都ホテルズ&リゾーツ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/01 06:35 UTC 版)
概説
1890年創業、日本を代表する老舗ホテルとして数多くの国公賓を迎えてきた都ホテルを近鉄グループが買収したものがルーツ。宮内庁御用達(1954年に制度廃止、従来からの指定業者の使用のみ黙認)の志摩観光ホテルなど名門のシティホテル・リゾートホテルを有している。
ホテル間競争が激化する中、1998年以降ホテル事業を再編、宿泊予約センターやセールスオフィスの開設、共同購買、統一会計基準の導入など、チェーンメリットを活かしながら営業力強化を図っている。1998年7月、ホテル事業統括会社として、株式会社近鉄ホテルシステムズを設立。2000年3月には、同社が株式会社都ホテルを吸収合併。本店格の都ホテルを、スターウッド・ホテル&リゾート(現マリオット・インターナショナル)との業務提携により、「ウェスティン都ホテル京都」と改称するなど思い切った改革を実施。また、都ホテル東京、都ホテル大阪、新・都ホテル(京都)と併せて大規模なリニューアルも行うなど、大きくブランドイメージを変えている。2007年4月からは、都ホテル大阪と東京もスターウッド・ホテル&リゾートと提携して「シェラトン都ホテル大阪」「シェラトン都ホテル東京」に改称した。さらに、2014年「あべのハルカス」(仮称:阿部野橋ターミナルビルタワー館)には、「都ホテル」と「マリオット」との提携による、「大阪マリオット都ホテル」が開業した。
今後、東京・大阪等の都市において宿泊特化型ホテルを展開する計画がある。すでに近鉄京都駅の改装に伴い、同駅の上に宿泊特化型ホテルが建設され、2011年10月1日に「ホテル近鉄京都駅(都シティ 近鉄京都駅)」として開業した。他に近鉄奈良駅前に大型ホテルを展開する計画もある[注釈 1]。
なお、2005年4月1日に、近鉄グループにおけるホテル施設資産保有の一元化と、コア事業としてのホテル事業の直営化を行うため、会社の再編を行っている。具体的には、株式会社近鉄ホテルシステムズの子会社として、株式会社ケイ・エイチ・エスを設立。株式会社近鉄ホテルシステムズが会社分割を行い、ホテル統括事業を株式会社ケイ・エイチ・エスに吸収させる。そして、近畿日本鉄道株式会社が(旧)株式会社近鉄ホテルシステムズを吸収合併すると同時に、株式会社ケイ・エイチ・エスが(新)株式会社近鉄ホテルシステムズに商号変更している。
2015年4月1日、100%親会社の近畿日本鉄道株式会社が社名を近鉄グループホールディングス(近鉄GHD)株式会社に変更し純粋持株会社に移行したのに伴い、同社のホテル事業を分割継承し社名を株式会社近鉄・都ホテルズに変更した。
2018年8月には、ブランドの再構築を発表。2019年4月1日から大きく分けて3つのブランドカテゴリーに分け、新たなロゴ・ホテル名を使用することになった[3]。
- 都市型フルサービスホテル…「都ホテル」
- 宿泊主体の都市型カジュアルホテル…「都シティ」
- リゾートホテル…「都リゾート」
ホテル名称は、外資系提携ホテルをはじめ一部改称しないホテルもあるが、基本は「都ホテル ○○」のようにブランド名+地名の順に統一される[3]。
また、国内外で都シティブランドを中心に運営受託やフランチャイズ展開も行い、2018年8月現在の5874室を10年で8000室に増やす計画としている[4]。
コロナ禍による宿泊客の減少など社会構造の急速な変化を受け、2021年3月25日、近鉄GHDは当ホテルグループのうち8ホテルを米国の投資法人であるブラックストーン・グループが主体となって設立する特別目的会社(SPC)に譲渡することを発表した[5] 。SPCに譲渡されるのは都ホテル 京都八条、ホテル近鉄ユニバーサル・シティ、都ホテル 博多、神戸北野ホテル、都リゾート 志摩 ベイサイドテラス、都リゾート 奥志摩 アクアフォレスト、都ホテル 岐阜長良川、都ホテル 尼崎で2021年10月1日付けで譲渡し[5]、譲渡金額は非公表だが簿価423億円に対し約600億円とみられている[6]。譲渡後の8ホテルはSPCから近鉄・都ホテルズが運営を受託する形を取る「運営に特化したノンアセット経営」に移行する[5]。なお、株式会社近鉄・都ホテルズは現法人から近鉄GHDが新しく設立する法人へ吸収分割によりホテル運営事業を譲渡させ、現法人は近鉄不動産へ吸収合併させる新旧分離も併せて行う[5]。譲渡される8ホテルは、ウェスティン都ホテル京都や志摩観光ホテルといった基幹ホテル、シェラトン都ホテル大阪や大阪マリオット都ホテルのような鉄道施設(駅ビル)と切り離せないホテル、都シティ 東京高輪[注釈 2]など他社が所有するホテルを除く形で選定された[6]。ブラックストーンをパートナーに選んだ理由として、近鉄GHDの幹部は世界で10万室以上を保有する有数のホテルオーナーであり、ホテル事業にも通じていることも理由に挙げている[6]。
注釈
- ^ 2018年8月に出資していた奈良ホテルの経営から撤退する関係もあり、奈良県から(旅館はあるが)系列ホテルがなくなるため、近鉄独自でのホテル再進出を検討するとしている[2]。なお、後述の通り、奈良ホテル別館がかつて近鉄奈良駅ビル内に存在した。
- ^ 土地は原沢製薬工業(同社の本社も所在)が、建物は芙蓉総合リースが所有[7]。
- ^ 開業時は名鉄グループと折半で出資。
- ^ 開業時の名称は「ホテルニューアルカイック」。近鉄系になる前はニューオータニと提携していた。
- ^ 近畿日本鉄道株式会社100%子会社
- ^ 所有者である国鉄→JR西日本との共同経営が長らく続いていた。運営法人である株式会社奈良ホテルは近鉄GHDとJR西日本が50%ずつ出資していたが、2018年8月末をもってJR西日本完全子会社となった。ただし、その時点では以降も提携関係は続けるとしていた[24][25]。
- ^ 1973年に都ホテル本体から分社化。もとは在来線での営業も行っていたが、1974年12月から東海道・山陽新幹線での営業を開始[30]。
- ^ 近鉄バファローズのキャンプ地でもあった。
- ^ 奈良 万葉若草の宿 三笠の旧運営会社。
出典
- ^ a b 会社概要 | 会社案内 【公式】都ホテルズ&リゾーツ
- ^ “JR西、奈良ホテルを完全子会社に 訪日客獲得へ”. 日経電子版 (日本経済新聞社). (2018年8月31日) 2018年9月1日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p “都ホテルズ&リゾーツ ブランドの再編について”. 近鉄グループホールディングス (2018年8月3日). 2018年8月3日閲覧。
- ^ “近鉄、ホテル3ブランドに再編 10年後に8000室運営”. 日経電子版 (日本経済新聞社). (2018年8月3日) 2018年8月5日閲覧。
- ^ a b c d “当社グループが保有するホテル資産の一部に係る合弁事業に関する基本合意書締結のお知らせ”. 近鉄グループホールディングス (2021年3月25日). 2021年7月28日閲覧。
- ^ a b c 日経ビジネス 佐藤嘉彦 (2021年4月12日). “巨額赤字の近鉄、8ホテル売却で「リスクはなくなる」”. 日経電子版(日本経済新聞) 2021年7月28日閲覧。
- ^ “東京・大阪で新たな宿泊主体型ホテルを出店 2018年(東京)、2020年(大阪) 開業予定”. 近鉄・都ホテルズ (2017年7月5日). 2021年7月28日閲覧。
- ^ 博多駅筑紫口駅前に、上質な都市型ホテルを中心とした 新たなランドマークとなるビルを建設します「(仮称)近鉄博多ビル」計画概要 (PDF, 近鉄グループホールディングス 2017年4月18日)
- ^ a b “2019年秋開業予定「都ホテル 博多」 名称決定について” (PDF). 近鉄・都ホテルズ (2018年8月3日). 2018年8月3日閲覧。
- ^ 「都ホテル 博多」 2019年9月22日(日)開業決定 (PDF, 近鉄グループホールディングス、近鉄不動産、近鉄・都ホテルズ(2019年3月19日)2019年4月11日閲覧)
- ^ a b 東京・大阪で新たな宿泊主体型ホテルを出店 2018年(東京)、2020年(大阪) 開業予定 (PDF, 株式会社近鉄・都ホテルズ 2017年7月5日)
- ^ “~都ホテルズ&リゾーツの新ブランド「都シティ」第一号ホテル~「都シティ 東京高輪」が2019年2月11日に開業します” (PDF). 近鉄グループホールディングス (2018年8月8日). 2018年8月19日閲覧。
- ^ “ホテル・旅館の再開について” (PDF). 株式会社近鉄・都ホテルズ(近鉄グループホールディングス) (2020年5月21日). 2020年7月8日閲覧。
- ^ 「奈良 万葉若草の宿 三笠」 都ホテルズ&リゾーツ加盟へ チェーンで初めての“旅館” 都ホテルズ&リゾーツ 2017年7月5日
- ^ 都ホテルズ&リゾーツ 「奈良 万葉若草の宿 三笠」が新たに加盟 株式会社近 鉄 ホテルシステムズ 2015年3月10日
- ^ 「近畿日本鉄道100年のあゆみ」p.457
- ^ アフターコロナを見据えた新時代の宿泊特化型ホテル 『フォーズホテル 近鉄 大阪難波』2022年3月18日(金)オープン - 近鉄不動産・近鉄・都ホテルズ 2022年2月1日(2022年2月3日閲覧)
- ^ 近鉄、ホテルで高級路線 宿泊特化型 東京・大阪に 1~2万円台 訪日客向け 日本経済新聞 2017年7月5日
- ^ “近鉄、名古屋駅前のホテル復活へ 東側の再開発エリアで検討”. 日本経済新聞 (2016年11月3日). 2017年4月30日閲覧。
- ^ a b “金沢駅周辺、ホテル競争激しく 都ホテル建替”. 日本経済新聞 (2016年11月3日). 2016年11月8日閲覧。
- ^ 「近畿日本鉄道100年のあゆみ」p.453-454
- ^ “旧 都ホテルを全面改修。平成30年(2018)9月「ノボテル沖縄那覇」としてリニューアルオープン!newspaper=たびらい”. 株式会社パム (2018年8月19日). 2018年8月19日閲覧。
- ^ “都ホテルを全面改修 「ノボテル沖縄那覇」に 8月オープン目指す”. 沖縄タイムス (2018年2月2日). 2018年4月27日閲覧。
- ^ “株式会社奈良ホテルの株式取得に関するお知らせ”. 西日本旅客鉄道株式会社 (2018年8月31日). 2018年8月31日閲覧。
- ^ “「関西の迎賓館」奈良ホテル、JR西の完全傘下に”. 産経WEST (産経新聞社). (2018年8月31日) 2018年8月31日閲覧。
- ^ 都ホテルズ&リゾーツからの退会に関するお知らせ - 奈良ホテル 2018年11月10日(2018年11月12日閲覧)
- ^ “都シティ津、来月から休業へ 需要減、回復見込めず 新型ウイルス影響 三重”. 伊勢新聞 (伊勢新聞社). (2020年8月4日) 2021年3月3日閲覧。
- ^ “三セク系ホテル「都シティ津」 2月末で営業終了”. 日経電子版 (日本経済新聞社). (2021年2月2日) 2021年3月3日閲覧。
- ^ “「ホテル津センターパレス」4月25日三重県津市大門に新規オープン”. PR TIMES (2022年4月25日). 2023年4月14日閲覧。
- ^ 『鉄道ピクトリアル』 2014年10月号 通算895号 P.67
- ^ 『鉄道ピクトリアル』 2014年10月号 通算895号 P.69-70
- ^ a b c 「近畿日本鉄道100年のあゆみ」p.562
- ^ a b c 「近畿日本鉄道100年のあゆみ」p.450
- ^ 「近畿日本鉄道100年のあゆみ」p.318、881
- ^ 「近畿日本鉄道100年のあゆみ」p.318
- ^ a b c d 「近畿日本鉄道100年のあゆみ」p.511
- ^ a b c 『ホテル事業の一部撤退に関するお知らせ』(PDF)(プレスリリース)近畿日本ツーリスト、2004年9月22日、1-2頁 。2017年9月8日閲覧。
- ^ 「近畿日本鉄道100年のあゆみ」p.406
- ^ 「近畿日本鉄道100年のあゆみ」P.781
- ^ “奈良「橿原観光ホテル」が7月末閉館へ コロナ禍で経営悪化”. ホテルバンク. (2021年5月4日) 2023年4月14日閲覧。
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