西村康稔
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/03 13:05 UTC 版)
不祥事
政治資金パーティー収入の裏金問題
2023年12月1日、朝日新聞が、自民党5派閥が開いた政治資金パーティーをめぐる問題で、安倍派が、所属議員が販売ノルマを超えて集めた分の収入を裏金として議員側にキックバックする運用を組織的に続けてきた疑いがあるとスクープした[68]。安倍派は2018~2022年に毎年1回パーティーを開き、計6億5884万円の収入を政治資金収支報告書に記載している[69]。一方、収入・支出のいずれにも記載していない裏金の総額は直近5年間で1億円を超えるとされ(のちに5億円に修正[70])、共同通信は「実際のパーティー収入は少なくとも8億円前後に膨らむ可能性がある」と報じた[71]。清和政策研究会の政治資金収支報告書の記載内容は下記のとおり[注 1]。
清和政策研究会 年月日 パーティー名 会場 収入 購入者数 出典 2018年5月22日 清和政策研究会との懇親の集い 東京プリンスホテル 2億802万円 7,021人 [77] 2019年5月21日 清和政策研究会との懇親の集い 東京プリンスホテル 1億5338万円 5,177人 [78] 2020年9月28日 清和政策研究会との懇親の集い 東京プリンスホテル 1億262万円 3,464人 [79] 2021年12月6日 清和政策研究会との懇親の集い 東京プリンスホテル 1億2万円 3,376人 [80] 2022年5月17日 清和政策研究会との懇親の集い 東京プリンスホテル 9480万円 3,200人 [72] (合計) 6億5884万円
パーティー券は通常1枚2万円であるため、販売枚数が推計できるが、枚数に対する購入者の比率は2018年から2022年にかけてすべて「0.675」で統一されている。日本大学名誉教授の岩井奉信は「絶対にあり得ない」とし、安倍派は政治資金収支報告書に架空の購入者数を記入したとみられる[81][82]。
安倍派5人衆の面々は森喜朗と会い続けた。明治大学出身の萩生田光一は12月3日、国立競技場で開催されたラグビーの早明戦を森とともに貴賓席で観戦した[83]。12月5日、西村と世耕弘成と森はパレスホテル東京の日本料理店で2時間半にわたり会食した。この席には高木毅も参加予定だったが「週刊文春につけられているみたいだ」とおびえ、急遽キャンセルした[83]。12月8日、参議院予算委員会で蓮舫は5日の会食に言及。何を話したのかと西村に問うと、西村は「よく覚えていない。覚えていないが、私の担当している政策の状況などを話した」と答えた。蓮舫が「口裏合わせをしたのでは」と指摘すると、「口裏合わせなど一切行っておりません!」と語気を荒げて否定した[84][83]。
同年12月8日夜までに、官房長官の松野博一、高木、世耕が直近5年間で1000万円を超える裏金のキックバックを受けた疑いがあることが報道により明らかとなった[85]。12月9日朝、朝日新聞は、松野、高木、世耕のほか、安倍派座長の塩谷立、萩生田、西村についても裏金のキックバックを受けた疑いがあると報じた[32]。
同年12月13日、文春オンラインが、西村の事務所関係者や経済産業省の関係者の証言をもとに、西村が2023年10月から12月8日にかけて「架空の政治資金パーティー」を3回にわたって開催したと報じた[86]。平日昼間に開催された会にはパーティー券購入者は参加しておらず、パーティー券購入の『勉強会』の名目で経産省職員をサクラとして使用し、1回で数百万円の儲けが出ていた[86]。企業が不参加を前提としてパーティー券を購入していれば政治資金規正法違反となる可能性がある[86]。
同年12月14日、西村は経済産業大臣の辞表を提出し受理された[34]。
同年12月20日、『月刊Hanada』2024年2月号が発売。同号が組んだ特集「日本の危機2024」で西村、萩生田、世耕はインタビューに応じ、西村は裏金疑惑について「確認作業中」と述べ、萩生田は「正直、会計のことはよく分かっていない」と述べた。また、西村と世耕はそれぞれ将来の首相就任に意欲を示した[87][88]。12月22日、安倍派においては、議員側の「中抜き」を含む3つのパターンで裏金づくりを行っていたことが関係者の証言により明らかとなった[89][注 2]。
同年12月26日、西村が12月21日12時(平日昼間)から、永田町にほど近いビルの会議室でまたしても“架空パーティー”を執り行った疑惑を、デイリー新潮が報じた[92]。
同日までに東京地検特捜部は塩谷、松野、高木、世耕、萩生田を任意で事情聴取した[93][94]。次いで12月29日、西村も任意聴取を受けていたことが明らかとされた[95]。12月31日、議員側がノルマを超えて集めた分を派閥側に納入せずに懐に収めた「中抜き」の総額は、2018年 - 2022年の5年間で約1億円に上ることが判明。安倍派の直近5年間の裏金はキックバック分とあわせ約6億円に上るとされる[96]。
2024年1月11日、時効にかからない2018年以降の歴代事務総長、下村、松野、西村、高木の4人はいずれも任意聴取で会計責任者との共謀を否定し、そのうち複数が、資金のキックバックは事務局長から会長に直接報告される「会長マター(案件)だった」と供述していたことが、毎日新聞の報道により明らかとなった[97][注 3]。報道を受けてテレビの情報番組や一部メディアなどで「死人に口なし」との指摘がなされ[98][99]、立憲民主党の小沢一郎は「彼らの主張が事実とすれば、組織犯罪を主導していた人物が、総理や衆院議長をやっていたことになり、日本の信用に関わる」と自身のX(旧ツイッター)に綴った[100]。
1月19日、特捜部は安倍派の会計責任者を政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪で在宅起訴した[101]。1月26日、特捜部は西村ら安倍派幹部7人について、会計責任者との共謀は認められないとして不起訴(嫌疑なし)とした[102][103]。
2月21日、衆議院・政治倫理審査会へ出席する意向を正式に表明した[104]。国会内で記者団に「私の知っていることを全て正直に話したい」と述べ、「予算の審議は重要なので影響のないように対応したい」と語った。議員辞職や離党について考えを問われ「説明責任を果たしていきたい」と答えるにとどめた[104]。
2月28日と29日に開催することで与野党が大筋で合意していた衆議院・政治倫理審査会をめぐり、自民党は27日午後、安倍派の西村と武田良太元総務大臣が公開での審査に応じる意向を野党に伝えていた[105]。しかし同日、西村が“安倍派として対応をあわせるため自分だけ公開で応じることはできない”として公開での出席を断り、それを受け武田も出席を拒んだ。そのため、28日に開催予定だった政治倫理審査会は見送られた[105]。
4月4日、党は党紀委員会を開き、西村を党員資格停止1年とするなど議員39人への処分を決定した[35]。
その他の政治資金問題
- 2014年に、西村の資金管理団体「総合政策研究会」が、会員制の「六本木ヒルズクラブ」(東京都港区)に、2007年3月に、入会費約124万円と預託金50万円を支払って会員になり、その後は毎年、年会費約19万円を支出していることが報じられた[107]。「会員権は私的にも使え、政治資金の使途に必要な公明、公正さを確保できず不明朗だ。個人で購入し、政治活動に使った場合のみ費用を政治資金でまかなうべきだ」との識者のコメントを朝日新聞が報道している[107]。
- 2016年に「統合型リゾート施設(IR)」整備推進法案(カジノ解禁法案)を議員立法で法案提出した際、大阪府内のスロットマシン製造会社から2013年度からの3年間で計111万円の献金を受けていることが報じられた[108]。
- 日本共産党の機関紙しんぶん赤旗に、西村の関係する自民党兵庫県商工振興連盟支部への村上ファンドの関連会社役員2人からの合計200万円の献金が報道された[109]。また、村上ファンドに出資した政治家や財界人の実名及び投資の金額・投資の時期が書かれた「投資家リスト」が流出し、そのリストに西村の名前があるとFACTAが報道した[110]。
秘書に関する疑惑
2023年11月の米国訪問の際、宿泊先の高級ホテルで、内部で隣室と行き来ができるコネクティングルームに宿泊し、その隣室にSPの代わりに30代の女性秘書官を宿泊させていた疑惑が同年12月に週刊文春によって報じられた[111]。西村事務所は「全くご指摘のような事実はございません。代議士の隣室には、両側に(経産官僚の)事務秘書官と警護官が宿泊しました」と回答し、疑惑を否定した[111]。
注釈
- ^ 2023年11月24日、総務省は2022年分の政治資金収支報告書を公表。自民党5派閥がそれぞれ同年に開催した政治資金パーティーの収入額もあわせて公表された。金額は清和政策研究会(安倍派)が9480万円、志帥会(二階派)が1億8845万円、平成研究会(茂木派)が1億8142万円、志公会(麻生派)が2億3331万円、宏池政策研究会(岸田派)が1億8328万円。安倍派はパーティ開催時で所属国会議員98人を有する最大派閥であるにもかかわず収入の金額が著しく低いことが明らかとなった[72][73][74][75][76]。
- ^ 安倍派における裏金づくりの3つの手法の詳細は以下のとおり[89][90][91]。
(1)支援者は派閥の口座に直接代金を振り込み、派閥側はノルマ超過分を議員に還流(キックバック)する。
(2)支援者は頼まれた議員の口座に代金を振り込み、議員は振り込まれたパーティー券代のうち、ノルマ分だけを派閥に納めて「中抜き」し、残った分は手元にプールし事実上の還流とする。
(3)支援者は頼まれた議員の口座に代金を振り込み、議員はその全額を派閥に納め、派閥側はノルマ超過分を議員に還流する。 - ^ 清和政策研究会の事務総長と会長の変遷は下記のとおり。
年月日 事務総長 会長 不詳 塩谷立 町村信孝 2014年12月25日 細田博之 2018年1月25日 2018年1月25日 下村博文 2019年9月11日 2019年9月12日 松野博一 2021年10月6日 2021年10月7日 西村康稔 2021年11月10日 2021年11月11日 安倍晋三 2022年7月8日 2022年7月8日 (空席) 2022年8月10日 2022年8月25日 高木毅
出典
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