『自死の日本史』とは? わかりやすく解説

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『自死の日本史』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 08:58 UTC 版)

モーリス・パンゲ」の記事における「『自死の日本史』」の解説

執筆に至った経緯きっかけ 原題La mort volontaire au Japon日本における意志的な死」。パリ大学教えていた時、パンゲは高等研究実習院教授務めていたバルトに、日本主題とした講義要請され西欧著作現れ日本に関する言説主要な特徴何かということを、 イエズス会 宣教師 の手紙にまで遡って調べるというテーマ選び、そこでほとんど全ての著作日本社会が「意志的な死」に寛容であることを嘆いていることに気付く。このことに触発されたパンゲは文化文化の間を隔て意義深い差異明らかにしうる問題として「意志的な死」の問題正面から考えることにする。この作業にあたり数多く資料をパンゲに提供したのはパリ第七大学日本学教授だったジャクリーヌ・ピジョー(フランス語版であった。この研究経て後、パンゲは再来日したが、この研究の内容本の形にまとめてほしいというピジョーの説得従い日本における1981年から1984年亘る40箇月の執筆期間を経て完成されたのが本書である。献辞は「ロラン・バルト思い出に」、題辞ポール・エリュアールから「かくも難く、かくもかろき死」。 パンゲはそもそもこの研究着手するに際しての、アルベール・カミュニーチェからの影響を自ら述べている。 「本当に重要な哲学的問題一つしか無い。それは自殺問題である」という『シジフォスの神話巻頭言葉をわたしは忘れていたわけではない だからわたしは、過去日本現在の日本大きな広がりのなかで、できるかぎり多様なケース考察してみようと思った。それはニーチェ言っているあの国、「真実に実在した真実に生きられ道徳の国、広大な遥かな隠され道徳の国」〈『道徳の系譜』〉序 を探検するためである この著作は、規範理論としての幕藩体制ないし侍政統治原理パックス・トクガワーナ関係性初め明らかにしているが、これにはアレクサンドル・コジェーヴの『ヘーゲル読解入門』のいわゆる日本化についての註」の影響がある。 「私がこの点での意見根本的に変えたのは、最近日本旅行した(一九五九年)後である。そこで私はその種において唯一の社会を見ることができた。その種において唯一のというのは、これが(農民であった秀吉により「封建制」が清算され、元々武士であったその後継者の家康により鎖国構想され実現された後)ほとんど三百年の長きわたって「歴史の終わり」の期間の生活を、すなわちどのような内戦対外的な戦争もない生活を経験した唯一の社会だからである。ところで、日本人武士の現存在は、彼らが自己の生命危険に晒すことを(決闘においてすら)やめながら、だからといって労働始めたわけでもないそれでいてまったく動物的ではなかった。(中略)このようなわけで、究極的にはどの日本人原理的には、純粋なスノビスムにより、まったく「無償の」自殺を行うことができる(古典的な武士の刀は飛行機魚雷取り替えることができる)。この自殺は、社会的政治的な内容をもった「歴史的価値基づいて遂行される闘争の中で冒される生命の危険とは何の関係もない。最近日本西洋世界との間に始まった相互交流は、結局日本人を再び野蛮にするのではなく、(ロシア人をも含めた)西洋人を「日本化する」ことに帰着するであろう。」(アレクサンドル・コジェーヴヘーゲル読解入門上妻精今野雅方訳、国文社1987年 246-247頁) また「最近日本西洋世界との間に始まった相互交流は、結局日本人を再び野蛮にするのではなく、(ロシア人をも含めた)西洋人を「日本化する」ことに帰着するであろう。」などと書かれた。 評価著作は、1984年度の「フランスで出版された本 ベスト20」に選ばれた。 『外国人による日本論の名著中公新書では、同類の書の中で最高の評価与えられている。 本書について2013年西部邁評論家。後に自死した人物。)は次のように評価した。「モーリス・パンゲというフランス人日本学者がいて、『自死の日本史』という本が筑摩書房から出てます。それを読んでがもっともかなと思ったのは、こういうなんです。/なぜ日本人腹を切るか。モーリス・パンゲは、腹切り思想わかったと言うんですね。それを僕の言葉解説すると、これ以上生きるほうを選んでいると、たとえば心ならずも僕が黒鉄さんを裏切るとか、やっちゃいけないとつい1年前に言ったことを自分でやってしまうとか、そういうこと起こり得ます。つまり生きることには、何かしら裏切りとか、堕落とか、汚辱とか――僕はピューリタンじゃないから、それを毛嫌いしているわけではないんですが――そういう本来拒否すべきものが濃厚に伴いますよね、生き延びようとすると。それがぎりぎりまでくると、神にも仏にも頼らずに、自分の命を抹殺してしまうことで、汚いと自分思っていることをしないですむというのです。/うろ覚えなんですけど、そのことこういう言い方をしていた。形而上学――この場合宗教ですね――に頼らず自分生に伴う虚無感価値あるものは何もありはしないという虚無感吹き払うために、死んでみせることを選び選んだことを一つ文化仕立てたのは、世界広しといえども世界史長しといえども日本人だけである。そういう日本礼賛なんですが、これはなるほどなと思いました。」

※この「『自死の日本史』」の解説は、「モーリス・パンゲ」の解説の一部です。
「『自死の日本史』」を含む「モーリス・パンゲ」の記事については、「モーリス・パンゲ」の概要を参照ください。

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