全米公開
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「宇宙からのメッセージ」の記事における「全米公開」の解説
『スター・ウォーズ』を配給する20世紀フォックスは「版権侵害だ」と息巻いたといわれる。『宇宙からのメッセージ』の配給を決めたユナイテッド・アーティスツ(以下、UA)は、フォックスが完全に納得するまで公開を控えた。この問題がなければUAはもっと早く公開するつもりでいた。アメリカ合衆国では1978年から日本映画としては初めてメジャーの配給ルートに乗り、全米各地とカナダで封切られた。UAは『宇宙からのメッセージ』を第二の『スター・ウォーズ』で売ろうとして、宣伝費に175万ドルを投入し、大々的な宣伝キャンペーンを展開、テレビとラジオでひっきりなしにCMを流した。"Duke Sanada"こと真田広之を主役扱いしたポスターには「ファンタジーが現実になり、現実がファンタジーになる場所」という風俗の広告のような宣伝文句が書かれ、『帝国の逆襲』に待てない劇場主たちが深作欣二のスペースオペラに殺到した。またエンテックスという会社からシローの乗る"Galaxy Runner"を始め、登場メカのプラモデルも発売された。 1978年11月1日からロサンゼルス、シカゴ、フィラデルフィア、ピッツバーグ、デトロイトなど、主要15都市94館で封切られた。11月16日に最初は15館で封切られ、二週目に入り逐次上映館を拡大、週6万ドルの興行収入を挙げる好成績でさらに60館が追加された。1978年11月17日からはニューヨークを中心とする東部で上映され、ニューヨークでの上映は『スター・ウォーズ』や『ロッキー』、『サタデー・ナイト・フィーバー』などが掛かった定員数1,350、1,500のニューヨークの代表的映画館「ローズステート2(英語版)」他60数館で上映、「ローズステート2」でのオープニング上映には岡田社長も立ち合い、UA社長のアンリ・オールベック社長と共に見守った。それまで黒澤作品でもニューヨークのアート系劇場でしか公開されていなく、ニューヨークの超一流劇場で日本映画が掛かるのは初めて。岡田社長は充分に快挙を味わった。初公開時の成績は12位で高くはなかったが、キッズ・マチネーとして『スタークラッシュ(英語版)』とのカップリングで以降、全米の劇場で上映された。二週目から逐次上映館を拡大し193館で上映。『ミッドナイトエクスプレス』、『アニマルハウス』、『ナイル殺人事件 (1978年の映画)』などの全米ヒット中の大作に伍して健斗、バッファローやポートランドで大ヒット、ロサンゼルス、フィラデルフィアでヒット、カナダのトロント、バンクーバーでも大ヒットした。UAは全米およびカナダで最終的に3000館以上で上映し、全米での最終配収を750万ドルと予想した。1980年のアメリカ合衆国の映画館総数は約17,600館。 岡田社長は『宇宙からのメッセージ』の全米大ヒットに「日本映画始まって以来の快挙ですよ」と意気揚々で、アメリカでは「映画は9歳から30歳以下を対象に映画を作る」という方針を聞いていたく共鳴し、ちょうど日本で『赤穂城断絶』が大コケしていたため、「来年はじいさんばあさんの映画は作りません」ときっぱり"中高年層断絶"宣言をした。また帰国後の記者会見では「モーゼルUAドメスティック営業担当は、全米およびカナダで最終配収予想は600万ドル(約12億円)から700万ドル以上は揚げられると踏んでいた。UAは宣伝費に175万ドル(約3億7,000万円)をかけている。入場料金は最高で4ドル50セント(約1,000円)だった。UAのオールベック社長にこれを機に今後の提携を申し入れたが『宇宙からのメッセージ』のようなケースはフロックのようなもので、そうやすやすと全米の一流劇場で公開されるようなことはないと言われた。UAは年間20数本配給しているが、このうち海外作品は2本くらいで、今回その一本に『宇宙からのメッセージ』が特撮がレベル以上と評価を頂き選ばれたことはラッキーとしか言いようがない。UAが最近公開した『指輪物語』は150億円以上は揚げられると言っていた。『宇宙からのメッセージ』はこれまでにアメリカをはじめ28契約、90ヵ国で上映が決まったが、海外輸出の総収入は200万ドルから250万ドルは揚げられる見込みである。これは日本映画としてはこれまでの最高である『日本沈没』の100万ドルの二倍強という新記録になる。アメリカ映画界は全体的に好況で二度目の黄金期を迎えている。これは製作と興行を分離した合理化の成果によるものでウォール街は興行株が上がっている。1950年代からスタジオシステムが崩壊し、プロデューサー・システムが台頭、オートメーションの映画作りから一本一本手作りの時代に入っている。コロンビアはスタジオを持っていないし、MGMも絞り込んだやり方をとっている。メージャーは各社とも配給本数を減らして宣伝に金をかけるというプロモーション・コストを重要視している。これは日本でも同じ方向に向かっていくと思う。今のアメリカの興行は大作の反動で『アニマル・ハウス』や『アップ・イン・スモーク』、オール黒人の『ウィズ』などのB級映画がヒットしていたが、これなどウチでいえばセントラルフィルム作品ということになる。来年は日本でも同じような傾向が出てくると思う。UAでは『映画の観客層は9歳から30歳であり、それ以上を対象にした映画は一本もやらん』と公言していた。合理化を含めウチが執ってきた方針は決して間違っていないので、もっとシビアに体制を固めて飛躍を期して行きたい」などと話した。
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