クラブ・ワールドカップ 2016
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「サッカーの審判補助システム」の記事における「クラブ・ワールドカップ 2016」の解説
FIFAは2016年12月の日本で行われるクラブ・ワールドカップで大会期間中VARの何らかの形式のテストをすることを正式に発表。VARを含む各国審判団の他、VAR運営のための指導的責任者としてVARの経験が最も豊富なオランダの審判団からデニー・マッケリーを選出した。FIFAは事前に5日間の準備期間を置き、12月7日に翌日からの大会でのテストについて、事前の各国審判団のトレーニング、放送局、設備提供を行うホークアイ社などの準備が整ったと判断し、試合に影響を与える、主審による映像チェック(オン・フィールド・レビュー)も含むライブ・テストの形式で行うと発表した。大会第1試合の鹿島アントラーズ - Auckland Cityの試合ではオランダのデニー・マッケリー、スロヴェニアのDamir Skomina、アメリカのMark GeigerがVARsを担当する初の3人体制をテスト。マッケリーが第1VARとしてリプレイを見て主審とのコミュニケーションを行い、Skominaが第2VARとして試合経過をそのまま映像で追い続け、Geigerが第3VARとして状況を議論するために映像をリプレイする役割を務めたが、この試合ではゴールシーンなどで映像確認(サイレント・チェック)を行っただけで、ピッチ上の審判団のコントロールに問題が無かったことでVARが介入する状況にはならなかった。この大会はその後も全試合で3人のVARs体制でのテストを実施。 12月14日のAtletico Nacional対鹿島アントラーズの試合でこの大会初のVARによる介入が行われた。30分過ぎのスローイングでプレーが止まった際に第1VAR デニー・マッケリーの助言を受けてハンガリー人主審 Viktor KassaiがMLSでのテスト以外では初の主審による映像チェックを実施(マッケリーは「我々から主審に映像を見るように求めた」、「VARs3人と映像を確認した主審も明確なPKという結論に達した」とコメント)。スローインの中断から約1分前のセットプレーの際にDaigo NishiがOrlando Berríoにファールを受けていたのを主審が30秒ほどのオン・フィールド・レビューで確認し、鹿島アントラーズにPKを与えた。VARによる助言まで時間がかかったのは「オフサイドが疑われる難しいケースで、30台のカメラから適切な映像を探す作業が必要だった」とマッケリーは説明している。IFABのテクニカル・ディレクター David Ellerayはこのテスト成功を受け、「2017年から公式なテストが始まればIFABは各リーグ組織から送られた膨大な情報データをKU Leuven universityで分析する。『ビデオ・レビューの使用頻度、主審の判定が支持、または変更される頻度』を調べたい。さらに重要な事として、『VARシステムが選手の振るまい、審判の振るまい、スタジアムのファンの反応、TV視聴者の反応にどのような影響を与えるか』を調査したい。2018年か2019年に最終決定を下す前にはそうした膨大なデータが必要」とライブ・テスト参加国でのテスト開始に向けて今後の調査方針を示した。 12月15日のClub AmericaとReal Madridの試合ではCristiano Ronaldoのゴール後に主審がVARsの映像判定を待ってゴール判定と再開を遅らせるケースが生まれたが、後日 FIFA Chief Officer for Technical Developmentのファン・バステンが「VARが主審に助言する際のボタンを間違って押してしまい、主審が勘違いした」と人的ミスを説明している。この試合後にはLuka Modricが「今週ビデオ審判に付いての説明を受けたけれど、僕は本当のところ耳を傾けていなかった。この制度が続くとは思っていない」と説明を受ける前からすでに懐疑的な姿勢を持っていたことを明らかにしている。大会全体ではほぼ問題なくテストが成功していたが、欧州王者が出場した注目度の高い試合でのミスだったために特にスペイン・メディアが強く反応、Real Madrid以外も含めた様々な選手や監督のコメントが紹介された。また、FIFAは英語の大会公式サイトでVAR制度についてこれまでの経緯と基本的な仕組みを説明していたが、日本語版サイトでは行われなかったことで日本では多くのメディア、TV中継の実況や解説者、観客、ファンがVARのルールを理解できないまま試合を見終えることになり、「(主審が)クラブ・アメリカの要望を受けてVARでの確認を決定した」と報じるメディアがあったり、川崎フロンターレの大久保嘉人も「個人的には、オフサイドの有無でいちいちビデオ判定されるのは嫌だね」とVARの運用ルールを理解していないコメントが報じられてしまった。 決勝前日の12月17日に行われた会見でもVARのテストについてが大きな話題であり、ファン・バステンはテスト初期段階で判定に時に時間がかかることについて「10~15秒程度なら、正しい決断が下された方が我々みんな良い気持ちになれるだろうし、みんなそれで満足するはず。改善は時間の問題であり、最後には全員に喜んで貰えると思う」と今後に明るい見通しを語った。FIFAの審判部門の責任者 Busaccaは「最も難しい部分は映像をいつ用いるべきかの審判の決定。よりコミュニケーションが必要になる」とVARsと主審との連携の重要性を改めて強調した。 12月18日のClub AmericaとAtletico Nacional 3位決定戦ではバーレーン人の主審 Nawaf ShukrallaによりClub AmericaがPKを得たシーンでイエローカードの対象選手が誤認されたが、VARsの助言によって修正された。同日のReal Madridと鹿島アントラーズとの決勝戦ではマッケリーが第1VAR、スロヴェニアのDamir SkominとドイツのBakkary GassamaがアシスタントVARを担当。試合は問題なく進行したが、「後半終了直前にReal MadridのSergio Ramosに2枚目のイエローカードが出されるべきだったのでは」と大きく議論になり、2枚目のイエローカードが適応外のVAR運用ルールが疑問視された他、まだVARのルールを知らない多数のメディア、専門家、ファンによって主審の判定に対してだけでなく、主審がビデオ判定を用いなかったこと、VARが介入しなかったことに対する批判も起きた。
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