GL規格とは? わかりやすく解説

GL規格

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 03:40 UTC 版)

ギアオイル」の記事における「GL規格」の解説

ギアオイル米国石油協会(en:American Petroleum Institute)によって、GL規格が定められている。GL規格は6等級区分され数字増えるほど添加剤割合多く極圧性が増す。但し、各等級は必ずしも下位規格対す下位互換性有しておらず、API自身メーカー指定等級遵守する事を強く推奨している。上位規格多く含まれる硫黄などの極圧剤は青銅真鍮マンツ合金英語版)等の黄色金属(Yellow Metal)に対する強い腐食性有する為、シンクロメッシュ過度摩耗促進による劣化を防ぐ意味でも、例えばGL-4指定シンクロメッシュ手動変速機にGL-5を入れるなどといった行為は避ける事が望ましいとされている。 API GL-1負荷条件向け。無添加基油構成されており、時には抗酸化剤腐食防止剤消泡剤などの若干添加剤含まれる。GL-1はトラック農業機械スパイラルベベルギアウォームギア用いたノンシンクロメッシュトランスミッション向けに設計されている。API摩擦調整剤極圧剤は使用してならない特記している。BP社の資料 では、GL-1はレギュラータイプとして区分され使用条件としては「低荷重低速のスパーギヤー、ヘリカルギヤー、ウォームギヤー及びベベルギヤーに用いる」とされており、自動車向け用途としては「自動車潤滑条件を満足させないため全く用いられない」とされている。但し、米国ではウィリスMB英語版)やジープCJ英語版)などの軍用ジープなどの、ハイポイドギア用いず銅合金対す特別な配慮を必要とする初期四輪駆動車多数現存している事から、潤滑油メーカーは「青銅シンクロメッシュ対す安全性の証明」として、2016年現在でもこの規格明記したギアオイル販売継続している。 API GL-2 GL-1では潤滑性不足する中程度負荷条件向け。耐摩耗性添加剤含まれており、ウォームギア用いたデファレンシャル向けに設計されている。トラクターなどをはじめとする農業機械トランスミッション潤滑推奨されるBP社の資料では、GL-2はウォームタイプとして区分され使用条件としては「速度荷重のやや過酷な条件下のウォームギヤー及び、その他のギヤー(ハイポイドギヤーを除く)に用いる」とされており、自動車向け用途としては「自動車潤滑条件を満足させないため、特殊な場合除いてほとんど用いられない」とされている。 API GL-3 中程度負荷条件向け。耐摩耗性添加剤を2.7%含んでいる。ベベルギアやその他の種類ギア構成されトラックトランスミッション向けに使用されるが、ハイポイドギアには使用しないことが推奨されるBP社の資料では、GL-3はマイルドEPタイプとして区分され使用条件としては「GL-1、GL-2レベルのギヤーオイルに不適当な条件下のギヤー用いる(ハイポイドギヤーには不適当)」とされており、自動車向け用途としては「トランスミッション、ステアリングギヤー及び条件緩やかなディファレンシャルギヤー(ハイポイドを除く)に用いる」とされている。差動装置存在しない二輪車ギアオイルとして広く用いられるほか、クライスラー三菱自動車工業などの四輪車のトランスミッションオイルとして純正指定されることがあるAPIは、この規格用いられる添加剤ハイポイドギア潤滑想定しておらず、一部車軸メーカーではこの規格代わりにエンジンオイル指定する場合もあるので、製造元規格指定には必ず従うよう勧告している。 API GL-4負荷から重負荷まで様々な条件に対応。耐摩耗性添加剤4.0%含んでおり、ベベルギアやハイポイドギア構成された軸変位小さなギアボックスやアクスルユニット向けに設計されている。ヨーロッパでシンクロメッシュギアボックス使用する基本的なギアオイルとされているが、アメリカでは後述MT-1規格制定後は、同規格では潤滑適さないトランスミッショントランスアクスル使用推奨される物としており、2016年現在商業的な表記として依然利用されてはいるが、API自身新規認証を行わなくなっている。JXエネルギー発行する石油便覧においてはAPIでは2016年現在GL-5規格以外の規格試験実施できないため、GL-4はGL-5の添加剤配合量を減らしたものを処方するとされている。本田技研ゼネラルモーターズなどでは自社シンクロメッシュトランスミッション為に、GL-4規格潤滑性能を満たしつつ、硫黄極圧剤などを極力省いた専用ギアオイル開発している。 BP社の資料では、GL-4はマルチパーパスタイプとして区分され使用条件としては「ハイポイドギヤー及びきわめて過酷な条件下のギヤー用いる。高速トルク低速トルク耐える」とされており、自動車向け用途としては「ディファレンシャルギヤー、トランスミッション及びステアリングギヤーに用いる」とされている。 API GL-5 過酷な負荷条件向け。耐摩耗性添加剤6.5%含んでおり、ハイポイドギアのために設計されギアオイルである。BP社の資料では、GL-5はマルチパーパスタイプとして区分され使用条件としては「GL-4よりも過酷な条件下のハイポイドギヤー用いる。高速トルク低速トルク高速衝撃荷重耐える」とされており、自動車向け用途としては「特に過酷な条件のディファレンシャルギヤーに用いる」とされている。近年ではGL-5単独では対応できない潤滑要件成分指定為にSAE J2360がギアオイル規格新たに加わっている。SAE J2360はGL-5の潤滑要件全て満たした上でエラストマーを含む組成や、ギア抗酸化性清浄性など、GL-5には存在しなかった項目が追加されている。アメリカ軍MIL規格では、MIL-L-2105D (及び前身のMIL-L-2015C)がGL-5の潤滑要件満たしている。 API GL-6 極めて過酷な負荷条件向け(高速での摺動及び大きな衝撃荷重がかかる条件下)。耐摩耗性添加剤10.0%以上含んでおり、ハイポイドギアのために設計されギアオイルである。今日ではGL-5が十分に厳し要件満たしていると考えられているため、GL-6という区分これ以上適用されないBP社の資料では、GL-6はマルチパーパスタイプとして区分され使用条件としては「GL-5よりも過酷な条件ハイポイドギヤー用いる。高速トルク低速トルク高速衝撃荷重耐えるFORD規格ESW-M2C105A(特にオフセット大きハイポイドギヤー使用)を満足するもの」とされており、自動車向け用途としては「非常に過酷な条件のディファレンシャルギヤーに用いる」とされている。 元々この規格アメリカ・フォード社のESW-M2C105Aと呼ばれる「特にオフセット大きハイポイドギヤ」での使用耐えることを目的とした特殊規格であり、前輪駆動ではオールズモビル・トロネードがこの規格ギアオイル要求した2016年現在はGL-6で想定され極度にオフセット大きなハイポイドギア採用減少しAPIにおけるGL-6の試験装置廃止された事により、商用利用される機会減少している。BP社の資料では、GL-6について「分類試験部品入手不可能のため、この規格は現在廃止。ただし廃止以前パスした製品表示可。」としている。 API MT-1 主に米国使用されるバス大型トラック使用されるノンシンクロミッションのために1986年制定され規格MT-1規格従来のGL-4やGL-5で想定されていない劣化部品摩耗オイルシール保護といった潤滑要件設定されている。しかし、MT-1規格シンクロメッシュトランスミッショントランスアクスル潤滑想定されておらず、エンジンオイル混合して使用する事も忌避されるべきとされている。MT-1規格性能仕様は、ASTM D5760にて定義されている。 MIL-PRF-2105E(SAE J2360) 1995年制定MIL規格のみに独自に存在する規格で、前身のMIL-L-2105DおよびAPIMT-1規格潤滑要件両方とも満たした物である。MIL-L-2105Dでの化学的/物理的性質要件フィールドテストなどの条件維持され上でMT-1規格の熱耐久試験厳格なオイルシール適合性クリアするという非常に厳し性能要求課されている。MIL-PRF-2105Eは後にSAE J2360としてSAE規格にも定義され置き換えられた。 API1995年SAE技術委員会3において、GL-1、GL-2、GL-3およびGL-6の4規格について、例え市場販売継続されているとしても、規格としては「非アクティブ」なものである事を宣言したASTMテスト必要な機材入手できない事を理由に、前述の4規格認証試験が行えず、これらの規格関連した性能試験維持する計画がない事を明言している。

※この「GL規格」の解説は、「ギアオイル」の解説の一部です。
「GL規格」を含む「ギアオイル」の記事については、「ギアオイル」の概要を参照ください。

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