水泳 歴史

水泳

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/09 09:18 UTC 版)

歴史

泳ぐシカ(米国カリフォルニア州シャスタ湖

全ての動物は泳ぐ動物から進化したので、多くの動物が生まれつき泳げる。いわゆる恐竜の子孫だとされ、飛翔するようになった鳥類ですら泳げる。地表の70%が海であり、陸にも川・湖・池が多くあるため動物は地表を移動すればしばしば泳ぐことにもなる。なお樹上の進化の歴史が長くなった霊長類は他の動物よりは泳ぎが苦手な傾向がある。

人類は地表を移動するために川や湖を泳いだだけでなく、さまざまな目的で泳いできた。泳いでいる人を描いた約9000年前の壁画がある。古代ギリシア時代には水泳が盛んであったことも当時の絵画や彫刻からわかる。古代ギリシア・古代ローマ時代の身体訓練では水泳が重要で、「文化人の条件」としても、文字が読めることと並んで水泳ができることが必要とされていた。アッシリア王国の旧地から発掘されたレリーフには、泳いで川を渡っている兵士が描かれている。記録としては、古代エジプトのパピルス文書(紀元前2000年)、アッシリアのニムルド出土の兵士の図(紀元前9世紀)、古代中国荘子列子淮南子などがある[7]中世までの泳ぎは動物の模倣で、犬掻き平泳ぎに似ていた。19世紀に入り、スポーツの近代化とブルジョワジーが「賭けレース」をするようになったことを背景として泳ぎにスピードが求められるようになった。「速く泳ぐための泳ぎ」がつくられてゆき、もっとも原始的な泳ぎの形であるとともに平泳ぎの原型となる「両手で同時に水を掻き、両足で同時に水を後方に押しやる泳ぎ」から「両手で同時に水を掻き、両足を左右に開いたのち勢いよく水を挟んで前進力を得るウェッジキック」が考案され、現在の平泳ぎが完成した[7]。19世紀には西欧において水泳の一般化と競技化が進み[8]、1837年にはイギリスにおいて初の水泳競技大会が開催されている[9]。1875年にはマシュー・ウェッブが世界初のドーバー海峡横断泳を成功させ、水泳人気はさらに高まった[10]。20世紀に入ると女性の水泳参加も徐々に進んでいき、1912年のストックホルムオリンピックからは水泳女子種目が開始された[11]

アメリカ合衆国などではコーチと母親が一緒になって乳幼児をプールに浮かべて泳がせる教室もあり、吸収の速い乳幼児に水に触れさせることで簡単に泳ぎを習得させている。その時期を過ぎると、逆に人は訓練無しには泳げなくなってしまう。一方で、一度習得すると長い間泳いでいなくても忘れることはなく、最も忘れ難い運動とも言われている。特に泳ぎが下手な人間のことを俗に「カナヅチ」という。


注釈

  1. ^ 逆に、発展途上国の多くではプールを建造する経済的な余裕が無く、競技の環境が整わず、競技の水泳を行う人数は増えにくい。

出典

  1. ^ 広辞苑【水泳】
  2. ^ a b https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202108/202108_05_jp.html 「日本の伝統的な泳法」Public Relations Office of the Government of Japan 2021年8月 2022年3月22日閲覧
  3. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p69-76 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  4. ^ 水泳の水分補給「熱中症、熱射病、日射病のHP」
  5. ^ a b 「スポーツの世界地図」p82 Alan Tomlinson著 阿部生雄・寺島善一・森川貞夫監訳 丸善出版 平成24年5月30日
  6. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p20 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  7. ^ a b 水泳の歴史[リンク切れ]
  8. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p45-47 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  9. ^ a b 「泳ぐことの科学」p49 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  10. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p47-48 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  11. ^ https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h30/zentai/html/honpen/b1_s00_01.html 「スポーツにおける女性の活躍」男女共同参画白書 平成30年版 日本国内閣府男女共同参画局 2022年3月29日閲覧
  12. ^ MD, Claire McCarthy (2018年6月15日). “Swimming lessons save lives: What parents should know” (英語). Harvard Health. 2022年6月10日閲覧。
  13. ^ a b 水上安全法
  14. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p185 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  15. ^ 三 学校体育施設の充実 学制百二十年史編集委員会、2022年1月23日閲覧
  16. ^ 水泳
  17. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p21-22 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  18. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p23-28 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  19. ^ 参考資料① (17645kbyte) - 富山市
  20. ^ 平成 26 年度 七ヶ浜中学校プール改築工事基本設計及び実施設計業務委託 実施設計仕様書
  21. ^ 初の学校プール完成 | 大磯・二宮・中井 | タウンニュース
  22. ^ 体育・スポーツ施設現況調査の概要 文部科学省
  23. ^ 多摩区で水泳の授業に温水プール利用、天候に左右されず水道代削減も/川崎 神奈川新聞
  24. ^ "Drowning Happens Quickly– Learn How to Reduce Your Risk". 疾病予防管理センター。 2014年8月18日閲覧。
  25. ^ Swimming Lessons Information from the Canadian Red Cross – Canadian Red Cross. カナダ赤十字。 2016年6月12日閲覧。
  26. ^ 「泳ぐことの科学」p37-38 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  27. ^ a b 「泳ぐことの科学」p41 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  28. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p90 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  29. ^ 「泳ぐことの科学」p39-40 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  30. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p84-89 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  31. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p93-94 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  32. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p94-95 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  33. ^ 「泳ぐことの科学」p57-58 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  34. ^ 「泳ぐことの科学」p69 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  35. ^ https://www.joc.or.jp/sports/waterpolo.html 「水泳・水球」公益財団法人日本オリンピック委員会 2022年3月22日閲覧
  36. ^ https://www.joc.or.jp/sports/artisticswimming.html 「水泳・アーティスティックスイミング」公益財団法人日本オリンピック委員会 2022年3月22日閲覧
  37. ^ https://www.joc.or.jp/sports/swimming.html 「水泳・競泳」公益財団法人日本オリンピック委員会 2022年3月22日閲覧
  38. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p170 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  39. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p170-171 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  40. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p171-183 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  41. ^ https://news.yahoo.co.jp/articles/84710a8194d8afda061929168f415aa901e330f1?page=2 「スラップスケートOKで高速水着禁止の過去…ナイキ厚底シューズは“技術ドーピング”なのか、それとも技術革新なのか?」THE PAGE 2020/1/17 2022年3月29日閲覧






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