ツクツクボウシ ツクツクボウシの概要

ツクツクボウシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/28 09:34 UTC 版)

ツクツクボウシ
左オス・右メス
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
亜綱 : 有翅昆虫亜綱 Pterygota
: カメムシ目(半翅目) Hemiptera
亜目 : ヨコバイ亜目(同翅亜目) Homoptera
上科 : セミ上科 Cicadoidea
: セミ科 Cicadidae
亜科 : セミ亜科 Cicadinae
: ツクツクボウシ族 Dundubiini
: ツクツクボウシ属 Meimuna
Distant, 1905
: ツクツクボウシ M. opalifera
学名
Meimuna opalifera
(Walker, 1850)
和名
ツクツクボウシ
抜け殻

特徴

成虫の体長は30mm前後で、オスの方が腹部が長い分メスより大きい。頭部と前胸部は緑色で、後胸部の中央にも"W"字型の緑の模様があるが、他の後胸部と腹部は黒色が多い。また、オスの腹側の腹弁は大きく、縦長の三角形をしている。メスは産卵管が非常に長く、産卵管を収納する鞘のような部分がはみ出ている。外見はヒメハルゼミヒグラシに似るが、頭部の横幅が広く、腹弁が大きいことで区別がつく。

抜け殻は小型で前後に細長く、光沢がない淡褐色をしている。

生態

北海道からトカラ列島横当島までの日本列島、日本以外では朝鮮半島中国台湾まで、東アジアに広く分布する。

平地から山地まで、森林に幅広く生息する。地域によっては市街地でも比較的普通に発生するが、基本的にはヒグラシと同じく森林性であり、薄暗い森の中や低山帯で多くの鳴き声が聞かれる。この発生傾向は韓国や中国でも同様である。

成虫は特に好む樹種はなく、シダレヤナギヒノキクヌギカキアカメガシワなどいろいろな木に止まる。警戒心が強く動きも素早く、クマゼミアブラゼミに比べて捕獲が難しい。

成虫は7月から発生するが、この頃はまだ数が少なく、鳴き声も他のセミにかき消されて目立たない。しかし他のセミが少なくなる8月下旬から9月上旬頃には鳴き声が際立つようになる。9月下旬にはさすがに数が少なくなるが、九州などの西南日本では10月上旬に鳴き声が聞かれることがある。

なお、後述のように八丈島や岡山・長崎では、7月上旬から鳴き始めることが知られている。

北日本での増加

ツクツクボウシは、元来北日本では川沿いのシダレヤナギ並木など局地的にしか分布していなかった。近年、北海道では札幌市の真駒内公園で増加しているほか、道内の各地で鳴き声が聞かれるようになっている。また、岩手県や宮城県においても、このセミが増えつつある。一方で、青森県では分布が局地的であり、今のところ増加するには至っていない。

ツクツクボウシの楽園

八丈島では、セミはほぼツクツクボウシ一種しか生息しておらず(他種はヒグラシがわずかに生息)、ひと夏中ずっと鳴いており個体数も非常に多い。

ツクツクボウシの早鳴き

八丈島では7月上旬(年によっては6月下旬)、対馬でも夏の初めから現れるが、一般に本土では夏の終わりを象徴する昆虫とされている。一方で、岡山や長崎など一部の地域では、近年、夏の初めから鳴きだすことが知られている。

岡山・長崎などでのツクツクボウシの早鳴きについては不明であるが、都市部のヒートアイランド現象による地中の温暖化が、幼虫期の成長に影響を与え、成虫の出現時期の早期化につながっている可能性が挙げられている。

鳴き声

オスは午後の陽が傾き始めた頃から日没後くらいまで鳴くが、鳴き声は特徴的で、和名もこの鳴き声の聞きなしに由来する。鳴き声は「ジー…ツクツクツク…ボーシ!ツクツクボーシ!」と始まる。最初の「ボーシ!」が聞き取りやすいためか、図鑑によっては鳴き声を「オーシツクツク…」と誤って逆に表記することもある。以後「ツクツクボーシ!」を十数回ほど繰り返しながらだんだん速度が早くなり、「ウイヨース!」を数回繰り返したのちに、最後に「ジー…」と鳴き終わる。「ウイヨース」の直前に「ツクツクウィー」という鳴き声が入ることもある。

また、1匹のオスが鳴いている近くにまだオスがいた場合、それらのオスが鳴き声に呼応するように「ジー!」と繰り返し声を挙げる。合唱のようにも聞こえるが、これは鳴き声を妨害しているという説がある。

大陸産のツクツクボウシの鳴き声は、日本産のものと比べて少し異なる(セミの方言)。またミンミンゼミも同じくやや異なっている。

クロイワツクツク等との鳴き声における共通点

このセミの中には時々訛ったような声で鳴く個体が散見される。具体的には、「ボーシ!」の部分がかなりしわがれた声に聞こえるというものである。このときの鳴き声は同じツクツクボウシ属のクロイワツクツクイワサキゼミの声にも似ており、鳴き声におけるツクツクボウシ属の共通性を実感できる。ちなみにツクツクボウシが普通に鳴いているときの声はクロイワツクツクなどとは似ても似つかぬものである。


  1. ^ 中国からの外来種で国内最大級のセミ 埼玉県川口市で生息確認」『産経新聞』、2018年3月9日。2023年4月23日閲覧。
  2. ^ 戸田尚希 著「タケオオツクツク」、愛知県環境調査センター 編『愛知県の外来種 ブルーデータブックあいち2021』愛知県環境局環境政策部自然環境課、2021年3月、81頁https://www.pref.aichi.jp/kankyo/sizen-ka/shizen/gairai/search/pdf/81_2021.pdf2023年4月23日閲覧 


「ツクツクボウシ」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ツクツクボウシ」の関連用語

ツクツクボウシのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ツクツクボウシのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのツクツクボウシ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS