ミールワーム 利用

ミールワーム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/17 03:30 UTC 版)

利用

上記のように小動物の飼料として飼育されるようになった昆虫であるため、一部がモデル生物として生物学研究の場で用いられるほか、主として動物園やペット飼育の現場で生餌として利用される。飼料としての利用には、強靭な外皮に覆われているため、脱皮直後の外皮が白く柔らかい個体を与えるのが良いとされる。栄養価はカロリーこそ高いものの、ミネラルなどの栄養バランスは必ずしも良いとはいえない。特に、ミールワームを主要な生餌として与える機会の多い爬虫類両生類のような脊椎動物は、リン酸カルシウムで構成された内骨格を持つため、リンとカルシウムの摂取バランスが重要であり、多くの場合はリン:カルシウム=1:1.5が望ましいとされているが、ミールワームは リン:カルシウム=14:1でリンカルシウムの比率が著しく悪いため、カルシウムの摂取上好ましくない面がある。そのため、飼料として使う際には炭酸カルシウムの粉末を表面に塗してミネラルバランスを矯正する方法(ダスティング)や、あらかじめミールワームに野菜屑やドッグフードなどを餌として与えておき、間接的にビタミンなどの含有量を上げる方法(ガットローディング)がよく用いられる。なお、昆虫食の爬虫類や両生類への飼料としては、ミールワーム同様に室内での飼育繁殖技術が確立されており、なおかつ栄養バランスが良好とされるフタホシコオロギやヨーロッパイエコオロギのようなコオロギが中心である(余談だが、これは日本での例であり、植物防疫法がない諸外国ではコオロギと同じ頻度で、バッタゴキブリが飼料として普通に流通している)。そのため、ミールワームはおやつのような位置付けをされることが多い。

しかし、芋虫やナメクジといった地面をはいずり回る小動物を嗜好する種については、動きが似ているミールワームへの反応が良好であり、上記の理由から主食としての利用は勧められないが、飼育初期の餌付けには有効である。また、コオロギと比べてカロリーが高いことから、痩せた個体に与えて復調させるのにも良い。

飼料として与える際の注意点としては、獲物を咀嚼する爬虫類はともかく、獲物を丸呑みする両生類においては体内で内臓を食い破る被害例(特にジャイアントミールワーム)があり、頭部を潰して飼育動物への危害を封じるか、両生類には与えないように注意する必要がある。爬虫類でも咀嚼しきれないまま呑みこむ可能性があるため、頭部を潰しておくに越したことはない。

同じ脊椎動物でも昆虫食の鳥類哺乳類の場合、多様な餌メニュー、たとえば小鳥の場合だと、日本では伝統的にさまざまな栄養バランスを配慮したすり餌を与えてきたし、小型霊長類のような哺乳類の場合には生餌の昆虫と同時に果物野菜なども共に与えるのが普通であるため、生きた昆虫を主食にするような爬虫類や両生類の飼育のように、ミールワームの栄養バランスの問題が取り上げられることは多くない。与える際も、啄みや咀嚼、手足で引きちぎるなどの行動をする両者では、被害に特に神経質になる必要もない。

その一方、サシガメや肉食性のアリジグモサソリモドキなど、一部の肉食性昆虫並びに蛛形類の飼育において、ほとんどミールワームを主食にして飼育繁殖が成り立っているような例もある。

2015年には、ミールワームに発泡スチロールを食べて分解する能力があることが、スタンフォード大学の研究者チームによって発見された。発泡スチロールはミールワームの腸内微生物によって堆肥二酸化炭素に分解され、排出されていることが分かっている[1][2]


  1. ^ Rob Jordan (2015年9月29日). “Plastic-eating worms may offer solution to mounting waste, Stanford researchers discover”. Stanford Report. 2015年10月5日閲覧。
  2. ^ ごみ問題解消か、虫で発泡スチロールを生物分解”. CNN.co.jp (2015年10月1日). 2015年10月12日閲覧。


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