ニュートンの『自然哲学の数学的諸原理』
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「天体力学」の記事における「ニュートンの『自然哲学の数学的諸原理』」の解説
エドモンド・ハレー (1656-1742) の勧めもあり、1687年にアイザック・ニュートン (1642-1727) は『自然哲学の数学的諸原理』(プリンキピア、羅: Philosophiæ Naturalis Principia Mathematica)を出版し、ニュートン力学および天体力学の基礎を築いた。なおニュートンがプリンキピアを書き上げるにあたって、ロバート・フック (1635-1703) やジョン・フラムスティード (1646-1719) ら同時代の研究者の業績に大きく影響を受けている。 まず第1巻でニュートンは質量 (quantity of matter) および運動量 (quantity of motion) を定義し、力 (force) について論じている。続いて運動の法則を定式化し、中心力場のもとでは面積速度が一定であること(そして逆に面積速度が一定であるならば中心力が働いていること)、円錐曲線を描いて運動する物体には距離の二乗に反比例する中心力が作用していること、その場合に楕円軌道を描く物体の周期は楕円の長半径の1.5乗に比例することを示した。 さらにニュートンは互いに引力を及ぼす二体問題についても論じ、その重心まわりの運動に帰着できることを示し、逆二乗則の場合には重心まわりの軌道は円錐曲線となることを主張した(ただし逆二乗則から楕円軌道が導かれることの証明をプリンキピアの初版では与えず、後の版では証明の概略のみを著述している)。また、ニュートンはその理論を月の運動に適用し三体問題の一般解を求めようとしたものの見出すことができず、プリンキピアでは近似解についてのみ記述している。 プリンキピアの第2巻は空気抵抗などの抵抗力のもとでの物体の運動を扱っている。The System of the World と題された第3巻は前2巻とは異なり自然哲学を扱ったもので、ニュートンはそれまでの巻で展開した数学理論を天界の物体の運動に適用した。木星の衛星、土星の衛星、そして惑星がいずれもケプラーの法則(第2法則と第3法則)を満たすことから、天体間には逆二乗則の引力が働いていること、そして地球-月間に働くこの引力は地球上の物体が地球の中心に向かって落下しようとする力(重力)と同じものであると論じている。そしてこのことからすべての物体間に重力が作用すること(万有引力の法則)を主張した。さらに第3巻では自転する球体(すなわち地球)は扁平な形に変形すること、潮汐が月の引力によるものであること、月の運動(ただしこの議論は成功しているとは言い難い)、月と太陽の重力による地球の歳差の計算、彗星の軌道といった内容が扱われている。 1693年にハレーは古代バビロニアおよび中世アラブ界の月食の記録を当時の記録と比較し、月の永年加速を指摘した。1749年に en:Richard Dunthorne は永年加速の大きさを1平方世紀あたり10秒と求めた。
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