上代東国方言とは? わかりやすく解説

上代東国方言

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/27 00:36 UTC 版)

上代東国方言(じょうだいとうごくほうげん、じょうだいあずまほうげん)は、広義には奈良時代東国で話されていた上代日本語を指す。




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上代東国方言

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 22:29 UTC 版)

日本語の方言」の記事における「上代東国方言」の解説

8世紀時点で、日本語には少なくとも3つの大きな方言存在したことが知られている。すなわち東部方言東国方言Eastern Old Japanese)と中部方言Central Old Japanese)、西部方言Western Old Japanese)である。このうち下記のように確実な資料残存しているのは西部奈良付近の上日本語東部方言だけである。 奈良時代万葉集東歌防人歌には、多く東国方言による歌が載せられている。東国方言現在の長野県静岡県から東北南部、すなわち信濃遠江駿河伊豆上毛野武蔵相模陸奥下毛野常陸下総上総甲斐安房の歌が伝わる。東歌防人歌から例として4首を挙げる筑波嶺(ね)にかも降らる否(いな)をかもかなしき児(こ)ろが布(にの)乾さるかも(筑波山降ったのか。それともいとしいあの児が洗った布を乾しただろうか)(常陸、3351番) 上毛野かみつけの伊香保の嶺(ね)ろに降ろ(よき)の行き過ぎかてぬ妹が家のあたり(通り過ぎることのできない妹の家のあたりよ)(上毛、3423番) 昼解け解けなへ紐のわが夫(せ)なにあひ寄るとかも夜解けやすけ(昼解くと解けない紐がわが背子逢うからとでもか夜は解けやすい)(未勘国、3483番) 草枕旅の丸(まる)寝の紐絶えば吾(あ)が手と付けろこれの針(はる)持し丸寝をして紐が切れたらこの針で自分の手お付けなさい)(武蔵防人の妻、4420番) 万葉集載せられたこれらの歌が、当時方言純粋に反映したものかどうか明らかでないが、上代東国方言を今に伝えるものとして資料的価値が高い。これらの歌には、方言ごとに異なるが、おおむね中央語との間に次のような違い見られる上記4首の下線部分にもある。なお、万葉集などの上代の文献ではイ列エ列オ列音の一部甲乙書き分け見られなんらかの発音区別があったとみられる詳しく上代特殊仮名遣参照)。 チがシになる。 イ列音がウ列音になる。 エ列甲類音がア列音になる。完了の「り」(中央語ではエ列接続)がア列接続するエ列乙類音がエ列甲類音になる。 オ列乙類音とイ列音、エ列乙類音が混同される(ただし長野県静岡県みられる) 「なふ」という打ち消し助動詞を使う。活用未然形「なは」、連体形「なへ・のへ」、已然形「なへ」で、連用形命令形を欠く。(例)「あはなふよ」(逢わないよ・3375)、「あはなはば」(逢わないならば・3426)、「あはなへば」(逢わないので・3524)。 一段動詞命令形語尾に「ろ」を用いる。(例)「ねろ」(寝よ・3499)、「せろ」(せよ・3465・3517)。 四段ラ変活用動詞連体形語尾オ列甲類音になる。(例)「ゆこさき」(行く先・4385) 形容詞連体形語尾が「き」ではなく「け」になる。(例)「ながけこのよ」(長きこの夜・4394) 推量に「なむ・なも」を用いる。 1〜10のほとんどは足柄峠以東関東東北南部の歌に見られ長野県静岡県では方言色は薄い。このうち音韻的特徴については、上代特殊仮名遣い甲乙混同中央語よりも早く進んでいたもの見られエ列甲類乙類区別はすでになくなっている。1については、当時中央で[ti]と発音したチを、東国方言では[ʧi]または[tsi]と発音していたことを表していると見られ京都では室町時代以降起こったチの破擦音化が東国ではより早く起きていたことを示す。2は[i]が中舌母音[ï]になっていたもの考えられ、これが現代ズーズー弁直接つながるものとする説もある が、はっきりしない。3のア列接続する「り」は、八丈島過去表現「書から」にその名残がある。 文法的特徴のうち、7は現代東日本方言そのままつながるもので、命令形の「-よ」と「-ろ」の対立奈良時代にまでさかのぼることになる。ただし、命令形「-ろ」は現代九州北西部にもある形で、これについては方言周圏論適用して奈良時代よりも前に中央で「ろ」から「よ」への変化があったと推定されている。また、6については現代東日本方言の「ない」に通じるものの可能性があるが、定かではない一方8・910八丈島利島秋山郷などごく限られた地域に残るのみで、東日本方言のほとんどで平安時代以降中央語からの同化作用受けたことになる。現代東日本方言西日本方言違いのうち、断定の助動詞「だ」対「じゃ・や」、動詞・形容詞で起こる音便違いは、万葉集よりも後の時代現れたものである

※この「上代東国方言」の解説は、「日本語の方言」の解説の一部です。
「上代東国方言」を含む「日本語の方言」の記事については、「日本語の方言」の概要を参照ください。

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