EB装置に関する問題事案
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/27 09:34 UTC 版)
「緊急列車停止装置」の記事における「EB装置に関する問題事案」の解説
アメリカ合衆国では本装置に類似する「Alerter」が鉄道車両に使用されているが、車両整備状態と操作ミスの影響で、2001年に無人走行による暴走事故が発生した(CSX8888号暴走事故)。 JR西日本は207系2000番台2次車・223系2000番台2次車からこの装置の採用を開始し、それ以前に製造された車両への設置も進み、2010年(平成22年)6月現在で約95 %の在籍車両に設置されている。しかし、同年3月31日から4月1日にかけての新聞報道によると、同社が、装置を取り外したままにしていたり、スイッチが切れたりしていた車両を、福知山線や片町線、山陰本線、大糸線などで運用していたことが判明している。同社は事態を重視し、取り付け・取り外しの確認を徹底させるよう運用方針を改正したり、スイッチの点検などを義務付けるなどの対策に乗り出している。また、同年7月にも同装置の電源が切れた状態の車両を湖西線や東海道本線、草津線などで運行していた事が判明した。また、山陽本線や山陰本線などで、EB装置の警報スピーカーのカバーの内側に、一部の運転士が音量を絞るために紙などを詰め込んでいたことも発覚している。また故意かどうかは不明だが2013年(平成25年)9月8日には奈良線で運転中1分以上機器を操作していないのにブザーが鳴らないことに気づいた運転士が終点に到着後確認したところ反対側の運転席のEB装置のブレーカーが切になっていたことがあった。 このように、EB装置の電源が入っていない状態でも運転自体は出来てしまうため、他の鉄道事業者でも同様な事例が見られる。2011年(平成23年)に国土交通省から業務改善命令を受けている北海道旅客鉄道(JR北海道)では、2017年(平成29年)4月27日の特急スーパー北斗4号が、札幌運転所 - 札幌駅 - 函館駅間(回送を含む運転全区間)で、EB装置のスイッチが「切」の状態であったことに運転士が気づかないまま運転されていた。 この他、意図的な取り外しなどによるものではないが、2010年(平成22年)8月26日には、長浜発姫路行新快速として運用中の223系で、運転室の計器類と繋ぐための鎖がEB装置の配線と接触してショートを起こし、EB装置の電源が切れるトラブルがあった。この列車の運転士は、気付かないまま姫路駅まで運転を続けていた。また2016年(平成28年)5月6日には、京都発倉吉行特急「スーパーはくと1号」が、京都 - 大阪間をEB装置を作動させないまま26分間に亘り走行した。この区間ではこの影響で、列車7本が最大18分に亘り遅れ、約6,000人の利用者に影響が生じる事態となった。 機器の不具合によるものでは、2013年(平成25年)8月2日には、城陽発京都行の電車において、同装置の電源が入になっていたものの、装置が機能しない状態で運行を続けていた事が判明した。同年8月17日には、岩徳線岩国発徳山行の列車において、EB装置の不具合により遅延するトラブルも発生している。2014年(平成26年)12月25日には、倉吉発京都行の「スーパーはくと6号」において、EB装置の不具合により運転を打ち切るトラブルも発生している。2021年(令和3年)3月31日には、長浜発姫路行新快速が立花 - 甲子園口間を走行中、運転士がEB装置の表示灯に違和感を感じ、電車を緊急停止させるトラブルが発生。この電車は米原からEB装置が動作不良を起こしていた可能性があることが判明した。 2014年(平成26年)10月6日には、ソフトウェアの設計ミスにより、ATC等が自動的に動作した場合も運転士が操作を行ったと認識し、EB装置のブザー鳴動までの時間が規定よりも延びる事象が確認され、東日本旅客鉄道(JR東日本)をはじめ各社の装置でも同様の不具合が見つかった。
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