水泳 競技

水泳

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/14 09:27 UTC 版)

競技

水泳はあくまで「水の中で泳ぐこと」全般であり、このうち主にタイムを競う競技類を競泳と言う。 水泳競技には競泳飛込競技水球アーティスティックスイミングオープンウォータースイミングなどの競技を含むので、夏季オリンピック世界水泳選手権日本選手権水泳競技大会で水泳という場合にはこれらすべてを含む場合がある。通常、日本語では競泳を指して水泳と言うことが多いが、飛込や水球だけを指して水泳と言うことはない。英語のswimmingは日本語の(広義の)水泳をさす場合と競泳をさす場合がある。これらの競技は、競技大会の日程及び会場等がそれぞれ異なることや競技性の違いから一般的には別の競技とされる[1] 。

競泳
水泳競技。スタート台からのスタートの瞬間。
プールを使用して、定められた距離を泳ぎきるのにかかる時間を競う。男女別に行われ、それぞれ個人種目とリレー種目がある。個人種目には、自由形(通常はクロール、Free Style、略称Fr)、平泳ぎ(Breast Stroke、略称Br)、背泳ぎ(Back Stroke、略称BaまたはBc)、バタフライ(Butterfly Stroke、略称BuまたはFly)の4つの泳法と、4泳法を1人で決められた順番にすべて泳ぐ個人メドレー(Individual Medley、略称IM)がある。リレー種目は、4人とも自由形で泳ぐフリーリレー(略称FR)と、4人が背泳ぎ・平泳ぎ・バタフライ・自由形の順に泳ぐメドレーリレー(略称MR)がある。なお、リレー種目には男子2名・女子2名の混合競技がある。距離は、25m(短水路のみ)から200mまであり、自由形のみ400m、800m、1500mもある。使用されるプールには片道50mの長水路と、片道25mの短水路があり、ターンの回数が多い25mプールの方が良い記録が出るため、短水路記録として別に扱われる。泳法やスタート、ターン、リレーの引継ぎなどには細かい規定がある。1896年アテネオリンピックから実施され、世界的に競技人口が多いメジャーな競技とされている。また、競泳を含むスポーツとして、近代五種競技がある。
飛込競技
専用の飛込プールとそこに設置された飛び込み台を使用して水面に向かって飛び込み、その過程の技術を競う競技である。飛び板飛込と高飛込に大別される。男女別に行われ、個人種目の1m飛び板飛込、3m飛び板飛込、10m高飛込と、2名で同時に同じ演技を行いその同調性を競うシンクロナイズド種目の3m飛び板飛込、10m高飛込がある。シンクロナイズド種目は男子1名・女子1名の混合3m飛び板飛込、10m高飛込がある。チームダイビング(団体)は男子1名・女子1名がそれぞれ3m飛び板と10m台を使って競技する。
水球
プールをフィールドとして、7名ずつの2チームで行う球技で、男女別に行われ、相手のゴールボールを入れることで得点を挙げる[35]、ハンドボールに似た競技である。プールの底に足をつけてボールを扱うことは反則である(公式競技では水深2m以上とされている)ため、基本的には立ち泳ぎをしながらゲームを行う。
アーティスティックスイミング
1名(ソロ)、2名(デュエット)、あるいは団体(チーム、通常8名)で、音楽に合わせて技術と芸術性を競う競技である。2018年まではシンクロナイズドスイミング(略称:シンクロ)と呼ばれていた[36]。音楽なしで基礎技術のみを行うフィギュア(通常はテレビ放送されることはない)、音楽に合わせて規定の技術を盛り込んで短時間で演技するテクニカルルーティン、それより長時間で音楽に合わせて技術と芸術性を競うフリールーティンがある。競技会はこの3種目の組合せで行われるが、オリンピックや日本選手権はテクニカルルーティンとフリールーティンで行われる。8〜10名の競技者がルーティンを組み合わせて構成するフリーコンビネーションやハイライトルーティンが行われる競技会もある。女子のスポーツとされていたが、国内では2001年公開の映画『ウォーターボーイズ』のヒットにより「男のシンクロ」も知られるようになった。国際的には男子1名・女子1名のミックスデュエット種目のテクニカルルーティン、フリールーティンが行われている。
オープンウォータースイミング
海・川・湖など自然環境で行われる競泳である。日本泳法の訓練あるいは行事として行われる「遠泳」と似ているように思われるが、遠泳が団体での協調性や泳ぎ切るための精神的側面を重視するのに対し、OWSはいかに早くゴールするかという競技であり、まったく異なる。
泳法に制限がないのでクロール泳法が主体だが、泳ぐ方向や風向・潮流の方向などを判断しながらの競技であるため、その局面に合わせた技術が必要である。天候や潮汐など外部からのさまざまな影響を受けやすいため、危機管理も含めて自然の中で泳ぐための知識や経験も必要とされるのは遠泳とも共通する。世界オープンウォータースイミング選手権では、男女ともに5km、10km、25kmで競技が行われている。1.25km×4名のリレー競技が行われることもある。また、10kmの競技を特にマラソンスイミングと称しオリンピック種目になっている[37]
また、オープンウォータースイミングを含むスポーツとして、トライアスロンがある。
ハイダイビング
人工環境(プール)で行われる競泳に対して、自然環境で行われるオープンウォータースイミングがあるように、飛込プールで行われる飛込に対して、自然環境からの飛び込みを競技化したものがハイダイビングである。競技会では港湾など十分な水深が確保できる場所に、男子27m、女子20mの飛び込み台を設置して行われ、個人種目が行われる。足からの入水に限定されており、安全のため着水点の周囲にダイバーが配置されている。
日本泳法
日本泳法は、主に江戸時代に日本各地で武術として発祥・伝承された技術である。自己鍛錬、自己訓練として行われ遠泳、寒中水泳等の行事を伝統とする団体も多い。他方、競技としても行われる。競技会では、泳法技術の完成度を競う採点競技である泳法競技、おもりを持って立ち泳ぎをして耐久時間を競う支重競技、横泳ぎによる競泳が行われる。毎年開かれる日本泳法大会は、日本水泳連盟公認13流派が集う全国大会である[2]
水泳選手

  1. ^ 逆に、発展途上国の多くではプールを建造する経済的な余裕が無く、競技の環境が整わず、競技の水泳を行う人数は増えにくい。

出典

  1. ^ 広辞苑【水泳】
  2. ^ a b https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202108/202108_05_jp.html 「日本の伝統的な泳法」Public Relations Office of the Government of Japan 2021年8月 2022年3月22日閲覧
  3. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p69-76 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  4. ^ 水泳の水分補給「熱中症、熱射病、日射病のHP」
  5. ^ a b 「スポーツの世界地図」p82 Alan Tomlinson著 阿部生雄・寺島善一・森川貞夫監訳 丸善出版 平成24年5月30日
  6. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p20 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  7. ^ a b 水泳の歴史[リンク切れ]
  8. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p45-47 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  9. ^ a b 「泳ぐことの科学」p49 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  10. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p47-48 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  11. ^ https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h30/zentai/html/honpen/b1_s00_01.html 「スポーツにおける女性の活躍」男女共同参画白書 平成30年版 日本国内閣府男女共同参画局 2022年3月29日閲覧
  12. ^ MD, Claire McCarthy (2018年6月15日). “Swimming lessons save lives: What parents should know” (英語). Harvard Health. 2022年6月10日閲覧。
  13. ^ a b 水上安全法
  14. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p185 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  15. ^ 三 学校体育施設の充実 学制百二十年史編集委員会、2022年1月23日閲覧
  16. ^ 水泳
  17. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p21-22 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  18. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p23-28 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  19. ^ 参考資料① (17645kbyte) - 富山市
  20. ^ 平成 26 年度 七ヶ浜中学校プール改築工事基本設計及び実施設計業務委託 実施設計仕様書
  21. ^ 初の学校プール完成 | 大磯・二宮・中井 | タウンニュース
  22. ^ 体育・スポーツ施設現況調査の概要 文部科学省
  23. ^ 多摩区で水泳の授業に温水プール利用、天候に左右されず水道代削減も/川崎 神奈川新聞
  24. ^ "Drowning Happens Quickly– Learn How to Reduce Your Risk". 疾病予防管理センター。 2014年8月18日閲覧。
  25. ^ Swimming Lessons Information from the Canadian Red Cross – Canadian Red Cross. カナダ赤十字。 2016年6月12日閲覧。
  26. ^ 「泳ぐことの科学」p37-38 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  27. ^ a b 「泳ぐことの科学」p41 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  28. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p90 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  29. ^ 「泳ぐことの科学」p39-40 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  30. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p84-89 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  31. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p93-94 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  32. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p94-95 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  33. ^ 「泳ぐことの科学」p57-58 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  34. ^ 「泳ぐことの科学」p69 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  35. ^ https://www.joc.or.jp/sports/waterpolo.html 「水泳・水球」公益財団法人日本オリンピック委員会 2022年3月22日閲覧
  36. ^ https://www.joc.or.jp/sports/artisticswimming.html 「水泳・アーティスティックスイミング」公益財団法人日本オリンピック委員会 2022年3月22日閲覧
  37. ^ https://www.joc.or.jp/sports/swimming.html 「水泳・競泳」公益財団法人日本オリンピック委員会 2022年3月22日閲覧
  38. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p170 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  39. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p170-171 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  40. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p171-183 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  41. ^ https://news.yahoo.co.jp/articles/84710a8194d8afda061929168f415aa901e330f1?page=2 「スラップスケートOKで高速水着禁止の過去…ナイキ厚底シューズは“技術ドーピング”なのか、それとも技術革新なのか?」THE PAGE 2020/1/17 2022年3月29日閲覧






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