ヘイケ・カメルリング・オネス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/08 07:06 UTC 版)
生涯
前半生
1853年、オランダのフローニンゲンにて誕生。父は煉瓦工場を経営していた。母はアーネム出身。
1870年、フローニンゲン大学に入学。その後1871年から1873年までドイツに留学し、ハイデルベルク大学にてロベルト・ブンゼン、グスタフ・キルヒホフらの教えを受けた。その後再びフローニンゲンに戻り、1876年には博士論文 "Nieuwe bewijzen voor de aswenteling der aarde"(地球自転の新しい証明)のための研究を完成させ、1878年から1882年までの間、デルフト工科大学にて Johannes Bosscha の助手として働き、1881年から1882年までは講師も任された。デルフト時代にファン・デル・ワールスと出会い、彼との議論を通じ、低温における物理現象に興味を抱くようになった。
ライデン大学
1882年、ライデン大学実験物理学教授に就任。1894年、酸素、窒素、空気の液化装置を備えた低温物理学研究所を同大学に設立した。1908年、ヘリウムの液化に初めて成功。カール・フォン・リンデらが開発した冷却機と3重構造の魔法瓶を用い、外側から順に液体空気、液体水素を入れて温度を下げ、最終段階はジュール=トムソン効果によって0.9Kという低温を達成し、ヘリウムの液化を実現した。これが、当時の世界一の低温となった。オリジナルの装置はライデンの Boerhaave Museum にある。
家族
1887年に結婚し、息子を1人もうけた。
超伝導
1911年に純金属(水銀、スズ、鉛)を冷却し、超低温での電気的性質の分析を行った。ウィリアム・トムソン(ケルビン卿)らは、絶対零度では電気伝導体の電子が流れなくなる、つまり金属の比抵抗が無限大になると信じていた。一方オネスらは温度が低くなるに従って電気抵抗が小さくなり、絶対零度では0になると考えていた。これはイギリスのマーティセン (en) が温度が低くなると金属の伝導率が高まり、抵抗値が小さくなると示したことに基づいている[1]。
4.2Kで、水銀の電気抵抗が突然消滅した。当初オネスは試料の電極がショートしたと思ったが、その後で現実に電気抵抗がゼロになったのだと気づいた[2]。これが超伝導現象を発見した瞬間だった。オネスは「水銀は新たな状態へと遷移した。この状態の特異な電気的特性から、これを超伝導状態 (superconductive state) とでも呼ぼう」と記している。その後、スズ、鉛などでも超伝導現象が起こることを発見した。また、超伝導状態の物質に磁場を加えると、超伝導が消失することを発見した。なお、オネスは元々 "superconductivity" ではなく "supraconductivity" という語を使っていた。
低温物理学への貢献により、1912年にランフォード・メダル、1913年にはノーベル物理学賞が授与された。1916には王立協会外国人会員に選出。
後世への影響
1926年に死去するまで生涯ライデン大学教授職として過ごした。彼が使っていた実験装置の一部はライデンの Boerhaave Museum にある。最初のヘリウム液化に成功した装置はライデン大学物理学科の建物の玄関ロビーに展示されている。死後、ライデン大学の低温研究所はカメルリング・オネス研究所と改名された。オネスの後任となったウィレム・ヘンドリック・ケーソンは、1926年に世界で初めて固体ヘリウムを作ることに成功した。
後に発見されたヘリウムの超流動現象を「オネス効果(または現象)」と呼ぶこともある。
また、「エンタルピー」という用語を作ったのはオネスとされている[3]。
- ^ Matthiessen, A. Philosophical Transactions; 1862 and also Philosophical Transactions; 1864
- ^ Kammerlingh Onnes Begins Work on Superconductivity
- ^ Howard, Irmgard (2002). “H Is for Enthalpy, Thanks to Heike Kamerlingh Onnes and Alfred W. Porter”. Journal of Chemical Education (ACS Publications) 79 (6): 697. doi:10.1021/ed079p697 .
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