しょうなん (海洋観測艦) しょうなん (海洋観測艦)の概要

しょうなん (海洋観測艦)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/27 10:26 UTC 版)

しょうなん
基本情報
建造所 三井造船 玉野事業所
運用者  海上自衛隊
艦種 海洋観測艦
級名 しょうなん型海洋観測艦
前級 にちなん型海洋観測艦
次級 3,500トン型海洋観測艦
建造費 188億円
母港 横須賀
所属 海洋業務・対潜支援群第1海洋観測隊
艦歴
計画 平成19年度計画
発注 2007年
起工 2008年12月16日
進水 2009年6月29日
就役 2010年3月17日
要目
基準排水量 2,950 t
満載排水量 4,150 t
全長 103.0 m
最大幅 16.4 m
深さ 9.0 m
吃水 4.5 m
機関 統合電気推進方式
主機 ディーゼル発電機×3基
出力 4,895馬力
推進器
速力 16ノット
乗員 80名
レーダー 航海用
ソナー マルチビーム式測深儀
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設計

本艦は、2000年代末の除籍が予定されていた「ふたみ」(51AGS)の代替艦として建造された。設計面では、先行する「にちなん」(08AGS)の改型とされ、船型も同じ長船首楼型であるが、建造コストの低減が重視された結果として、あらゆる面で大幅な再検討が行われた。この結果、船体設計は商船構造とされている[3]

外見上の最大の変化としては、艦首のバウ・シーブの廃止がある。これは、水中音響機器やケーブルの敷設・保守を目的として、ふたみ型で採用されて以後、「にちなん」でも踏襲されてきたものであるが、ケーブル・エンジンやケーブル庫、艦首側クレーンなどもあわせて廃止されたことで、かなりの構造・艤装の簡略化につながった。バウ・シーブの廃止に伴って艦橋高さの要求が緩和され、上部構造物は「にちなん」よりも1層低い2層とされている。また上部構造物後部両舷には、「にちなん」と同様に大型の減揺タンクが設置されている。一方、艦尾甲板は「にちなん」と同様に観測甲板とされており、左舷中部には中折式クレーンを、艦尾にはAフレーム・クレーンを備えている[3]

主機関は「にちなん」と同様にディーゼル・エレクトリック方式、また艦内サービス用発電機とも共用化した統合電気推進とされている。一方、推進器は360度旋回可能なポッド式のアジマススラスターに変更された[1]が、これは海上自衛隊の艦船の主推進器としては初の採用であった。これとバウスラスターをあわせて、優れた艦位保持能力を備えている[4]

装備

海洋観測装置

一般海洋観測のため、自記表層水温塩分計、海底設置型超音波多層流向流速計、水温記録装置、CTD観測装置、係留式自記流向流速計などを装備している。また海中音響観測のため、音響環境測定システム、曳航式音源装置、観測用測位装置などを装備している[1]

海洋測量装置としては、艦橋下方の艦底に設置されたマルチビーム式測深儀をはじめとして、採泥器等を装備している[1]

これらの観測データおよび採取標本の処理・分析のため、03甲板レベルの艦橋後方に第1観測室を、また第1甲板後部に第2観測室を設けている。このうち、第2観測室は海中・海底から採取したサンプルを扱う、いわゆるウエット・ラボラトリーとされている[1]

搭載艇

煙突両脇の船楼甲板上に搭載艇用のダビットを備えており、左舷側に11メートル作業艇を、右舷側に複合型作業艇を搭載している[1]

艦歴

「しょうなん」は、中期防衛力整備計画に基づく平成19年度計画3,200トン型海洋観測艦5106号艦として、三井造船玉野事業所で2008年12月16日に起工され、2009年6月29日に三井造船玉野事業所艦船工場5号船台にて挙行された命名・進水式において防衛大臣政務官岸信夫により「しょうなん」と命名され[5]進水した[6]。同年12月2日、公試開始。2010年3月17日に就役し[7]海洋業務群に直轄艦として編入された。定係港は横須賀

2015年12月1日、海洋業務群が海洋業務・対潜支援群に改編され、同群隷下に新編された第1海洋観測隊に編入された。定係港は変わらず。

2016年4月23日午前3時頃、仲ノ神島南南西65kmと与那国島南南東74kmを太平洋から東シナ海に向け北に航行する中国海軍江衛Ⅱ型フリゲート「嘉興」、「連雲港」、福池型補給艦「高郵湖」を発見、監視した。その後午前7時30分頃に与那国島北北東45kmで接続水域外に出た。

歴代艦長(特記ない限り2等海佐
氏名 在任期間 出身校・期 前職 後職 備考
艤装員長
- 西嶌 聖 2009.6.29 - 2010.3.16 防大25期 しょうなん艦長
艦長
氏名 在任期間 出身校・期 前職 後職 備考
1 西嶌 聖 2010.3.17 - 2011.3.24 防大25期 しょうなん艤装員長 舞鶴地方総監部監察官
2 阿部朝雄 2011.3.25 -2012.6.10 防大25期 舞鶴地方総監部監察官
3 足立 敏 2012.6.11 - 2014.3.23 海洋業務群司令部 にちなん艦長  
4 齊家裕一 2014.3.24 - 2015.3.22 防大34期 むろと副長 海上自衛隊幹部学校勤務
5 松尾 巧 2015.3.23 - 2017.3.30 防大35期 ゆうぎり艦長 海上幕僚監部防衛部
運用支援課気象海洋班長
6 松尾直子 2017.3.31 - 2019.8.27 長崎大学
39期幹候
対潜資料隊気象科長 呉基地業務隊付
7 外園和治 2019.8.28 - 2022.12.11 防大33期 第1音響測定隊第1クルー長 横須賀基地業務隊本部補充付
8 村田慎一 2022.12.12 - 海洋業務・対潜支援群司令部

  1. ^ a b c d e f 「新型海洋観測艦「しょうなん」を見る!」『世界の艦船』第725号、海人社、2010年6月、10-13頁、NAID 40017088918 
  2. ^ 防衛省防衛政策局防衛計画課 (2006年). “平成18年度 事前の事業評価 - 海洋観測艦(3,200トン型AGS)” (PDF). 2015年4月12日閲覧。
  3. ^ a b 「注目の新型艦--そのプロフィルと能力 (特集・自衛艦隊)」『世界の艦船』第668号、海人社、2007年1月、140-145頁、NAID 40015140516 
  4. ^ 佐久間俊 (2011年). “海自初のアジマス推進艦、しょうなん” (PDF). 2015年4月12日閲覧。
  5. ^ “進水・命名式”. 岡山県議会議員 小田春人. (2009年6月29日). オリジナルの2012年9月5日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/q2Hx 
  6. ^ “平成19年度海洋観測艦の命名・進水式について”. 海上自衛隊ニュースリリース. (2009年6月23日). オリジナルの2013年6月18日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130618091531/http://www.mod.go.jp/msdf/formal/info/news/200906/062301.html 
  7. ^ 海洋観測艦「しょうなん」引き渡し』(プレスリリース)三井造船、2010年3月17日http://www.mes.co.jp/press/2010/20100317.html 


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