電機子チョッパ制御
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電機子チョッパ制御(でんきしチョッパせいぎょ)とは、鉄道車両において、直流電動機の制御を行う方式の一つで、直流電圧を高速度でスイッチングして切り刻む(チョップする)「チョッパ回路」を主回路(主電動機の電機子回路)に接続して電圧制御を行うもので、主回路チョッパ制御といわれることもある。単にチョッパ制御、もしくはサイリスタチョッパ制御というと、通常この方式をいう場合が多い。チョッパ回路、採用車両についてはチョッパ制御の項を参照のこと。なお、電機子電流と界磁電流を独立して制御する方式を、「高周波分巻チョッパ制御」(4象限チョッパ制御)と区別する場合もある。本項ではそれについても解説する。
- ^ ちなみに、抵抗制御でも抑速ブレーキのように高速でなおかつ速度変化が安定している場合や界磁調整器を搭載している場合は、回生ブレーキは使用できる。
- ^ VAL 208などで採用されている。
- ^ ネコ・パブリッリング『レイルマガジン』2008年5月号「どっこい生きている・・・オレンジ色の電機子チョッパ制御電車201系のトップナンバー編成」pp.40 - 49。
- ^ “東洋電機技報第109号 チョッパ・VVVFの流れ(東洋電機 技術開発情報)” (2003年11月). 2017年12月21日閲覧。 (PDF)
- ^ 試験は荻窪線(当時)で実施されたが、車両は銀座線用である。
- ^ 床上艤装とは、車両の客室に制御装置などの機器を搭載するもの。床下艤装作業の省略のため、試験用としての使用は多い。
- ^ a b 三菱電機『三菱電機技報』1966年2月号「電車のチョッパ制御」pp.343 - 345。
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- ^ a b 東洋電機製造「東洋電機七十五年史」p.150。
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- ^ 直流電車用サイリスタチョッパ制御装置(富士時報1970年2月号)。
- ^ 山陽電鉄納入 270形車用チョッパ制御装置(富士時報1972年10月号)。
- ^ 富士高速度サイリスタKGP 22-13(富士時報1971年6月号)。
- ^ a b 三菱電機『三菱電機技報』1971年2月号「阪神電鉄向けチョッパ制御装置」pp.235 - 239。
- ^ 阪急2200系(また同社の2300系電車や5300系電車の一部も試験的に電機子チョッパ制御に改造された)、南海8000系電車 (初代)、近鉄3000系電車のように試作車に関しては関西私鉄の方が積極的であった。
- ^ 複巻電動機を使用の場合、電機子チョッパの呼び方は適切ではなく、主回路チョッパ制御が正しい。
- ^ 『東京地下鉄道南北線建設史』帝都高速度交通営団、2002年3月31日 。pp.881 - 883。
- ^ “「さらばセノハチ」名脇役が引退「西の箱根」で日本支えた機関車”. 朝日新聞 (朝日新聞社). (2022年3月30日). オリジナルの2022年3月30日時点におけるアーカイブ。 2022年3月30日閲覧。
- ^ 電気学会『チョッパ制御ハンドブック』pp.199 - 202。
- ^ 東京地下鉄道千代田線建設史、p.930。ただし、一部記述に誤記がある。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 帝都高速度交通営団『60年のあゆみ -営団地下鉄車両2000両突破記念-』109 - 110頁。
- ^ a b c d e f 三菱電機『三菱電機技報』1982年8月号「新方式高周波4象限チョッパシステム」 (PDF) 」pp.39 - 44。
- ^ 日立製作所『日立評論』1986年3月号「鉄道車両へのパワーエレクトロニクスの応用 (PDF) 」。p.14に本形式の主回路つなぎ図が書かれている。
- ^ 主制御装置は主チョッパ装置(電機子チョッパ)と界磁チョッパ装置の2種類のチョッパ装置で構成される。
- ^ 交友社『鉄道ファン』1983年8月号新車ガイド「営団銀座線に試作車01系登場」pp.64 - 65。
- ^ 三菱電機『三菱電機技報』1982年8月号ではGATTの記載はなく、「高周波スイッチング用新型逆導通サイリスタ」の名称が使用されている。
- ^ 車両性能は丸ノ内線500形に合わせた設計で、加速度は3.2 km/h/s、減速度は4.0 km/h/sである。(三菱電機『三菱電機技報』1982年8月号)。
- ^ a b c 交友社「鉄道ファン」1985年5月号「営団地下鉄新車の話題」pp.76 - 81。
- ^ a b 日本地下鉄協会『SUBWAY』1983年7月号レポート「営団地下鉄銀座線用01系試作車について」pp.28 - 37。
- ^ a b c d 鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」1988年9月号「営団地下鉄日比谷線 03系」106-107頁
- ^ 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』1987年7月号LOCAL NEWS「営団東西線でチョッパ試験を実施」p.112。
- ^ a b 交友社「鉄道ファン」1988年9月号新車ガイド「日比谷線用03系の概要」63-64頁
- ^ 日本鉄道サイバネティクス協議会「鉄道サイバネ・シンポジウム論文集」第25回(1988年)「営団日比谷線向1500V四象限チョッパ制御装置」論文番号309。
- ^ 日立製作所『日立評論』1988年7月号「最近の直流電車制御システム (PDF) 」
- ^ 従来の分巻チョッパ制御を採用する01系・02系の粘着性能は18%台で、起動加速度は3.0 km/h/s。
- ^ 05系はVVVFインバータ制御の試作車として,9000系は路線条件の都合から特殊な事例。
- ^ 日本鉄道サイバネティクス協議会「鉄道サイバネ・シンポジウム論文集」第26回(1990年2月)「シーサイドライン横浜向 4象限チョッパ制御装置」論文番号602。
- ^ 日本鉄道車輌工業会『車両技術』第192号(1990年10月)「桃花台新交通100系車両」pp.103 - 111。
- ^ 日本鉄道運転協会『運転協会誌』1994年9月号ニュース「広島新交通システムアストラムラインの概要」pp.29 - 30。
- ^ 日立製作所『日立評論』 1973年2月号「カナダ・トロント地下鉄向け回生ブレーキ付チョッパ制御装置」。
- ^ a b c d e f g h 鉄道図書刊行会『鉄道ピクトリアル』1999年3月号特集「電機子チョッパ車の30年」内「チョッパ制御の輸出車両とその歴史」pp.42 - 47。
- ^ a b c 若林良明「鉄道車両駆動システムの技術開発と海外展開の変遷」『電気学会誌』第137巻第3号、電気学会、2017年、145-148頁、doi:10.1541/ieejjournal.137.145、ISSN 13405551、CRID 1390001204994517760。
- ^ 三菱電機『三菱電機技報』1982年4月号「スペイン国鉄納め高出力サイリスタチョッパ電気機関車」 (PDF) 」pp.38 - 41。
- ^ ロックダウン下でも貨物輸送を止めるな -東芝グループの南アフリカでの貢献(東芝クリップ)。
- ^ 三菱電機『三菱電機技報』1988年6月号「オーストラリア ニューサウスウェルズ州鉄道納め 4象限チョッパ制御電車用電機品」 (PDF) 」pp.53 - 58。
電機子チョッパ制御
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 17:01 UTC 版)
サイリスタを直流電化に応用したもので、主回路を高速にOn-Offすることで制御する。回生時は主電動機に逆電圧をかけて電源電圧より高い電圧を得る。高速時から回生ブレーキを立ち上げると逆に架線電圧を大幅に上回ってしまうため、抵抗器を挿入して規定の電圧以内に抑える工夫がなされる場合がある。打ち切り速度は数km/h程度。
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電機子チョッパ制御
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/08 21:29 UTC 版)
「直巻整流子電動機」の記事における「電機子チョッパ制御」の解説
電機子チョッパ制御は、大電力半導体(主にサイリスタ)でチョッパ回路を構成して、電動機の回転数に見合った電圧を供給して起動する方式。チョッパで断の瞬間は、通電時にコイル(平滑リアクトル)に蓄積したエネルギーを電動機に供給するので起動抵抗損が発生しない。 しかしながら、抵抗損は低速度域しか発生せず、電源が供給する走行エネルギーは速度の2乗に比例するから全体の走行電力消費に対する抵抗損の割合は意外に小さく、高速度領域での回生制動を追求したほうが安価でメリットが大きいという判断から日本の私鉄では複巻電動機を使って起動は抵抗制御、高速度域からの制動で分巻巻線電流を制御して回生制動する界磁チョッパ制御が主流になった。また国鉄においても201系電車の製造においても高価な電機子チョッパ装置がネックとなり抵抗制御を駆逐するには至らず、直巻電動機の界磁電流を逆にして回生制動を実現できる界磁添加励磁制御にシフトした。 地下鉄においては連続制御により力行時のスリップを防ぎつつトンネル内の温度上昇を避ける目的で電機子チョッパ制御が採用される例が少なくない。帝都高速度交通営団と大阪市交通局はそれぞれ6000系電車、大阪市交通局10系電車を開発し、営団はその後も05系5次車まで電機子チョッパ制御車両を製作した。
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電機子チョッパ制御
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「電気車の速度制御」の記事における「電機子チョッパ制御」の解説
電機子チョッパ制御の力行時回路。 同回生ブレーキ時。回路を昇圧チョッパに組み替える。 電機子チョッパ制御は主回路にチョッパ制御を組み入れた構造で、電機子電流の電圧制御をチョッパで行う方式である。旧来抵抗制御や直並列組合せ制御により行っていた、電動機への印加電圧の制御を降圧チョッパに置き換え、連続的に電圧を制御するものである。抵抗を用いないことから損失が小さく、電圧を連続的に制御できるため空転を起こしにくく、粘着性能に優れる。 また、電機子チョッパ制御では回生ブレーキを有効に利用できる利点を有している。回生ブレーキは電動機をブレーキ時に発電機として利用し、得られた電力を電車線(架線等)に返還するブレーキ方式であり、回生電圧は架線電圧を上回る必要がある。直巻整流子電動機の起電力は回転速度に比例するため、回転速度が低いときは十分な電圧が得られず、旧来の抵抗制御等による方法では広い速度域で回生ブレーキを利用することが困難であった。これに対し電機子チョッパ制御では、力行時の降圧チョッパ回路を、低い電圧を高くする昇圧チョッパに組み替えることが可能であり、低速時の起電力が低い場合でも電圧を上げて架線に戻すことが可能となった。 一方で、電機子チョッパは、パワーエレクトロニクスが発展途上にあった1960年代から1970年代に実用化されたため、 電機子を流れる大きな電流を制御することから、装置が大がかりで製造費用が高い。 位相制御と同様、高調波を生じ誘導障害を引き起こすことがある。 などの問題も有していた。 また、昇圧チョッパの利用によって低速域まで回生ブレーキが使用できる反面、高速域では電動機の起電力が架線の電圧を大きく超え、回生ブレーキの使用が難しくなる問題も抱えていた。このため、電機子チョッパ制御では一般に直並列組合せ制御を行わないが、高すぎる回生電圧を制御するためにブレーキ時に直並列の組み替えを行う構造を搭載した車両もある。 このように、本方式は粘着性能に優れており、しかも電流の抵抗損失を生じない一方で、高速域の回生ブレーキに難のある方式であった。このため、高速運転は行わないが、高い加速度(高い粘着性能)を必要とし、トンネル内の温度上昇を抑制する必要のあった地下鉄車両にしばしば用いられた。
※この「電機子チョッパ制御」の解説は、「電気車の速度制御」の解説の一部です。
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