アラビア語 アラビア語の特徴

アラビア語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/09 19:53 UTC 版)

アラビア語の特徴

多くの単語は、三つの子音語根として分析することができる。そこに、母音接頭辞接尾辞接中辞を付けて、語彙を派生したり、活用したりする。形態論的には屈折語である。

文字

アラビア語の表記には、通常はアラビア文字が用いられる。フスハーはアラビア文字による正書法を持ち、アーンミーヤも文字化する際は一般にアラビア文字が用いられる。ただし、マルタ語ラテン文字による正書法を持つ。以下は、アラビア文字の主な特徴である。

  • 文字一覧はアラビア文字の項を参照。それぞれの独立形が左右の文字と繋がっていく(ただし例外が6文字ある)。
  • 右から左へと読む。数字は左から右に綴られる。
  • 多くの書体が存在する。「イスラームの書法」を参照。
  • 文語フスハー)はもっぱらアラビア文字で表される。アラビア文字のアブジャド(慣用名称:アルファベット)は従来のアブジャドにおける第1番目の子音であった声門閉鎖音(声門破裂音)としてのアリフ(後世にハムザ(ء)として分離されたもの)と弱文字アリフ(ا)を同時に1番目に置くか、弱文字アリフをلا(ラーム・アリフ)として終盤に置くかで28文字と数えるか・29文字と数えるかの学説に分かれる。
  • 大文字小文字の区別はない。ラテン文字転写では人名などの語頭が大文字で書かれるが、転写の都合上によるもので、もとのアラビア語では固有名詞の語頭を何らかの違う形で書くということはされない。
  • 口語アーンミーヤ)には正書法がない。
  • アラビア文字には母音を示す文字は存在せず、アブジャドに含まれる子音字のみでつづられる。長母音の一部は弱文字を表すためのアリフ(ا)や弱文字と呼ばれる半母音のワーウ(و)ならびにヤー(ي)を用いるがこれらは母音ではなく無母音の子音という扱いとなる。母音の情報は読む側が補って読まなければならないが、不便が生じることからウマイヤ朝期に発音記号が開発された。クルアーン(コーラン)や低年齢向け児童書籍には正確な発音を示すために母音符号などの符号(シャクル)が付記される。書道作品においても、母音符号は装飾を兼ねて付記されることが多い。まれに、成人対象の詩や小説であっても誤読を避けるため自著に母音符号を付記する作家もいる。

発音

文法

  • 定冠詞前置詞が存在し、名詞形容詞(アラビア語では名詞に分類される)は格(主格・属格・対格)・(男性・女性)・数(単数・双数・複数)によって変化する。
  • 女性形、男性・女性複数形には基本となる規則形があるもののそれ以外にもとりうる形が無数に存在するため、個別に記憶しなければならないものが多い。例えば、مُدَرِّسٌ (mudarrisun, 先生) の複数形は規則形であり、語尾に -ūna を付けて、مُدَرِّسُونَ (mudarrisūna) になるが、صَدِيقٌṣadīqun, 友人)の複数は不規則形であるため、صَدِيقُونَ (ṣadīqūna) とはならず、أَصْدِقَاءُ ('aṣdiqā'u) になる。
  • 動詞3人称男性単数完了形を原形とし、語根順配列の辞典では、その形で引くことになる。原型を基本型第一型ともいう。これに加えて、第二型から第十五型までの派生型が存在するが、現代アラビア語は原則として第十型まで用い、第十一型以降は色の変化などといった限られた場合にしか用いられず、第九型は原則として色彩や人体の障害に関する意味を持つ単語である(ただし、派生型は西欧の学者が考案した学習概念であり、アラビア語を母語とする者は用いない)。ハンス・ヴェーアによる『現代文語アラビア語辞典』をはじめとして、多くの辞書は語根順に語が配列されているため、派生型の動詞を辞書で参照するには、動詞からその語根すなわち原形を抽出しなければならず、これが、アラビア語を母語としない初学者にとっての辞書引きを困難にしている。

注釈

  1. ^ Modern Standard Arabic
  2. ^ 関連する記事にタフスィールがある。

出典

  1. ^ 「イスラーム世界のことばと文化」(世界のことばと文化シリーズ)p84-85 佐藤次高・岡田恵美子編著 早稲田大学国際言語文化研究所 成文堂 2008年3月31日初版第1刷
  2. ^ 「イスラーム世界のことばと文化」(世界のことばと文化シリーズ)p85-86 佐藤次高・岡田恵美子編著 早稲田大学国際言語文化研究所 成文堂 2008年3月31日初版第1刷
  3. ^ https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/algeria/data.html#section1 「アルジェリア基礎データ」日本国外務省 2017年6月21日閲覧
  4. ^ https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/morocco/data.html 「モロッコ基礎データ」日本国外務省 2017年6月21日閲覧
  5. ^ https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/iraq/data.html#section1 「イラク基礎データ」日本国外務省 2017年6月21日閲覧
  6. ^ 「アルジェリアを知るための62章」p357 私市正年編著 明石書店 2009年4月30日初版第1刷
  7. ^ 「アルジェリアを知るための62章」p153 私市正年編著 明石書店 2009年4月30日初版第1刷
  8. ^ 「アルジェリアを知るための62章」p358 私市正年編著 明石書店 2009年4月30日初版第1刷
  9. ^ 「アラビア語の世界 歴史と現在」p415-416 ケース・フェルステーヘ著 長渡陽一訳 三省堂 2015年9月20日第1刷
  10. ^ http://mfa.gov.il/MFA_Graphics/MFA%20Gallery/Documents%20languages/FactsJapanese08.pdf 「イスラエルの情報」p142 イスラエル外務省 2017年6月21日閲覧
  11. ^ 「イスラエルを知るための60章」p342 立山良司編著 明石書店 2012年7月31日初版第1刷 
  12. ^ https://www.afpbb.com/articles/-/3127540 「イスラエル、アラビア語を公用語から外す法案を閣議決定」AFPBB 2017年05月08日 2017年6月21日閲覧
  13. ^ 『イランを知るための65章』 岡田久美子・北原圭一、鈴木珠里編著 明石書店  2009年11月20日 p.74 ISBN 9784750319803
  14. ^ http://www.unic.or.jp/info/un/charter/membership_language/ 「加盟国と公用語」 国際連合広報センター 2017年6月21日閲覧
  15. ^ a b 「アラビア語の世界 歴史と現在」p345 ケース・フェルステーヘ著 長渡陽一訳 三省堂 2015年9月20日第1刷
  16. ^ 「アラビア語の世界 歴史と現在」p348-354 ケース・フェルステーヘ著 長渡陽一訳 三省堂 2015年9月20日第1刷






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