ヤマノイモ 形態・生態

ヤマノイモ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/19 14:17 UTC 版)

形態・生態

雌雄異株多年生つる植物で、茎は淡緑色で他物に絡みつき、地上部は1年で枯れる[11][10]。茎は長く伸びて、まばらに枝分かれをする[11]はふつう対生するが、まれに互生し、葉身は長卵形から三角状披針形で、基部が凹んだ細長いハート形をしており、長い葉柄で茎につく[11][10][8]葉身には先端に向って伸びる5本の葉脈が目立つ[2]

花期は(7 - 9月ごろ)で[6]葉腋から3 - 5本の細長い穂状の花序を出して、白い小さな粒のような目立たない花を付ける[11][2][9]雌雄異株で雄株と雌株があり、雄花の花序は直立し、雌花の花序は垂れ下がる[11][10]

果実蒴果で平たく、円形の大きな3枚の陵(翼)があり、縦の長さより横幅が広い[11][10]。それぞれの陵が中に種子を1個含んでいて、熟すと壁が剥がれて、中から扁平な種子が出る[10][8]。種子は、周囲に紙のように薄い円形の膜質翼がついていて、果実が割れたときに散布される[11][10]。雌株では種子のほかに、葉腋に発生する球状の芽である零余子(むかご、珠芽)をつけて栄養繁殖する[10][8]。ムカゴ(球芽)は、種類によって付けるものと、つけないものがある[12]。ムカゴは直径1センチメートルほどの球状から、大きなもので長さ3センチメートルほどに達する場合がある。

地下には円柱状で多肉質の担根体(芋)が1本あり、自然薯(じねんじょ)ともよばれている[10]トロロイモとしても知られているが、芋とされる中が白くて柔らかい部分は、植物学的には特殊な組織で担根体(たんこんたい)とよび、ヤマノイモ属に特有な根でも茎でもない器官であり[2]、茎の基部についた枝の下側部分が伸びたものである[11]。担根体は地下深くへとまっすぐに伸びて[11]、石などの障害物がなければ長さは1メートルを超えることもある[13]。毎年春に再び頂部から発芽して地上部を育てる栄養源となり、成長にしたがって担根体は縮小して夏までには元のイモはすっかりなくなって空の袋となり、秋までには再び栄養を蓄えて一回り大きな新しい担根体と置き換えられ更新される[6][3]。なお、秋にできるヤマノイモにできる芋のようなムカゴも、小型の担根体である[2]


注釈

  1. ^ あえて薬味の青のりをふりかけなかった、とも描写されている。
  2. ^ 箱根の「はつはな」など。

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Dioscorea japonica Thunb. ヤマノイモ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月16日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i 吉村衞 2007, p. 120.
  3. ^ a b c 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 110.
  4. ^ a b c d e 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 124.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m 貝津好孝 1995, p. 73.
  6. ^ a b c d e f g h 篠原準八 2008, p. 108.
  7. ^ 北海道南西部桧山地域に生育するヤマノイモの遺伝的特性
  8. ^ a b c d 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2012, p. 220.
  9. ^ a b c d e 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 214.
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 馬場篤 1996, p. 112.
  11. ^ a b c d e f g h i j 田中孝治 1995, p. 211.
  12. ^ 板木利隆『図解やさしい野菜づくり』家の光協会、1996年10月、257頁。ISBN 978-4259533946 
  13. ^ a b c d e f g h i 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 111.
  14. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  15. ^ 厚生労働省日本人の食事摂取基準(2015年版)
  16. ^ a b c d 田中孝治 1995, p. 212.
  17. ^ a b c d 篠原準八 2008, p. 109.
  18. ^ 団野源一「ヤマノイモを生で食することができる理由は生でんぷんの消化性によるものではない」『大阪青山大学紀要』第2巻、大阪青山大学『大阪青山大学紀要』編集委員会、2009年3月、29-31頁、CRID 1050564288823221632ISSN 18833543国立国会図書館書誌ID:10905743 
  19. ^ 徳力富吉郎東海道53次』保育社、1992年、37頁https://books.google.com/books?id=FLeXGx7AGLMC&pg=PA37 
  20. ^ a b c 清水茂雄「静岡市とその周辺の文学」『国文学年次別論文集 国文学一般平成10(1998)年』、42–43頁2000年https://books.google.com/books?id=oFAjAQAAMAAJ 
  21. ^ 岡本かの子『東海道五十三次』1939年
  22. ^ 見坊豪紀山かけ」『三省堂国語辞典』、1152頁1982年https://books.google.com/books?id=Hge5AAAAIAAJ 
  23. ^ a b 植原路郎『蕎麦談義』東京堂出版、1973年、61頁https://books.google.com/books?id=b6YCAAAAMAAJ 
  24. ^ マグロ祭りきょうから 都留」『読売新聞』2019年3月16日https://www.yomiuri.co.jp/local/yamanashi/news/20190315-OYTNT50101/ 
  25. ^ 自然薯の栽培を10年前に始め自然薯料理店「みや古」、玉城町に」『伊勢志摩経済新聞』2014年2月23日https://iseshima.keizai.biz/headline/1968/ 
  26. ^ 赤井達郎京の美術と芸能: 浄土から浮世へ』京都新聞出版センター、1985年、89頁https://books.google.com/books?id=f9BMAAAAMAAJ 
  27. ^ 谷口歌子「′85短歌セミナ--2-古典文学にみる食物--奈良・平安期を中心として」『短歌研究』第42巻、第2号、313頁、1990年https://books.google.com/books?id=nCtmAAAAIAAJ 
  28. ^ 『群書類従 厨事類記』国立公文書館デジタルアーカイブ
  29. ^ 林文子「『日葡辞書』が語る食の風景(1)」『東京女子大学紀要論集』第58巻第2号、東京女子大学、2008年3月、134頁、CRID 1050001337659479552ISSN 04934350 
  30. ^ 歴史民俗用語辞典「薯蕷麺イモメン(imomen)」 日外アソシエーツ 2015年09月19日閲覧
  31. ^ 第十八改正日本薬局方”. 厚生労働省. p. 生薬-166. 2021年4月5日閲覧。
  32. ^ 『作りおきおかずで朝ラクチン!基本のお弁当300選』180頁。
  33. ^ 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:グロリオサ 厚生労働省
  34. ^ 主婦の友社編『野菜まるごと大図鑑』主婦の友社、2011年2月20日、204 - 205頁。ISBN 978-4-07-273608-1 
  35. ^ 吉村衞 2007, p. 121.
  36. ^ a b 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 215.
  37. ^ 鈴木晋一 『たべもの史話』 小学館ライブラリー、1999年、195 - 201頁






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