新国立競技場の建設
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「第3次安倍内閣」の記事における「新国立競技場の建設」の解説
2015年6月29日、文部科学大臣の下村博文から東京五輪のメイン会場となる新国立競技場について総工費2520億円で2019年5月末の完成を目指す計画見直し案が発表された(ただし、五輪後に先送りされる開閉式屋根の設置費用は未確定でこれには含まれていない)。五輪決定の約1年前である2012年7月、建築家の安藤忠雄をトップに据えた審査委員会が設けられ公募がスタートし、2012年11月にデザインは決定された。当初は1625億円の予定だったが、消費税増税の影響や資材・人件費の高騰などで金額が拡大した。2本の巨大なアーチ構造の部分が765億円とされた。アーチを含む屋根工区の建設に必要な鉄骨は約2万トン、アーチを埋設するために発生する残土は大型トラック12万~14万台分とされる。東京五輪・パラリンピック組織委員会長の森喜朗は、2013年10月25日のインタビューで「正直、あのデザインは好きではない」と設計者のザハ・ハディッドを批判しているが、サイゾーが運営するニュースサイト「LITERA」は2012年のザハの設計案の選定について当時権限をもっていた民主党政権(2012年の文部科学大臣は中川正春、平野博文、田中眞紀子の3名)はほとんど関係がなく、事実上の決定者は森だと主張した。 日本経済新聞によると、2014年12月に「相当やばいことになりそうだ」との連絡がJSCから文部科学省に入り、施工予定の竹中工務店や大成建設が2014年5月に発表した基本計画について「できるわけがない」と通告してきたことが判明。JSCは計画見直しを検討したが、その際に障害になったのがラグビーW杯とラグビーW杯招致に尽力した森で、「(キールアーチをやめれば五輪には間に合うとの指摘についても)森会長の思いを知らないから言えること。ラグビーを飛ばして、五輪のための競技場を造るという選択肢はない」といった観点から調整が進み、工期短縮と工費削減のための開閉式屋根の先送りに見直しがとどまったという。毎日新聞の「寝ても覚めても」は、ラグビー界がザハ・ハディドのデザインに固執したわけではなく、選手に巨額な建設費の責任はないと指摘した。2015年7月14日、森は産経新聞のインタビューに応じ、国立競技場の建て替えについて「(ラグビーW杯という)せっかくビッグイベントがくるんだから国立競技場の改築のいい機会だなとなった。」と経緯を説明し、ラグビーW杯には観客席に屋根が必要であり、サッカーW杯招致には8万人以上収容できる必要があり、陸上競技には可動式スタンドが必要だとなって規模が拡大していったとした。 新国立競技場は、日本サッカー協会が2023年の女子W杯誘致などを目指す上で収容人数などの基準を満たす必要があるため支持をしている。一方、長きに渡って日本サッカー協会のスポンサーである朝日新聞は、社説で新国立競技場に反対の論陣を張った。7月8日、日本サッカー協会名誉会長の小倉純二は、新国立競技場の設計について将来的に8万人の常設席とすることをJSCに求めた。海外ではハメス・ロドリゲスが新国立について「とても素晴らしいデザインで、とても大きい。違う世界のスタジアムみたいだ」と賞賛した。サッカー以外では、為末大が「この案を押し通せばスポーツ界が日本に負担をかけたと社会のお荷物にされる」と反対を表明。有森裕子は、都内のシンポジウムで、十数秒間絶句し涙を流した後に「オリンピックが、皆さんの負の要素のきっかけに思われるようなことは本望ではない。」と語った。 7月11日、問題が浮上して以来はじめて安藤忠雄がウェークアップ!ぷらすにおいてコメントを出し、計画の2520億円という金額に関して「何でこんなに増えてるのか、分からへんねん!」と語った。新国立は形状が競技用自転車のヘルメットに似ており、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}Twitter上では「#新国立競技場クソコラグランプリ」のハッシュタグが話題となった。[要出典]7月13日、民主党幹事長の枝野幸男は、「コンペは民主党政権のときだが、それに基づいて1000億円あまりの計画にゴーサインを出したのは安倍晋三内閣になってからだ」と安倍政権の対応を批判した。7月14日、JSC側が1週間前の有識者会議で示した総工費2520億円の中に72億円の整備費が含まれていなかったことが判明した(60億円で3万5千人収容のスタジアムが建設できるとされる)。同日、国会では民主党代表代行の蓮舫が「ラグビーワールドカップに間に合わせるのを諦めるべきだ」と文部科学相の下村を追及。自民党総務会からも看過できないとの声があがり始めた。国際パラリンピック委員会のクレーブン会長は競技場について「最も重要なのは選手と観客が利用しやすいこと」だとし、「(建設計画を)決めるのは日本」だと語った。 7月15日、政府は新国立の建設計画を変更する方針を固めた。谷垣禎一、稲田朋美、二階俊博ら党5役が文部科学省幹部を呼び説明を要求。総務会長の二階は「国民の尊い税金だ。看過するわけにはいかない」と語った。この問題のキーマンといわれている森は財源問題について1日に「それは僕たちの仕事じゃないんですよ。日本国政府のことじゃないですか」と述べ関知しないとの立場を表明しているが、首相の安倍が森の説得にあたることになった。7月16日、建築家の安藤忠雄が会見を行い、大幅な増額について「承知していない。さらなる説明が求められている」とし「コストについては、ザハ・ハディドと日本の設計チームによる次の設計段階で調整が可能なもの」と語った。7月17日、首相の安倍は新国立の建設計画について「白紙に戻し、ゼロベースで見直す」と表明した。また、ラグビーW杯については「残念ながら、間に合わせることはできず会場として使うことはできない」と述べ、新国立の使用を断念した。日本オリンピック委員会 (JOC)会長の竹田恆和は「公約に沿った競技場が実現できることが理想だが、IOCのオリンピック改革に照らせば、費用がいくらかかってもいいわけではない。」と述べ、見直し表明を支持した。 7月18日、民主党代表の岡田克也は文部科学大臣である下村の辞任を要求した。ただ、「ラグビー・ワールドカップ及び東京オリンピック招致を視野に入れた競技場」の改築を決定したのは民主党政権時代で、2012年3月6日より国立競技場将来構想有識者会議も行っており、2012年7月から開催されたデザインコンペで示された積算根拠が不明な1300億円(2012年当時で約14.8億ドル)という数字が立候補ファイルに記載された。第2回と第3回の有識者会議あたりと並行して国立競技場の基本計画や都市計画が決まるが、民主党時代の3回分だけが未公開で会議資料もないといった経緯がある。zakzakは、民主党側にとって「ブーメラン」のように跳ね返ってくる問題だと指摘した。建設エコノミストの森山高至は、2012年7月にデザインコンペの審査委員長に就任した安藤忠雄と東京五輪組織委員会長の森が計画変更をOKしなかった責任が大きいと指摘した。 8月4日、参議院文教科学委員会で文部科学大臣の下村博文は計画の白紙撤回表明の約1か月前に「他の案で見直すべきだ」と首相に進言し、首相から「引き続き研究してほしい」と指示を受けたと述べた。 9月19日の2015年ラグビーワールドカップの初戦で日本が南アフリカから歴史的勝利をあげたことを受けて、東京都知事の舛添要一は「新国立競技場は間に合わないが、味の素スタジアムがある。(2019年の)日本大会では、東京でいい試合をしてほしい」と語り、決勝に合わせて渡英する意向を示した。
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