現状の保護状態と改善の提言
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/06 06:05 UTC 版)
「浄ノ池特有魚類生息地」の記事における「現状の保護状態と改善の提言」の解説
浄の池の現状を調査した黒田は、貴重な魚類の生息する珍しい池であることを認めつつも、その保護・保全状態については、個人所有地であることから懸念される複数の問題点を指摘している。 まず第一に、池の魚の捕獲を禁じることはもちろん、魚類に対して杖などを池中に入れないよう注意書きの立札を設置することを求めた。また伊東でも屈指の名所であり各種の案内記(今日で言うガイドブック)にも記載され、かつ見学代は無料でもあることから多数の観覧者がおり、池畔のすぐ側には茶店のみならず、遊戯用の弓場まで設けられているため、敷地が極めて狭くなってしまっていることに苦言を呈している。実際に黒田は5日間にわたる浄の池の観察中、常に複数名の観覧者がいたと報告している。 さらに、訪れた観覧者が池に餌を投げ込むと、池中のボラが多数集まり、一見すると餌に集まる池の鯉のような異様な状況になり、肝心の5種の異魚の観察の妨げになっているとも苦言を呈している。一方で5種の異魚の写真や写生図を元にした絵葉書を観覧者の求めに応じて茶店が販売していることは肯定的に評価している。 黒田は報告書の末尾で11項目におよぶ保全に対する意見を述べている。以下にその要約を示す。今日の天然記念物に対する概念とは大きく異なるものもあり、発足当時の天然記念物に対する考え方が垣間見られる。 「浄の池」ノ魚類保存ニ關スル意見より一部改変抜粋。 池の主要5種の着色写生図に和名、方言名、学名および説明を付け掲出すること。 ボラを減ずること。現在、池の中のボラは実に60尾余りに達し、主要な他の魚類を観察する大きな妨げになっているため、特に大きなものを捕獲し除く必要がある。ただし全部を除く必要はない。 鯉も大型のものが現在3尾移入されているが、これ以上は増やさないこと。理由2に同じ。 5種の主要魚類中減少したものは他より補充すること。現状では少数である、オオウナギ、オキフエダイ、シマイサギなどを中心に大型のものを選定。ただしオキフエダイは他の魚を攻撃するため10尾以内にすることが望ましい。 食物を充分に与えること。現状では食物の与え方が不充分のようである。但し食量を定めて与え、池内に食物が残存し水質が悪化しないよう注意が必要である。 唐人川に連なる小穴の入口に目の細い金網を張り、池中の幼魚が流出しないようにすること。現状では恐らく小魚は出入りが自由であると思われる。 池の周囲に高さ3尺位の金網を張り巡らすこと。洪水の場合魚類の流出を防ぎ、また観覧者の杖等が入ることを防止するため。但し現状の池内に突出している桟橋のようなものは、存在する方が観覧に便利である。 池内を時々清掃すること。但し魚類を驚かさない程度に、池内に沈殿する樹木の枝や葉など観覧上妨げとなるものを除くことを目的とする。小さな叉手網などで掬い取るのがよい。 「浄の池」の表入口および茶店その他を改良するを要す。現状、同所の入口は余りにも粗末であり障子立に「浄の池」と書いてあるのみである。入口には小門を立て一層明白にし、可能であるなら池の周囲を観覧者が自由に周回できるよう改良することを希望する。 千葉殉事氏所有池の2池は共に第2候補地とする。但しこの池も天然記念物に指定するとすれば付近および池の周囲を改良するを要す。 千葉殉事氏所有池の小池(20坪くらいの方)に産する前記「はいれん」および「まくち(黒色のボラ)」は「浄の池」に生息していないため、千葉氏の池より代表的な数尾を捕獲し「浄の池」に放養すれば1ヶ所に主要な魚類を集めることになり、研究者並びに観覧者にとって便利であり、かつこれら魚類の保存を完全にすることになるものと信じる。 このように述べ、今後の浄の池および関連する千葉氏所有の池の保全対策案を複数提示し、調査報告書を締めくくっている。
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