2016年7月号))、交友社 p. 5(別冊付録、北海道旅客鉄道・機関車配置分)
  18. ^ a b 『鉄道ファン』2007年4月号、交友社、2007年、p.127
  19. ^ 鉄道貨物協会『2015 JR貨物時刻表』p.220
  20. ^ 電気者研究会『鉄道ピクトリアル 2015年10月臨時増刊号 鉄道車両年鑑 2015年版』p.72
  21. ^ 『鉄道ピクトリアル 2015年10月臨時増刊号 鉄道車両年鑑 2016年版』p.58
  22. ^ 2016年3月時点で五稜郭機関区から本形式の配置がなくなっている。出典:鉄道貨物協会『2016 JR貨物時刻表』p.220


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