第二次大戦時における慰安婦に関する論文
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「J・マーク・ラムザイヤー」の記事における「第二次大戦時における慰安婦に関する論文」の解説
2020年12月、ラムザイヤーは学術誌「インターナショナル・レビュー・オブ・ロー・アンド・エコノミクス」(International Review of Law and Economics)のオンライン版に「太平洋戦争における性契約」("Contracting for sex in the Pacific War")と題する論文を発表した。当該論文は、慰安婦は自発的に売春婦としての契約をした労働者であると指摘する内容であったため、韓国では猛批判が沸き起こった。 論文では、「日本軍は、東アジアに進軍したころ、現地で性病が蔓延することを避けるため、各地に半公式の売春宿を民間業者が設置することを促した」「売春婦は業者によって主に日本と朝鮮から集められ、軍と提携する売春施設を『慰安所』、売春婦を『慰安婦』と呼ぶようになった」などと指摘しており、慰安婦の強制性を否定する内容であった。 当該論文の撤回を求めるオンライン署名には5日間で2,464人の学者が賛同した。賛同者の中にはノーベル経済学賞を受賞したエリック・マスキンもいた。 韓国の中央日報によるとハーバード大学東アジア言語文化学科教授のカーター・エッカート(朝鮮史専攻)と歴史学科教授のアンドルー・ゴードン(日本近現代史・労働史専攻)は、論文の根拠となる韓国人慰安婦の募集契約書をラムザイヤーが直接探したという証拠はなく、「自分で見たことのないのにどうして強い表現まで使って論文を書いたのか理解不能である。『証拠未確認』『主張を裏付ける第三者の証言不足』『選択的文書の活用』などで、学問的真実性を深刻に違反している」と批判した。韓国のハンギョレ新聞はこの点について、ラムザイヤーは論文の根拠となる契約書を見つけられなかったことを同僚に対して認めたと報じた。 契約に関する論文は1991年、及び2019年の長論をベースとした要約の形にまとめられている。 出版元のIRLEは電子版は2020年に既に登録されている。印刷版はラムザイヤー教授の論文と反論の論文、教授のその反論の反論を併記する形となるとしている。 韓国メディアのハンギョレは社説において、ラムザイヤーの論文は慰安婦や戦時性暴力(英語版)に反対する人々への嘲笑であり、歴史の歪曲であるとし、ラムザイヤーの肩書であるハーバード大学ロースクールの「三菱日本法学教授」が三菱グループの寄付によって作られたことに触れ、ラムザイヤーは戦犯企業の支援を受けて、慰安婦と強制動員の歴史に関し、日本の右翼の主張に沿った内容を発表してきたと非難した。 経済学者は5つの部分に指摘する声明を出した。 裏付ける資料がないのに慰安婦の状況を考慮せず雇用契約としたこと、論文には売春婦の相場を記載しているが戦地における収入であるとは言えない。 売春婦として売られた少女の話があるが責任能力の観点から問題がある。 慰安婦が自由に仕事場から移動でき給与を貰っていたとする仮定について。 軍隊、政府の関与を認めていないこと。 経済学、ゲーム理論、法と経済学を使用したこと。 北朝鮮メディア朝鮮の今日は3月2日、社会科学院歴史研究所室長との対談記事を掲載し、「過去の犯罪を隠蔽しようとする日本の反動勢力の恥知らずで不道徳な妄動を支持、加勢しただけでなく、日本軍の性的奴隷被害者を自発的な売春婦と呼んで侮辱した」と批判した。 産経新聞は、高名な会社法学者かつ日本研究者であるラムザイヤーが、査読を経た学術論文で「慰安婦=性奴隷」説を否定していることを肯定的に評価した。 麗澤大学准教授でモラロジー研究所客員研究員のジェイソン・マイケル・モーガンは、ラムザイヤーの論文を攻撃する人々の多くは、慰安婦を絶対的な犠牲者と見なす過激なフェミニストであり、人種差別や研究の問題の専門家でもあり、韓国の資金源から資金提供を受けている研究所であると主張した。 韓国の民間インターネット団体VANKは、関連するアメリカの雑誌に論文の撤回を要請した。 李栄薫ら11人の韓国の学者と弁護士のグループは2月9日、ラムザイヤーを攻撃しているグループが、学術的な議論を無視している点を批判した。 慰安婦問題の専門家である西岡力を含む委員6名が、日本の研究者の観点からラムザイヤーの論文への支持を表明した。 経済学者の竹内幹は法と経済学の学術書に掲載されたのにも関わらず、ラムザイヤーが使用したゲーム理論に経済学に必要な数式が使用されていない、と批判した。 元・時事通信記者でジャーナリストの室谷克実は、内容のほとんどは日本の研究者が既に掘り起こしたもので、新たな視点は見られなかったとしつつ、韓国側から論文の撤回を要求する動きが起こっているのは、内容(「慰安婦=性奴隷」説の否定)が韓国にとって不都合だからであろうと主張した。
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