籾米担保融資制度の危機
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「2013年タイ反政府デモ」の記事における「籾米担保融資制度の危機」の解説
タイでは2013-14年の政治危機と並行して、籾米担保融資制度(コメの質入れ制度)が暫定政府にとって重要な問題となった。2013年12月9日の議会解散後、インラック内閣は籾米担保融資制度の更新予算承認を怠っていた。2014年1月31日時点で、暫定政府は制度の一環として国の稲作農家に帰されるべき支払いをデフォルトしたのみならず、暫定財務相のキティラット・ナ・ラノンは状況解決に必要な1300億バーツを扱う権利が凍結されている。「職務代行」能力の低下で、財務省が次なる政府への(返済)義務を生じさせる資金借り入れを憲法で禁じられたのである。 2013年10月以降、タイ国内の稲作農家に帰する未払い金の総額は1300億バーツになっており、2014年1月31日時点で200人以上の農家が政府に対するクラスアクションの代表としてタイ弁護士会の支援を求めている。 タイの稲作農家はタイ社会のヒエラルキーで最も低い階級ではあるものの、彼らは伝統的にタイ貢献党の政治基盤の鍵となる構成要素でもある。 2014年1月31日時点で、主に北部・中央部地域の稲作農家は高速道路を封鎖して政府に抗議し、反政府抗議に加わるためバンコクに向かう可能性もあると述べた。多くの農民が未払いの結果として破産し、この制度下で少なくとも3人の農民が自殺した。 商務省 (タイ)は2014年2月4日、インラックによって管理運用されているコメの購入施策に反汚職委員会の調査が継続していることを理由に、中国が100万トン超のコメを購入する契約を取り止めたと発表した。抗議中の農民は、タイの主要道路全てを遮断することで2014年2月6日に自分達の抗議を強化すると発表した。 抗議している稲作農家(合計140万人の農民が影響を受けている)は、銀行なら後で政府から支払いを取り戻すことが可能だと確信して、農業・農業協同組合銀行(BAAC)に補償を求めている。しかし、BAACは資金を政府に依存しているとの主張である。 さらに、中央地域の農民の多くがバンコクに向かい、2月6日に商務省の前で支払いを要求する可能性もあった。 2月6日にステープは、稲作農家の苦境を解決できうる策の1つとして政府保有の質草800万トンの在庫米を売ることを、シーロム通りにいる支持者に発表した。しかし、PDRCが組織する抗議者達はコメ回収のため警備の掛かった倉庫に強制的に入る必要があるとした。PDRCの中心的指導者の1人は、ステープが2月7日に公的な行脚を実施して稲作農家への寄付を集めてはどうかと述べた。2月7日、財務副次官によると、タイの銀行が関与する機密計画で稲作農家には1300億バーツの融資が支払われることが確実だとした。副次官は、必要な資金を得るために幾つかの選択肢が存在すると述べた。 2月11日、インラックは政府が国の稲作農家にすべての未払いの債務を支払うための財政的手段を有しており、規定された価格でその支払いが履行されることは揺るがない、とメディアへの声明で述べた。しかし、2014年2月12日刊行のバンコック・ポスト報道は、国家汚職防止委員会(NACC)がこのコメ制度に関する訴訟を立証する証拠の照合を終えた後、インラックに対して正式な告訴を行う予定であると伝えた。NACCの副委員長は2月11日、NACCが暫定政府首相に対して告訴を行うつもりだと語った。 NACC委員側が十分な証拠を蓄積している場合、国家コメ政策委員会の委員長でもあるインラックは職務放棄の件で刑法第157条に違反していることになり、もし起訴されれば委員会には彼女の訴訟に出席することが許可され、そこでインラックの起訴が正当なものであったかを委員会が判断することになる筈だ、と副委員長は説明した。この訴訟は2014年1月中旬に遡り、訴状が提出された場合にインラックはあらゆる公職から退く必要に迫られる。一方、暫定商務大臣のニワットタムロン・ブンソンパイサンは、2月11日に開催された閣僚会合がコメ制度下で農家に支払うための文書化されていない中央予算7億1200万バーツを承認し、同予算は2月11-14日の間に承認のためECに送られると語った。 2月12日、タイ米協会会長のプラシット・ボーンチョウエイは、未払い金の事で約50,000人の稲作農家が暫定政府を追放すると警告した。会長はPDRCの抗議段階の1つについて話し、西部、北部北部、中央上部地域の他の農民指導者と抗議行動の拡大に関して話し合ったことを確認した。2月13日、別の農家団体がタイの弁護士協会の弁護士に付き添われ詐欺的な行為について暫定政府に訴訟を起こした。2月14日、農民指導者は、農民の要求が満たされない場合、結果は「予測不可能で制御不可能」になるとインラックに警告した。 稲作農家達はトラックを使ってチェーンワッタナ地区にある有刺鉄線のバリケードを突破した。暫定首相は農家達との面会を拒否したが、政府当局者は2013年12月に議会が解散したことを支払い遅延の原因と特定した。暫定財務大臣のキティラット・ナ・ラノンは、既に20億バーツが支払われており、加えて3.39億バーツが農家達に帰するものだとメディアに伝えた。彼はまた、政府が国営の農業銀行を通じて残りの債務を支払う予定であり「日々の支払い処理を行う(銀行の)能力を考慮すると、全ての支払いは6-8週間以内に行われると予想される」と語った。 2014年2月18日、インラックは稲作農家の一揆に対処すべく演説を行い、問題の解決方法を詳細に語った。またインラックは反政府抗議運動がこの制度の継続を成功させる障害となっていると説明し、2013-2014年政治危機以前の最初の2年間はこの制度が機能していたと彼女は主張した。インラックは、この障害とは無関係に「農家達のために粘り強く戦う」つもりだと断言した。しかし暫定首相はタイの各銀行に協力を要請し、それによって稲作農家への支払いのための農業・農業協同組合銀行(BAAC)への融資が行われることになった。 インラックはさらに、農家達が耐えている苦境のためBAACが債務返済期間を6か月に延長すること、加えて次の作物シーズン向けの融資上限を引き上げると述べた。この演説はタイのテレビプールによって全国的に放送された。 2月18日、国家汚職防止委員会は、政府のコメ補助金制度を不適切に処理したことでインラックを告訴したとの声明を出した。この制度では政府が2年間ずっと国際価格よりも最大50%高い価格で農作物を購入していた、と同委員会は主張した。2014年2月27日に暫定首相は同委員会の提訴に反論すべく召喚状を受理し、彼女の弾劾および公務からの解職が起こりうる結果の一つとなった。 選挙管理委員は3月4日、暫定政府が国の中央基金から200億バーツを籾米担保融資制度に参加した稲作農家に支払うことを承認した、と公表した。このお金は政府への融資として分配されるもので、その資金は2014年5月31日までにコメ販売による歳入を使って払い戻される予定である。 2014年3月22日、僧侶のルアン・プー・ブッダ・イサラ師率いる農民団体は政府の宝くじ事務局(GLO)に米をぶち撒け、その日事務局を閉鎖させた。この僧侶は、GLOが米100トンを農民から購入するのに宝くじ販売資金を使うよう要求し、事務局が米1トンあたり最低でも12,000バーツを農民たちに支払う必要があると主張した。
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