写像 基本概念

写像

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/16 13:37 UTC 版)

基本概念

像・逆像

BB の部分集合とするとき、f によって B に写される始域 A の元全体からなる集合 {aA  |  f(a) ∈ B′}B逆像または原像といい、f−1(B′) で表す[注釈 2]

A の部分集合 X の元の f による像たちの全体からなる終域 B の部分集合 {f(a)  |  aX}Xf によるといい、f[X], fX などで表す。特に fA による像 f[A]f値域 (range) と呼び、ran(f), Im(f) などで表す[注釈 3]。つまり、写像 f: AB あるいは GfA × B値域 ran(f)

全射であり単射でない。
単射であり全射でない。
全単射。

全射・単射・全単射

右全域性「f: AB について ran(f) = B」が成り立つとき(つまり値域と終域が一致するとき)、fA から B への全射という。

左一意性「A の任意の元 a1, a2 に対して、a1a2 ならば f(a1) ≠ f(a2)」が成り立つとき、 f単射という。包含写像は単射である。単射の制限写像も単射である。

A から B への全射 f がさらに単射でもあるとき、fA から B への全単射であると言われる。定義域を A とする任意の単射 f はあきらかにその値域 f(A) への全単射である。

逆写像

fA から B への全単射とする。そのとき、 B の元 b に対して、 f(a) = b であるような A の元 a がちょうど1つ存在する。そこで、 B の元 b にそのような A の元 a を対応させる B から A への写像を f逆写像といい、f−1 と表す。定義より次が成り立つ:

f−1 : BA、 aAbB ( f−1(b) = af(a) = b )[9]

f−1B から A への全単射である。f−1 の構成から、

であることが分かる。

関連概念および定理

A からそれ自身への全単射全体の集合を S(A) とすると、写像の合成は結合法則を満たし、恒等写像を単位元として、任意の全単射が逆写像を逆元に持つから、これはをなす。特に An 個の元からなる有限集合の場合の S(A)n対称群という。

f: AB, g: CD の合成 gf: AD が定義可能で全単射であるとき、g が全射であることおよび f が単射であることが容易に確かめられるが、このことの逆も次の意味で成り立つ。

  • f: AB が全射であるとき、(選択公理を仮定すると)B から A への写像 r が存在して右可逆性 fr = idB が成り立つ。この r のことを、f右逆写像という。
  • f: ABA ≠ ∅)が単射であるとき、B から A への写像 l が存在して左可逆性 lf = idA が成り立つ。この l のことを、f左逆写像という。

この二つの事実には、正確に逆が成り立つ。従って、全射と単射を次のように定義することもできる;

写像 f が右逆写像を持つとき、f を全射といい、f が左逆写像を持つとき、f を単射という。

注釈

  1. ^ この事実は0の0乗を 1 と定義する理由の一つに挙げられる(ただし、いつもそのように定義するわけではない)
  2. ^ ここに、f−1 は単なる符牒であって必ずしも写像を定義しないが、対応と考えることができるし、写像 fを持てばそれに一致する。
  3. ^ 部分写像を写像と呼ぶ立場と同様に、やはり値域と終域を明示的に区別しない立場もある。またこの立場では値域と終域とを区別せずにコドメイン (codomain) あるいはターゲット (target) と呼ぶこともある。
  4. ^ 全域的でないものに限って部分写像と言っている場合もある。
  5. ^ 部分写像と全域写像を総称して写像と呼ぶ流儀もある。これは、定義域と始域の区別を重視しない立場であるということもでき、この立場で始域や定義域を区別せずにドメイン (domain)あるいはソース(source)と呼ぶこともある。

出典

  1. ^ 例えば(ケリー 1968, p. 10)は「関数対応写像作用素をすべて同じ意味で使用することにする」という断り書きをつけている。
  2. ^ The words map or mapping, transformation, correspondence, and operator are often used synonymously. (Halmos 1970, p. 30). (訳文: 写像変換対応および作用素の語がしばしば (関数の) 同義語として用いられる)
  3. ^ 例えば Lang 1971, p. 83, 松坂 1968, p. 28, PlanetMath など
  4. ^ 松本 (1988) は、多様体上の実数値写像を関数と呼んでいる。
  5. ^ 松坂 1968, p. 298.
  6. ^ 松坂 1968, p. 24, 37, 38.
  7. ^ Kunen 1980, p. 14
  8. ^ 松本 (2004), 注意 1.1.6, 定義 1.1.7 なども参照
  9. ^ a b c 松坂 1968, p. 34.
  10. ^ 松坂 1968, p. 35, 定理 6.
  11. ^ a b 松坂 1968, p. 36.
  12. ^ 松坂 1968, p. 37.
  13. ^ 松坂 1968, p. 55.
  14. ^ a b 松坂 1968, p. 59.
  15. ^ 松坂 1968, p. 38.
  16. ^ Dauben (1990), Georg Cantor, p. 174, https://books.google.com/books?id=n3t4b6GUlhAC&pg=PA174&dq=%22Belegungsmenge%22 
  17. ^ Dauben (1990), Georg Cantor, p. 174, https://books.google.com/books?id=n3t4b6GUlhAC&pg=PA174&dq=%22exponentiation%22 
  18. ^ 松坂 1968, p. 296.
  19. ^ 松坂 1968, p. 297.
  20. ^ 松坂 1968, p. 50.






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