熱重量分析 酸化プロセス

熱重量分析

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/10 21:23 UTC 版)

酸化プロセス

酸化的な重量減少は、TGAにおいて最も一般的に観測できる減少パターンである[9]

銅合金の酸化に対する耐性を検討することは非常に重要である。例えば、NASAは、燃焼エンジンに使用可能な銅合金の研究を行っている。しかしながら、酸素が豊富な雰囲気中では酸化銅が形成されるので、これらの合金においては酸化分解が起こり得る。NASAはスペースシャトル材料を再利用できるようにしたいので、酸化に対する抵抗は非常に重要である。TGAは、このような実用のため、材料の静的酸化の研究に使用できる。

ある研究者らは、酸化プロセスから特定のオリゴマーやポリマーを保護する方法を研究してきた。一例は、オリゴマーをマルチブロックコポリマーに挿入することである[10]。窒素および空気中のオリゴマーおよびオリゴマー/マルチブロックコポリマーの両方のTGA曲線がその例である[10]。窒素雰囲気下でTGA分析すると、オリゴマーの酸化は起こらない。空気中でオリゴマーをTGA分析すると200-350 ℃の間で酸化プロセスが見られる。このプロセスは、オリゴマー/マルチブロックコポリマーについては見られない。この論文の著者らは、酸化プロセスにはオリゴマーのヒドロキシル末端基が関与するとして、この酸化プロセスの消失現象を説明した。マルチブロックコポリマーによるオリゴマーの包み込みが、酸化プロセスを妨げたと考えられる[10]

燃焼

TGA分析中に測定試料が燃焼したかどうかは、TGA曲線に記録された明瞭な形跡により識別できる。興味深い例のひとつが、大量の金属触媒を含む未精製のカーボンナノチューブ試料のTGA分析でみられる。燃焼のために、TGA曲線が典型的な形状から外れることがある。この現象は、急激な温度変化によって引き起こされる。重量と温度を時間に対してプロットすると、その一次微分曲線の急激な傾きの変化は、試料の重量減少および熱電対で観測される急激な温度上昇、と同時に起こっている。その重量減少は、燃焼によりスス粒子が発生した結果であり、燃焼は材料自体のムラによって引き起こされる、すなわち、重量減少が制御不充分なため、炭素の酸化が追いつかない状態と言える。


  1. ^ a b c Coats, A. W.; Redfern, J. P. (1963). “Thermogravimetric Analysis: A Review”. Analyst 88 (1053): 906–924. Bibcode1963Ana....88..906C. doi:10.1039/AN9638800906. 
  2. ^ Tikhonov, N. A.; Arkhangelsky, I. V.; Belyaev, S. S.; Matveev, A. T. (2009). “Carbonization of polymeric nonwoven materials”. Thermochimica Acta 486: 66–70. doi:10.1016/j.tca.2008.12.020. 
  3. ^ Thermogravimetric Analysis (PDF)”. 2012年6月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年7月16日閲覧。
  4. ^ Apollo thermogravimetric analyzer TGA”. www.impautomation.com. 2017年7月16日閲覧。
  5. ^ Narayanan, R.; Laine, R. M. (1997). “Synthesis and Characterization of Precursors for Group II Metal Aluminates”. Appl. Organomet. Chem. 11: 919–927. doi:10.1002/(SICI)1099-0739(199710/11)11:10/11<919::AID-AOC666>3.0.CO;2-Z. 
  6. ^ a b Marvel, C. S. (1972). “Synthesis of Thermally Stable Polymers”. Ft. Belvoir: Defense Technical Information Center. 
  7. ^ Liu, X.; Yu, W. (2006). “Evaluating the Thermal Stability of High Performance Fibers by TGA”. Journal of Applied Polymer Science 99: 937–944. doi:10.1002/app.22305. 
  8. ^ Tao, Z.; Jin, J.; Yang, S.; Hu, D.; Li, G.; Jiang, J. (2009). “Synthesis and Characterization of Fluorinated PBO with High Thermal Stability and Low Dielectric Constant”. Journal of Macromolecular Science, Part B 48: 1114–1124. doi:10.1080/00222340903041244. 
  9. ^ Voitovich, V. B.; Lavrenko, V. A.; Voitovich, R. F.; Golovko, E. I. (1994). “The Effect of Purity on High-Temperature Oxidation of Zirconium”. Oxidation of Metals 42: 223–237. doi:10.1007/BF01052024. 
  10. ^ a b c D'Antone, S.; Bignotti, F.; Sartore, L.; D’Amore, A.; Spagnoli, G.; Penco, M. (2001). “Thermogravimetric investigation of two classes of block copolymers based on poly(lactic-glycolic acid) and poly(ε-caprolactone) or poly(ethylene glycol)”. Polymer Degradation and Stability 74: 119–124. doi:10.1016/S0141-3910(01)00110-0. 


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