Job Control Language Job Control Languageの概要

Job Control Language

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/09 15:32 UTC 版)

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概要

ジョブ制御言語(JCL)は、メインフレームジョブ管理システム(ジョブ入力サブシステム)に対して、バッチ処理や常駐プロセス起動時の指定をするスクリプト言語である。

通常は、ジョブ名、ジョブの実行クラス(優先順位など)、ステップ名、使用するプログラム名、そのプログラムが格納されているライブラリー、使用する仮想メモリーの容量、使用する物理ファイル名(データセット名)やその属性(格納場所、新規作成の場合の容量など)、およびジョブ内(ステップ間)の制御を行う。なおジョブ間(ジョブフロー、ジョブストリーム)の制御を自動化する場合は、JCLではできないためジョブスケジューラなどで行う。

大半のメインフレームでは、プログラムから見えるコンピュータは仮想化されており、プログラムは物理ファイル名などを認識することはできない(従って記述もできない)ため、JCLによってはじめて、プログラム内の論理ファイル名と、実際の物理ファイル名などが、関連づけられる。

オープン系では各種のシェルスクリプトが相当するが、メインフレームでのJCLは必須であり、プログラマ(プログラム)とオペレータ(運用管理)を分離している。このため運用管理担当者は、各プログラムの仕様を知ること無く、各ジョブがどの物理ファイル(データセット)を使用するか(しないか)を全て把握し、容易に変更できる。またプログラムが不測の物理ファイル(データセット)をアクセスしたり作成する事が無い。

JCLは、オペレーティングシステム(OS)やバージョンによって機能や構文が異なる。JCLを持つ主なOSには、以下がある。

  • MVS系
    • IBMのMVS系(OS/360、OS/VS、MVS、MVS/XA、MVS/ESA、OS/390、z/OS
    • 富士通MSP(MVS互換OS。JCLもMVSベースだが独自の拡張あり)
    • 日立製作所VOS3(MVS互換OS。JCLもMVSベースだが独自の拡張あり)
  • VSE系
    • IBMのVSE系(DOS/VSE、VSE/ESA、z/VSEJCS(Job Control Statement)と呼び、機能・構文もMVS系とは異なる)
  • 富士通のXSP(機能・構文もMSPとは異なる)
  • ユニシスOS2200 (EXEC制御文(EXECutive制御文)と呼ぶため、厳密にはECL(Executive Control Language) と称されるが、JCLという呼称が一般化されている)

なおメインフレーム専用OSでも、対話型志向のIBM z/VMなどにはJCLは存在しない(ゲストOSの各ユーザーがREXXなどのスクリプト言語を使用して自動化できるが、必須ではなくUNIXなどに近い)。またメインフレームでUNIXやLinuxなどを稼働させる場合も、もちろんJCLは存在しない。

MVS系のJCL

JCLは、バッチ処理をどのように動かすか、サブシステムをどのように起動させるかを、ジョブエントリーシステム(Job Entry Subsystem 2/3、JES2 または JES3)に対して指示するものである。

JCLの各行の先頭2文字は、"//" で始まる。このスラッシュは、パンチカードを使ってJCLを読み込ませジョブを投入していたときの名残である。誤ってパンチカードを後ろからカードリーダーに挿入してしまった場合(代わりにシーケンス番号が先頭に来ることになるだろう)、リーダーは "//" が先頭にないことを読み取って、そのカードを拒絶するようになっていた。

互換性(上位互換下位互換)のために、z/OS で使う JCL の文法は、1960年代から基本的には変わっていない。OS/360 で動いたものと同じ JCL が z/OS でも動いている。

文法

JCL ステートメントの1行の長さは80バイトで、1行またはそれ以上のステートメントで1本の JCL が構成される。

JCL ステートメントは1カラム目から71カラム目までを使用する(コメントは除く)。73カラム目から80カラム目は、しばしばシーケンス番号が記述される。

71文字を超えて1つのステートメントを記述する場合には(コメントは除く)、先の行の最後はカンマで終わり、次の行は4カラム目から16カラム目の間から始める(もちろん、全ての行の先頭2文字は "//" である)。

Identifierフィールド、Identifier欄

JCLは、1カラム目から2カラム目の "//" から始まる。下記を除く:

  • "/*" もしくはユーザー定義の別の delimiter
  • "//*" は、その行全てがコメントであることを指示する。

名前フィールド、名前欄

名前フィールドは、1つのステートメントである。だから、他のステートメントがそのステートメントを指し示す・言及することができる。3カラム目から始まり、8文字以内の長さでなければならない。アルファベットと数字、"#" や "@" や "$" などの文字が使用できる。名前の先頭は、数字であってはならない。ジョブ名、ステップ名、プロシージャ名、DD名を記述する。

オペレーションフィールド、オペレーション欄

オペレーションフィールドは、実行すべきコマンド、オペレーション("JOB"、"EXEC"、"DD" など)を記述する。少なくとも1文字の空白が先におかれなければならない。

パラメータ/オペランドフィールド、パラメータ/オペランド欄

キーワードパラメータの順序は決まっていない。パラメータとパラメータの間に空白は置かない。空白の後はコメントになる。行内のパラメータの記述の左側、パラメータの前には、可読性を高めるための空白が入る。

コメントフィールド、注釈欄

JCL のステートメントのパラメータフィールドの後ろにインラインコメントを記述する場合には、少なくとも1文字の空白を入れてステートメントとコメントを分ける。71カラム目を超えてコメントを記述する場合には、72カラム目を空白にしない(通常、"X" が使われる)。次の行は "// " の後1カラム目から3カラム目の間からコメントの記述を続ける。

ジョブ

1つのジョブ(JOB)はジョブステートメント(ジョブ文)で始まり、 "//" だけの空行(空文)で終わる。1つのジョブ(JOB)の中の各々のステップ(STEP)は、1つのエグゼキュート(EXEC)ステートメント(EXEC文)と複数のデータディファニッション(DD)ステートメント(DD文)、各々のDDステートメントに1つのアクセスするデータセットで構成される。

JOB文

//jobname JOB (accounting information),CLASS=x,MSGCLASS=x,REGION=nK,TIME=(m,s),NOTIFY=XXXXXX

CPU や I/O など、コンピュータ資源を使用した分の使用料を使用した部署に請求するために、必要な会計上の情報が、カッコやクオーテーションマークで区切られて記述される。

CLASS パラメータは、ジョブがどのイニシエータで走るかを決める。その他、ジョブの優先度を指定するパラメータなどがある。

MSGCLASS パラメータはジョブの実行結果をどこに出力するかを指定する。出力クラスは個別のプリンタや、指定のファイルなどに割り振られていて、ユーザーは希望の出力先を指定する。

REGION パラメータは、ジョブが使用できる仮想記憶の最大量、リージョンのサイズを決める。キロやメガという単位を用いて指定できる。指定できる大きさは、システムを構築するときにジョブクラス毎に設定される。

TIME パラメータは、CPU を使用できる最大時間を決める。分、秒で指定する。ジョブの全てのステップが使用する時間を指定する。使用できる最大時間は、1439分59秒(TIME=(1439,59))。1440分を指定すると時間制限なしとなる。

EXEC PGM文

//stepname EXEC PGM=progname,PARM="parm",COND=condition,REGION=nK,TIME=(m,s)

progname は、実行するプログラムを指定する。プログラムがシステム標準指定のリンクリスト、ライブラリに無い場合、JOBLIB か STEPLIB を DD ステートメントに記述して、格納してあるライブラリを指定する。

COND パラメータは、条件を満足する場合は当該ジョブステップを迂回する、実行しない、という指定である。このパラメータはしばしば、条件を満足したら通る、実行する IF ステートメントと混同され、混乱を招く。最近リリースされたオペレーティングシステムでは、この COND 指定の記述法は IF 指定の記述法に置き換わっている。

EXEC PROC文

//procstepname EXEC PROC=procname,param1=foo, ...

または

//procstepname EXEC procname,param1=foo, ...

procname は、カタログされた、あるいは in-stream (流れ内)のプロシージャ名を指定する。param1 以下の指定は、プロシージャに定義されたシンボリックキーワードに依る。プロシージャは、予め定義された JCL(の集まり)である。慣例上、上記例の2つめ、「PROC=」を省いた形を用いる場合が多い。

DD文

//ddname DD DSN=datasetname,DISP=disposition,UNIT=unit,VOL=SER=volser,SPACE=space,DSORG=dsorg,DCB=dcb

または

//ddname DD *

または

//ddname DD DATA,DLM=@@

または

//ddname DD SYSOUT=msgclass

DSN パラメータには、アクセスまたはアロケートするデータセット名を指定する。そのデータセットがカタログされていない場合、さらに UNIT パラメータと VOL パラメータが必要である。区分データセットの中の1つのメンバーを参照・指定・言及する場合には、カッコで括って記述する。たとえば MY.LIBRARY(MYPROGRM) というように。もしデータセット名を指定しなかった場合は、システムは1つ、データセットを割り当てる。このデータセットは当該ステップの中でのみ維持され、使用できる。ステップを跨って使用するが、ジョブが終了したら不要な一時データセット、テンポラリデータセットを指定するときは、データセット名の先頭に「&&」を記述する。たとえば DSN=&&TEMPNAME のように。

DISP パラメータは、データセットをそこで作成するのか、既に存在するのか、ジョブが正常終了したときデータセットを保存しておくのか消してしまうのか、ジョブが失敗に終わったときにデータセットを保存しておくのか消してしまうのか、を指定する。この DISPOSITON パラメータは、カッコで括って3つのサブパラメータがある。例:

  • DISP=(OLD,DELETE,KEEP) - データセットは既存で、ステップが成功したら削除され、失敗したら保存される。
  • DISP=SHR - データセットは既存で、同じタイミング、時刻に別のタスクが読みに来るかもしれない場合。
  • DISP=(NEW,CATLG,DELETE) - データセットを新規に作成し、カタログする。ステップが失敗したら、削除されカタログははずされる。

なにも指定しない場合の初期値は (NEW,DELETE) である。

UNIT パラメータと VOL パラメータは、併せて記述できる。しかしここでは、シンプルな記述例を示す:

  • UNIT=SYSDA - ダイレクトアクセスデバイス全般を意味する。テンポラリファイル(一時データセット)への指定の場合が多い。
  • UNIT=3390,VOL=SER=ABC123 - 特定の(指定の)ダスドのパック ABC123 にアロケーションすることを指定。

SPACE パラメータは、ブロック、トラック、シリンダー単位で、1次割り振り量と2次割り振り量を指定する。および、区分データセットのディレクトリブロックの大きさを指定する。例:

  • SPACE=(TRK,1) - 1トラックだけ割り振る。2次割り振りはしない。
  • SPACE=(CYL,(50,25)) - まず最初に50シリンダー割り振り(1次割り振り)、足りなければ25シリンダーを15回まで割り振っていく(2次割り振り)。(それでも足りなければ容量不足でジョブは異常終了する)
  • SPACE=(4096,(10000),ROUND,RLSE) - 4096バイトのブロックが10000ブロック分になるように、シリンダーのサイズに近い値で割り振る。使わない余ったスペースが生じたら、ジョブステップが終了したときに空き部分を解放する。

DSORG パラメータは、データセットの編成方法を指定する。PS(物理順次、順次データセット)か、DA(ダイレクトアクセス)か、IS(ISAM、現在はサポートされていない)か、PO(区分データセット)を指定する。

DCB パラメータには、プログラムがデータコントロールブロックにてこの DD ステートメント宛てに指定したどのサブパラメータも指定できる。通常は、RECFM サブパラメータによって、レコードフォーマットが指定されることが多い。FB(ブロック化された固定長)、U(未定義)、V(可変長)など。

DD * は、そこから先は80バイトのカードイメージのデータである、という指定である。このデータは、1カラム目から2カラム目に /* と記述するか、次のJCLステートメント(1カラム目から2カラム目が "// " )の記述が始まることで終了する。(この記法は一種のヒアドキュメントとも考えられる)

DD DATA は、DD * と同じだが、JCL ステートメントに含まれる。それは、1カラム目から2カラム目に @@ が記述される行または JCL の終了をもって終了される。

DD SYSOUT=msgclass は、プリントを出力する先を指定する。 SYSOUT=* と指定すると、ジョブカードに指定した MSGCLASS に出力される。

入力データ用の DD ステートメントは、下記のように連結して指定できる(コンカチ)。

//STEPLIB DD DSN=MY.TEST.LIBRARY,DISP=SHR
//        DD DSN=MY.TEAM.LIBRARY,DISP=SHR
//        DD DSN=MY.LIVE.LIBRARY,DISP=SHR

プロシージャ

プロシージャは、JCL のスケルトンである。通常、置き換えることでデータセット名を指定できるようなシンボルを含む。これらのシンボル名は、プロシージャが実際に使われるときに、本当のデータセット名に置き換わる。プロシージャは、JCL にマクロ機能を可用にする。

MVS の古いバージョンでは、プロシージャは SYS1.PROCLIB に予め格納/カタログされていなければならなかった(カタログ式プロシージャ、カタプロ)。新しいバージョンでは、ユーザーが定義したライブラリに格納したプロシージャも使えるようになった。

通常、プロシージャは、上記のような proclib と称されるプロシージャライブラリから呼び出されて実行される。一方、実行するそのジョブそのものの中に定義することもできる。これは流れ内 (inline, in-stream) プロシージャと呼ばれ、普通は、proclib に登録する前にプロシージャをテストする際に用いられる。

最初の行は必ず PROC ステートメントで始まる。そこにはプロシージャ名と、シンボリックの初期値を定義する。例:

//MYPROC  PROC &LIB="MY.TEST.LIBRARY"

あるジョブがこのプロシージャをコールするとき、たとえば以下のように記述する:

//FIRST       EXEC MYPROC
//SECOND  EXEC MYPROC,LIB="FREDS.TEST.LIBRARY"

FIRST の例では、MYPROC プロシージャ中のシンボル LIB は初期値 "MY.TEST.LIBRARY" に置換される。SECOND の例では、MYPROC プロシージャ中のシンボル LIB はコール時に指定した "FREDS.TEST.LIBRARY" に置換される。

流れ内プロシージャを終了するステートメントは:

//     PEND

条件処理

JCL は、if-then-else-endif ステートメントを用いた初歩的な条件処理をサポートする。例:

//TESTCOND IF (RC = 8 | RC = 10) THEN
…
//ELSECOND ELSE
…
//ENDCOND  ENDIF

JCL記述例

過去の遺産を継いでいることから、JCL のオペレーション/記述はほかのオペレーティングシステムのジョブ制御よりも複雑である。

下記は、既存のデータセット (IS198.TEST.INPUT) を読んでプログラムABCDEFGHが何か処理を行い、新しくデータセット (IS198.TEST.OUTPUT) を作成してそこに出力するジョブの JCL ステートメントの例である。

//IS198PRS JOB (IS198T30500),'DATA KAKOU',CLASS=L,MSGCLASS=X,NOTIFY=ADM00011
//STEP01   EXEC PGM=ABCDEFGH
//SYSPRINT DD  SYSOUT=*
//INPUT    DD  DSN=IS198.TEST.INPUT,DISP=SHR
//OUTPUT   DD  DSN=IS198.TEST.OUTPUT,
//           DISP=(NEW,CATLG,DELETE),
//           SPACE=(CYL,(40,5),RLSE),
//           DCB=(RECFM=FB,LRECL=115,BLKSIZE=0),
//           VOL=SER=VOL001
//



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