減衰 地震

減衰

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/04 03:07 UTC 版)

地震

地震がある地点に及ぼすエネルギーは地震波の伝播距離に依存する。地震動の減衰は大地震に備える上で重要な役割を果たす。地震波は地面を伝播するにつれてエネルギーを失う(減衰)。この現象は地震波エネルギーの距離につれて拡散することに関係する。次の二種類のエネルギー散逸が存在する。

  • 地震波がより大きな体積へと分散することによる幾何分散。
  • 熱としての分散。非弾性減衰もしくは内部減衰とも呼ぶ。

電磁波

電磁輻射の強度減衰は光子吸収英語版散乱に起因する。幾何的な広がりに起因する逆二乗則による強度低下は減衰に含めない。したがって、強度の総変化は逆二乗則と経路による減衰の両方を考慮にいれて計算する必要がある。

物質中の減衰の主な原因は光電効果コンプトン散乱、そしてエネルギーが 1.022 MeV 以上の光子については対生成である。

X線撮影

吸収係数英語版の項を参照。

光ファイバー中における減衰は伝送損失とも呼ばれ、伝送媒質中を光(信号)が伝播するにつれて強度を低減させる。光ファイバーは比較的透明度が高いため、減衰係数は通常 dB/km 単位で計測される。媒質は典型的には光を内側に閉じ込めるシリカガラスファイバーである。減衰は長距離デジタル通信における伝送限界の重要な要素である。そのため、減衰を抑え、信号を最大限増幅するために多くの研究が成されている。経験的な研究によると減衰の主な原因は散乱吸収英語版の両方である[9]

光ファイバーにおける減衰は次の式により計算できる[10]

鏡面反射
拡散反射

光ファイバーのコア中を伝播する光は全反射に基いて説明できる。分子レベルで見て粗く、不規則な表面においては、光線はさまざまな方向へランダムに反射されることがある。このような種類の反射を「拡散反射」と呼び、典型的には広い範囲の反射角により特徴づけられる。裸眼で物体が見えるのは、ほとんどがこの種類の反射光による。この種類の反射は「光散乱」と呼ばれることも多い。物体表面からの光散乱は我々の物理観測における主要なメカニズムである[11] [12]。多くの一般的な表面の光散乱はランバート反射によりモデル化できる。

光散乱は散乱される光の波長に影響を受ける。そのため、入射光波の周波数によって散乱中心の物理的次元(もしくは空間スケール)に限界が生じる。これは通常微視的なスケールである。例えば、可視光は波長スケールが1 マイクロメートルオーダーであるから、散乱中心は同等の空間スケールとなる。

よって、光の内表面および界面における非コヒーレント散乱英語版が散乱の原因となる。金属セラミックスのような(多)結晶性の物質では、細孔に加えてほとんどの内表面もしくは界面が粒界を形成しており、細かな結晶秩序領域に分割されている。近年、散乱中心(粒界)のサイズを散乱される光よりも小さくすると散乱がほとんど起こらないことが示された。この現象は透明セラミクス材料の開発につながっている。

また、光ファイバーに用いられるレベルの光学ガラスにおける光散乱は、ガラス構造中の分子レベルの欠陥(組成変動)に起因する。実際、ガラスを多結晶の極限状態と見做す考え方が芽生えつつある。この枠組み内では、様々な度合いの近距離秩序を示す「領域」が金属や合金とガラスやセラミックスの両方の物質の構成ブロックとなる。この領域の内側およびその間のどちらにも微視的構造欠陥が分布し、光散乱が起きるのに理想的な場所を提供する。 これと同じ現象が赤外線ミサイルドームの透明性限界で見られる[13]

紫外-可視-赤外吸光

光散乱に加えて、減衰および信号損失は特定波長の選択的吸光によっても起こる。ある素材において起こる吸収については、次のような電子的要因と分子的要因の両方を考慮する必要がある。

  • 電子レベルにおいては、電子軌道が紫外および可視光領域の特定の波長もしくは周波数の光量子(光子)を吸収できるような間隔になっているか(量子化されているか)に依存する。これがの原因である。
  • 原子もしくは分子レベルにおいては、原子および分子、化学結合の振動周波数、原子や分子がどれだけ密に充填されているか、そして原子や分子が長距離秩序を示すかに依存する。これらの要素は物質の赤外線遠赤外線マイクロ波電波などの長波長な電磁波の伝達能力を決定する。

特定の物質による赤外光の選択的吸光はその物質の振動周波数(もしくはその整数倍)と光波の周波数が一致した場合に起こる。原子および分子が異なれば振動の固有周波数も異なるため、物質はそれぞれ異る周波数(もしくはスペクトル領域)の赤外線を選択的に吸収することになる。

応用

光ファイバーにおいて、減衰は信号光の強度減少速度である。この理由から、長距離光ケーブルには(減衰の少ない)ガラスファイバーが用いられ、減衰の大きいプラスチックファイバーは近距離にしか用いられない。意図的に光ケーブル中の信号強度を減少させるための光減衰器英語版も存在する。

光の減衰は海洋物理学においても重要である。気象レーダーでも同じ効果が重要となる。なぜなら、雨粒は放射光のある程度の一部を吸収するが、これが波長に依存するからである。

高エネルギー光子は生体組織に対する損傷効果を持つため、医療診断中にそのような放射線を用いる場合はその度合いを知る必要がある。さらに、ガンマ線を用いた癌治療英語版に際しては、そのエネルギーのどれだけが健康な組織および腫瘍組織に蓄積するのかを知る必要がある。

無線通信

現代の無線通信界でも減衰が重要である。無線信号の到達範囲は減衰によって決まり、また減衰は信号の伝播する媒質(空気、木材、コンクリート、雨粒など)の影響を受ける。無線通信における信号損失については経路損失英語版の項を参照のこと。

出典


  1. ^ Essentials of Ultrasound Physics, James A. Zagzebski, Mosby Inc., 1996.
  2. ^ Diagnostic Ultrasound, Stewart C. Bushong and Benjamin R. Archer, Mosby Inc., 1991.
  3. ^ ISO 20998-1:2006 "Measurement and characterization of particles by acoustic methods"
  4. ^ S. P. Näsholm and S. Holm, "On a Fractional Zener Elastic Wave Equation," Fract.
  5. ^ Culjat, Martin O.; Goldenberg, David; Tewari, Priyamvada; Singh, Rahul S. (2010). “A Review of Tissue Substitutes for Ultrasound Imaging”. Ultrasound in Medicine & Biology 36 (6): 861–873. doi:10.1016/j.ultrasmedbio.2010.02.012. PMID 20510184. 
  6. ^ http://www.ndt.net/article/ultragarsas/63-2008-no.1_03-jakevicius.pdf
  7. ^ Bohren,C. F. and Huffman, D.R. "Absorption and Scattering of Light by Small Particles", Wiley, (1983), ISBN 0-471-29340-7
  8. ^ Dukhin, A.S. and Goetz, P.J. "Ultrasound for characterizing colloids", Elsevier, 2002
  9. ^ Telecommunications: A Boost for Fibre Optics, Z. Valy Vardeny, Nature 416, 489–491, 2002.
  10. ^ “Fibre Optics”. Bell College. オリジナルの2006年2月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20060224231950/http://floti.bell.ac.uk/MATHSPHYSICS/5attenua.htm 
  11. ^ Kerker, M. (1909). The Scattering of Light (Academic, New York). 
  12. ^ Mandelstam, L.I. (1926). “Light Scattering by Inhomogeneous Media”. Zh. Russ. Fiz-Khim. Ova. 58: 381. 
  13. ^ Archibald, P.S. and Bennett, H.E., "Scattering from infrared missile domes", Opt.


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