現状と限界
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 08:19 UTC 版)
近年、AIのディープラーニング技術により、急速に成長している分野であり、特定の用途に限った翻訳においては人間の手で補助することで、ある程度の解決がみられるようになっている。今後人々の日常生活における異言間のコミュニケーションに大きな影響を与えることが期待されている。 しかし、研究が進むにつれ、言語の複雑さに由来する機械翻訳の限界も指摘されており、人工知能、自然言語処理、ニューラル機械翻訳などの立場では「克服すべき課題は多く,完璧な機械翻訳を期待するのは現実的ではない」と認識されている(主に「機械翻訳の限界と人間による翻訳の可能性」瀬上和典より)。 詳細は「自然言語処理#処理内容とその限界」を参照 Yehoshua Bar Hillelは、1975年時点で、現実的に研究すべき機械翻訳として、以下3点を述べており、この視点が現在でも受け継がれている。機械の支援を伴う人間翻訳 人間の支援を伴う機械翻訳 低品質の機械翻訳 奥村学(自然言語処理)は「翻訳は人間でも言外の意味の理解や知識を要求される非常に負荷の高いタスクであり、『全自動高品質機械翻訳』の完成を目指してはいけない」と2014年に述べている。 Thierry Poibeau (LATTICE言語学研究所所長)は、「機械翻訳が、人間の翻訳を取って代わることはない。そのようなことは目標でも望ましい結果でもない」と2017年に述べた。 「人工知能やロボット等による代替可能性が高い100種の職業」(野村総合研究所)では、「翻訳通訳」は圏外である。 「Frey and Osborne」(2013年)による機械学習の研究では、「認知性・創造性・社会性」の観点から、機械化されるリスクに対し、様々な職種に指標を与えており、翻訳通訳は0.38の指標を与えられている。「1」は現時点で機械化が可能。 「0.7 - 0.99」は将来(10年 - 20年以内)機械化される可能性が高い。 0.7未満は中、0.3未満は低レベルのリスク。数字が小さいほどリスクが低い。 今後も「ディープラーニング」を活用した機械翻訳技術の向上により、記述のルールが定まった文書(特許・法律文書、論文など)であれば、書く側が「あらかじめ機械翻訳に配慮」することで、翻訳の精度は相当に高くなっていくことが期待できる。しかし「人間の多彩な情報を用いた複雑なコミュニケーションには程遠く、AIがそのレベルに到達し、人間の翻訳・通訳の代わりするのは遥か先」というのが研究者の共通の見解である。特に以下の3点による。AIはディープラーニングにより「言葉の意味そのもの」を学習するわけではない ディープラーニングには「誤った学習結果」が含まれる AIは人間の非言語・ニュアンス・感情などを理解できない 特に音声を用いたコミュニケーションにおいて決定的である。
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