福祉人材の供給
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 03:23 UTC 版)
「医療崩壊」も参照 介護保険法制定以降、高齢者福祉では介護支援専門員や介護福祉士、2級以上のホームヘルパーのニーズが高まっているが、労働条件が非常に劣悪(いわゆる3K職場の代表格でもある)であり、低賃金が故に介護人材の離職率が極めて高く、低賃金で雇えると考えられた発展途上国の外国人労働者の受け入れが始まった(しかし、実際に経済連携協定(EPA)に基づく人材受け入れを開始してみると、外国人への日本語教育の負担が重いことが敬遠され、福祉分野での外国人の雇用は減少している。 日本では超高齢化を反映し高齢者福祉施設は施設数が多いため、求人数も多いが、児童・障害施設は保育所を除くと施設数が少ないため求人数は少ない。特に高齢者福祉分野は民間企業が参入しやすいため、介護職や看護職の労働者派遣業が確立されたが、児童・障害分野は行政機関か社会福祉法人主体のものが多い。また、児童養護施設や児童相談所などでは配置人員の不足が指摘されている。また、介護福祉士は専門職であるにもかかわらず、他業種に比べ転職率が高いが、以下のような理由が考えられるとされる。 入所型施設では変則勤務や夜勤、宿直が多い。また年末年始やゴールデンウィーク、お盆休みでも施設に人材は必要であるため、休暇も交替でとる。下記のような様々な問題がある割に待遇が悪い。 雇用面では、常勤雇用が少なく、パート、アルバイトが多いことが挙げられる。これは、労働集約型であり補助金や介護報酬などに依存しているという特性上、人件費抑制やサービスを向上すべく最低基準以上の人員を雇うために非常勤の比率を高めざるを得ないからである。また、女性が多い職場のため出産、育児休業などによる代替雇用が多く、正規雇用に繋がらない場合がある。 利用者との関係によるストレスで精神的に疲労してしまう。例えば高齢者施設では認知症、知的障害者施設では自閉症、精神障害者施設では精神障害を持つ利用者がいるが、それらの障害は、特有の行動や認知の傾向があるため、利用者と日々信頼関係を作っていくのに時間がかかり、利用者によっては暴力行為や不調、自傷・他害、持病の発作など、突発的なことに対応していくことが要求される。 個々の職員による支援方針の違いが、職場での意見の相違となり緊張感をもたらす。また、職員の大半が福祉職という同質的集団になるため、お互いに馴れ合いになりがちな傾向もあり、人権侵害と思われる行為を指摘しにくく、閉鎖的な緊張感も存在する為と考えられる。また長く勤続する職員ほど利用者のことをよく知っているために、従来のやり方が正しいという場の空気が生まれ、新人などが問題意識を持っていても指摘しにくい土壌もある。これらの原因で、誤った支援方針に異議を唱えることが難しいとの指摘もある。 利用者だけでなく、その家族や病院、行政機関、学校など各種関係機関との連絡調整に忙殺される。特に入所施設では、利用者と家族との関係、利用者の金銭管理に時間を割くことが多い。 居宅訪問介護の場合、ヘルパーの移動時間が労働時間として計算される事はほとんどないため、実質的な拘束時間が実労働時間よりも遥かに長いといった事態が起こりがちな為。 日本においては1990年代に入ってから福祉や介護へのニーズが高まり、福祉系大学の新規開学や学部の新設も始まった。福祉の資格取得者が増え社会的ニーズが高まっているが、雇用や労働条件は決して高いものとは言えない。また、有資格者が増える一方ですべての有資格者の力量が十分といえず、資格取得養成課程の見直しが検討されることになった。
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