スーパー繊維 −高強度・高弾性率・高耐熱性のハイテク繊維−
スーパー繊維。高強度・高弾性率・高耐熱性などとやたらに「高」が付きますが、耐摩耗性、耐薬品性などなど、他にもまだまだあります。スーパー繊維は総称。図表にもあるようにアラミド繊維やポリエチレン繊維など様々な繊維があります。
熱に強く燃えにくい特徴を持つメタ系は、消防服などに使われています。メタ系は物質の性質を失わない最小の粒子である分子段階で、分子同士が腕を組んでいるような状態となっています。一般的な繊維は温度が上がると分子同士の腕が動きやすくなり破れやすくなりますが、メタ系は腕を組むことで分子同士の結びつきが強くなり、熱に耐えられるのです。
一方、引っ張られることに対する強さを持つパラ系は、ロープやテニスラケットのガット、防弾チョッキなどに採用されています。メタ系と違って分子同士はまっすぐ手をつないでいるような状態で並んでいて、直線上に並ぶことで、引っ張り強度が高くなっています。中には「同じ重量であれば鉄の8倍の強さを持つ商品もある」(帝人)もあるそうです。
強さの秘密を例えるなら、ラグビーのスクラムのように腕を組むことで熱に耐え、手をつなぐことで力を強めている。といえるでしょうか。
色をつけにくいなどの課題も残っていますが、最大の問題は価格の高さ。メタ系は消防服を中心に注目されていますが、ナイロンよりも1ケタ高い価格。そのためこれまでの用途以外になかなか広がりにくく、とくにメタ系市場の成長率が足踏み状態です。生産効率を上げるほか、原料の価格ダウンが市場拡大のカギといえるでしょう。
アラミド繊維の06年の市場規模は約7万2000トンで、帝人グループと米国・デュポンが市場の大半を占めています。そのうち高強力や高弾性といった特徴を持つパラ系が5万トン程度、耐熱性や難燃性に優れるメタ系は約2万2000トンです。
パラ系は年間7から10%程度の成長率で、タイヤ補強材といった自動車部材や防弾ベスト、プラスチック補強材料などにも使われています。
一方、メタ系は耐熱性が求められる消防防火服や工場ユニフォームのほか、プラントで使われるフィルターにも採用されていますが、年成長率は約3%にとどまっています。
帝人はパラ系アラミド繊維「トワロン」の年産能力を03年と04年、06年に強化しましたが、それでも需要が伸び、225億円を投じてオランダの生産子会社にトワロンの生産ラインを増強。08年末までに年産能力を現行比15%増の2万6500トンに高めます。
東洋紡は釣り糸、ヘルメットなどに用いられる超高分子量ポリエチレン繊維「ダイニーマ」年産能力を1.6倍に拡大します。オランダDSMと合弁の日本ダイニーマに約16億円をかけて、08年1月をめどに年産能力を1600トンに引き上げます。東洋紡がダイニーマを増強するのは03年に生産能力を倍増させて以来。係船ロープなどの新規需要を取り込むとのことです。
クラレも今年10月に高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」の年産能力を400トン増やして1000トンに。生産子会社のクラレ西条に7億円を投じ、紡糸設備を増設。プラスチック補強材など新たな需要に対応します。
旭化成せんいも世界初のポリケトン繊維「サイバロン」を07年度にも事業化する方針です。
いずれも、自動車や土木、ロープや防護服、スポーツ・レジャー用品といった産業分野で用途拡大が加速していることが背景にあります。
スーパー繊維は、今後ますます、私たちの生活になくてはならない素材となっていくことでしょう。
(掲載日:2007/03/16)
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