カルメン (オペラ)
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抜粋・編曲作品
第1幕への前奏曲が独立した管弦楽曲として演奏される機会が多いほか、それを含む前奏曲、間奏曲、アリアなどを抜粋編曲した組曲や独奏曲も演奏される。
ホフマン版組曲
一般的に『カルメン』組曲として知られているのは、ギローの手による編曲でシューダンス社から刊行された、またオーストリアの音楽学者フリッツ・ホフマンがギローの補作をもとにほぼ同じ選曲をしてブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から刊行された「第1組曲」と「第2組曲」である。
- 第1組曲
- 前奏曲と間奏曲を中心に構成される。
- 前奏曲〜アラゴネーズ(第1幕への前奏曲の後半部分、第4幕への間奏曲)
- 間奏曲(第3幕への間奏曲)
- セギディーリャ
- アルカラの竜騎兵(第2幕への間奏曲)
- 終曲(闘牛士)(第1幕への前奏曲の前半部分)
- 第2組曲
- アリアや合唱入りの曲をオーケストラ用に編曲した6曲で構成される。
ビゼー自身によるものでないこともあり、指揮者によっては演奏順を変えたり、第1・第2組曲を1つの組曲として演奏したり、2つの組曲から適宜選曲してオリジナルの組曲を編むことも自由に行われている。入手しやすいCDで上述の曲順通りに演奏しているものは、シャルル・デュトワ指揮・モントリオール交響楽団だけである。レナード・バーンスタイン指揮・ニューヨーク・フィルハーモニックの演奏は上述の全曲を収録しながら、第1組曲にて一部の曲順を入れ替えている(第1組曲を締めくくるはずの「闘牛士」=第1幕への前奏曲の前半部分を、組曲の冒頭へ持ってきている。そのためバーンスタイン盤の第1組曲は「アルカラの竜騎兵」にて締めくくられる)。
シチェドリン版『カルメン組曲』
旧ソビエト連邦の作曲家シチェドリンが1967年に編曲した、13曲で構成されるバレエ組曲。大規模な弦楽オーケストラと、ラテンパーカッションなども含む大量の打楽器を使う異色の編曲である(楽器編成参照)。ビゼーのほかの作品(『アルルの女』の「ファランドール」など)が挿入されているほか、「アルカラの竜騎兵」が3拍子に変更されている、「闘牛士の歌」の「サビ」がなかなか出てこないなど、さまざまな仕掛けがなされている。
曲の始まり(序奏)は、弦楽器のppの持続音の上に、チューブラーベルズ(チャイム)が「ハバネラ」の旋律の断片を暗示するというもので、「編曲」というよりは、ビゼーの『カルメン』の素材を借りたシチェドリンの創作に近い。この印象的な序奏は組曲の最後にも登場し、曲全体はチューブラーベルズの余韻と、弦楽器のpppによる変ニ長調の和音で終わる。
編曲の経緯
1967年に『カルメン』をモチーフにしたバレエが上演されることになり、主演のプリマドンナだったマイヤ・プリセツカヤは最初ショスタコーヴィチに、次いでハチャトゥリアンに編曲を依頼したが、両者とも「ビゼーの祟りが怖い」という理由で断り、仕方なくプリセツカヤの夫であったシチェドリンが編曲することになった。肝心のバレエの初演はブレジネフらの横槍もあって大失敗したが、のちに国外で評価されるようになった。
構成
シチェドリン版と原曲とでは名前に差異がある。英語がシチェドリン版での曲名で、日本語が原曲の該当する部分である。
- Introduction:ハバネラ
- Dance:アラゴネーズ
- First Intermezzo:カルメンの登場の待ち望む男たちの場(第1幕)
- Changing of the Guard:アルカラの竜騎兵
- Carmen's Entrance And Habanera:カルメンが登場した場面とハバネラ
- Scene:第2幕の幕切れの一部(スニガが密輸業者に捕えられる場面)→タバコ工場から女性工員が出てくる場面→セキディーリャ
- Second Intermezzo:第3幕への間奏曲
- Bolero:ファランドール(『アルルの女』より)の一部
- Torero:闘牛士の歌
- Torero and Carmen:ジプシーの踊り(『美しきパースの娘』より)
- Adagio:第1幕前奏曲後半と「花の歌」
- Fortune-telling:カルタ占いの場
- Finale:行進曲と合唱→ドン・ホセとカルメンの二重唱の手前の場面→第2幕フィナーレより→ドン・ホセとカルメンの二重唱→運命のテーマ→カルメンの最初のセリフの場面→Introduction
演奏時間
- 約45分(スコアの表記による)
楽器編成
- ティンパニ5
- 打楽器1(マリンバ、ヴィブラフォン、カスタネット、カウベル3、ボンゴ4、チャイム、ピッコロスネアドラム、ギロ)
- 打楽器2(ヴィブラフォン、マリンバ、スネアドラム、タンブリン、ウッドブロック2、クラヴェス、トライアングル、ギロ)
- 打楽器3(チャイム、クロテイル、マラカス、鞭、スネアドラム、カバサ、ギロ、テンプルブロック3、バスドラム、銅鑼、テナードラム、トライアングル)
- 打楽器4(シンバル、バスドラム、銅鑼、ハイハット、トライアングル、タンブリン、トムトム5)
翻案
マシュー・ボーンによるバレエ作品『ザ・カーマン』はこの編曲に基づいているが、物語は『カルメン』とは異なる[3]。
グールド版『カルメン』
モートン・グールドが全曲から20曲の名旋律を取り出し、自身による編曲を施した演奏時間50分弱の抜粋版を作っている。グールド版は組曲ではなく「オペラの短縮版」と位置づけられており、声楽部分はコルネットとバリトン(バリトン・ホルン)各2に割り当てられている。
構成
- 前奏曲
- プロローグ
- 街の子供たち
- タバコ工場の女たち
- ハバネラ
- 手紙の場
- セギディーリャ
- アルカラの竜騎兵
- ジプシーの踊り
- 闘牛士の歌
- タンブリンの歌
- 花の歌
- 第3幕への間奏曲
- 密輸入業者の行進
- カルタ占いの場
- ミカエラのアリア
- アラゴネーズ
- 行進曲と合唱
- 二重唱(ドン・ホセとカルメン)
- フィナーレ
セレブリエール版『カルメン交響曲』
ホセ・セレブリエールが全曲から12の場面を選んで管弦楽のために再構成した。
構成
- 前奏曲
- 騎兵隊
- ハバネラ
- セギディーリャ
- フガート
- 間奏曲1
- 闘牛士
- 間奏曲2
- アンダンテ・カンタービレ
- 間奏曲3
- 結婚式
- ジプシーの踊り
その他
『カルメン』の名旋律を使った『カルメン幻想曲』と呼ばれる作品がいくつかある。
- パブロ・デ・サラサーテ : カルメン幻想曲 ヴァイオリンとピアノまたは管弦楽のための
- 協奏曲形式としてソロを目立たせるため、「ジプシーの踊り」の最後の管弦楽トゥッティが省略された別の形になっている。
- フェルッチョ・ブゾーニ : ソナチネ第6番「カルメンに基づく室内的幻想曲」
- フランソワ・ボルヌ : カルメン幻想曲 フルートとピアノのための
- フランツ・ワックスマン : カルメン幻想曲 ヴァイオリンと管弦楽のための
- ドナルド・ハンスバーガー : カルメン・ファンタジア 2本のトランペットとピアノ、打楽器のための(または管弦楽伴奏、吹奏楽伴奏のための)
- ヨーゼフ・ヴァイス:ピアノ独奏のための『カルメン幻想曲』
また、ヨハン・シュトラウス2世の弟エドゥアルト・シュトラウス1世が名旋律をたばねたカドリールを作曲している。『カルメン』の上演が初めて成功したのは1879年のウィーンでの上演だとされており、その人気にあやかったものと言われている。
ほかに、ピアニストのウラディミール・ホロヴィッツが『カルメンの主題による変奏曲』を作曲している(正確には、モーリッツ・モシュコフスキによる『ジプシーの歌』の編曲を基にしている)。
- ^ a b c d e "カルメン". ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. コトバンクより2023年10月8日閲覧。
- ^ 中野京子『印象派で「近代」を読む 光のモネから、ゴッホの闇へ』NHK出版、2011年、16頁。ISBN 978-4-14-088350-1。
- ^ Sulcas, Roslyn (2015年7月23日). “Review: Suspense and Charisma in ‘The Car Man’ in London” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331 2020年3月23日閲覧。
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- ^ "マッツ エック". 日外アソシエーツ「現代外国人名録2016」. コトバンクより2023年10月3日閲覧。
- ^ “エック振付「カルメン」”. 東京バレエ団. 2023年10月3日閲覧。
- ^ a b "カルメン・ジョーンズ". デジタル大辞泉プラス. コトバンクより2023年10月3日閲覧。
- ^ <「カルメン」顔寄せコメント>
- ^ “ミュージカル『カルメン』”. 天王洲 銀河劇場. 2023年10月3日閲覧。
- ^ “Calli(カリィ) ~炎の女カルメン~”. 天王洲 銀河劇場. 2023年10月5日閲覧。
- ^ “「Romale」開幕、松下優也が花總カルメンへの狂おしい愛を表現”. ステージナタリー (2018年3月23日). 2023年10月5日閲覧。
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- ^ “ミュージカル・プレイ『激情-ホセとカルメン-』”. 宝塚歌劇公式ホームページ. 2023年10月5日閲覧。
- ^ “バウ・ロマンス『FREEDOM ミスター・カルメン』”. 宝塚歌劇公式ホームページ. 2023年10月5日閲覧。
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- ^ a b “市川ぼたん&中村橋之助らWキャストで挑む、「今回ならでは」の日本舞踊カルメン”. ステージナタリー (2018年6月22日). 2023年10月5日閲覧。
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