被害者
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/30 12:49 UTC 版)
被害者の権利
親告罪における権利(告訴権)
告訴権とは、犯罪の被害者が、加害者に対する処罰を求める権利である。
犯罪の中には、刑事裁判を行うにあたって被害者の告訴が必要なもの(親告罪)がある。これらの犯罪は、「事件を公にすることで被害者の不利益につながる恐れがあるもの(例:名誉毀損罪)」、「軽微な被害が想定されているもの(例:器物損壊罪)」などがあり、それらについては被害者が自己の都合で加害者に対する処罰を求めるかどうかを決めて良いことになっている。親告罪では、被害者による告訴権の行使が必要である。
親告罪以外についても、被害者は告訴をすることができる(親告罪以外では、告訴がなくても検察が裁判を起こすことは可能)。この場合、被害者の告訴があれば、裁判とするかどうかの判断や判決の量刑などに影響する場合がある。
訴訟上の諸権利
被害者には、前述の告訴権(刑事訴訟法230条)に加え、以下の権利がある。
- 公判手続の傍聴申出権(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律2条)
- 公判記録の閲覧及び謄写申出権(同法3条)
- 意見陳述申出権(刑事訴訟法292条の2)
なお、これらに関わる検察官の判断(不起訴の判断を含む)の理由についても、被害者はその通知・告知を受ける権利がある。
被害者の承諾
なお、刑法上、被害者の承諾があることによって、犯罪とはならなくなるものがある。たとえば、医師による手術行為は外形上傷害罪の構成要件に該当するが、被害者の同意がある場合には、傷害罪となることはない(事例によっては推定的同意が認められるかどうか問題になる)。殺人罪も、被害者の同意があると成立しないが、一方で同意殺人罪が成立する。13歳未満に対する強姦罪や強制わいせつ罪は、被害者の承諾があっても犯罪の成否に影響しない。なお、判例は保険金詐欺や指つめなどの事例について傷害罪の成立が問題となったケースで、法益の侵害について被害者の同意があるにもかかわらず、傷害罪の成立を肯定した。刑法学上の議論の詳細は被害者の承諾や社会的相当性の項目を参照。また、被害者の承諾があるのにないと誤信した場合、未遂罪として処罰されることもありうる(無差別殺人を行ったが、被害者本人が殺されることに同意していた場合等)。
損害賠償請求権
日本の民法で不法行為(709条)の成立要件を満たす場合や、加害者の行為が債務不履行に該当する場合は、それぞれ損害賠償請求権が被害者に成立する。ただ、これらは金銭賠償が原則であり、かつ加害者側の資力に依存するものなので、被害の性質や多寡によっては十分でないことが多い。
注釈
出典
- ^ 特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律 - e-Gov法令検索
- ^ a b 『日本経済新聞』朝刊2021年7月18日(社会面)「犯罪被害ケアなお途上/支援条例制定、5県空白/京アニ放火2年」「北欧に専門機関、一括対応/米独、運営支える寄付文化」(2021年8月25日閲覧)
- ^ “犯罪被害給付:海外での事件、救済漏れ 制度改善求める声”. 毎日新聞. (2012年10月21日). オリジナルの2013年8月28日時点におけるアーカイブ。
- ^ “国外犯罪被害者救済で法成立 弔慰金の条件厳しく”. 日本経済新聞. (2016年6月25日) 2016年12月24日閲覧。
- ^ “犯罪被害者:後遺症抱え生活保護 持続補償、制度化を”. 毎日新聞. (2014年2月26日). オリジナルの2014年3月2日時点におけるアーカイブ。
- ^ 犯罪被害者:尽きぬ苦悩 後遺症抱え生活保護、講演料は「収入」 持続補償、制度化を 識者の話[リンク切れ]『毎日新聞』2014年2月26日
- ^ 「死刑宣告、過去最多45人 世論が厳罰化後押し[リンク切れ]」『産経新聞』2006年12月30日
- ^ “少年審判への遺族傍聴 法改正に賛否両論”. J-CAST (2008年5月3日). 2008年5月6日閲覧。
- ^ 「分断しない捜査、報道を 冤罪と犯罪、被害者巡り熊本大でシンポ」『熊本日日新聞』2021年06月20日(2021年8月25日閲覧)
- ^ 森達也『死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う』(朝日出版社、2008年1月10日、ISBN 9784255004129)103頁
- ^ “テキサス銃乱射事件、警察はテレビ中継で容疑者の名前を公表せず「彼の行為に、悪名を与えない」”. huffingtonpost (2019年9月2日). 2019年9月3日閲覧。
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