市民 市民の概要

市民

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/22 07:19 UTC 版)

フランス革命後、公的な場所に掲げられたパネルの一例(1799年)。 「Ici on s'honore du titre de citoyen.(ここに、我々は(我々自身を)市民という称号によって称揚する。)」(「我々は、市民という偉大なる存在なのだ!」といったニュアンスのフランス語風の表現。民衆を苦しめ続けてきた王や王族を打倒し処刑することに成功し、自分たちの主体性や主権をついに手に入れた人々の喜び・高揚感・誇らしさが表れている。)

構成員全員が主権者であることが前提となっている議論では、構成員を主権者として見たものである(現代社会の「市民」について述べるときはこの意味合いのことが多い)。市民の語源は、都市である(citizenとcityは同語源である)。

市民に似た概念として国民があるが、両者の違いは、「市民」がその理想とするところの社会、共同体の政治的主体としての構成員を表すのに対して、「国民」は、単にその「国家」の国籍を保持する構成員を表すという点にある。市民と国民は、たまたま相互に置き換え可能な場合もあるが、そうでない場合もある。たとえば、絶対王政国家の場合、国民は全て臣民であり、市民ではない(主権や主体性を奪われてしまっているためである)[注 5]。また一方で「欧州連合の市民」のように国家とは直接に結びつかないような形の市民権もあり、この場合も「市民」を「国民」と言い換えるのは適切でない。

訳語の「市民」は、福沢諭吉による1867年の『西洋事情外編』や1875年の『文明論之概略』に登場し、フランソワ・ギゾー『ヨーロッパ文明史』(1828年)の英訳にでてくるburgessの訳だと見られている[2]


注釈

  1. ^ ポリーテース、IPA: /po.lǐː.tɛːs/
  2. ^ シトワイヤン、IPA: /si.twa.jɛ̃/
  3. ^ シティズン、IPA: /ˈsɪtɪzən/
  4. ^ ビュルガー、IPA: /ˈbʏʁɡɐ/
  5. ^ 臣民が市民でない訳ではなく、British subjectは1949年までイギリス帝国全体で使われた用語だが[1]、イギリス国民は一般に市民であったと考えられている。
  6. ^ なお、はるか後の時代の、そして別の国の国民であるが、カール・マルクスは『共産党宣言』などの著書で、フランス革命後のシトワイヤンの実態とはブルジョワであり、プロレタリアート(下層労働者)は入っていなかった、(と彼流の解釈をし)そういった主張することで、自らの新たな理論を擁護しつつ、持論を展開した。マルクスは、(フランス革命よりはるかに後に形成された)ブルジョワが経済階級、あるいは身分としての側面を強く持っている、ということに力点を置き、それによって(18世紀の政治状況とは異なった様相を示すようになった)20世紀初頭の政治的な状況に影響を与えようとした。

出典

  1. ^ Types of British nationality - British subject”. www.gov.uk. 2021年3月24日閲覧。
  2. ^ 野村(中沢)真理「<研究ノート>歴史的用語としての「市民」 : 故林宥一さんに捧ぐ」『金沢大学経済学部論集』第21巻第1号、金沢大学経済学部、2001年1月、229-253頁、ISSN 02854368NAID 1100001400892021年11月11日閲覧 


「市民」の続きの解説一覧




市民と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「市民」の関連用語

市民のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



市民のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの市民 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS