多重化 応用

多重化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/26 03:20 UTC 版)

応用

電信

最初期の電気通信である電信電線を媒体として使っており、それゆえに多重化による節約への関心が高かった。初期の実験で、2つのメッセージを同時に双方向に送ることができ(複信)、当初は両端に電源を必要としたが、後に一方だけで済むようになった。

1870年代、エミール・ボードはヒューズの電信装置を複数使った時分割多重化システムを開発した。1874年、トーマス・エジソンは双方向に同時に2つずつのメッセージ(合計4つ)を送信できる四重電信機を開発した。その後、複数の人々が周波数分割多重化技法を使った音響電信 (acoustic telegraphy) を研究し、そこから電話が生まれることになった。

電話

電話では、地区の加入者線電話回線)をその地区に置かれた遠隔集線装置に集めて多重化している。多重化された信号が大幅に数を減らした電線で電話局電話交換機)まで送られており、遠隔集線装置と各加入者宅の距離よりも長距離を伝送している。デジタル加入者線 (DSL) も同様である。

近年では光ファイバーを使った多重化通信で電話局まで接続するのが一般的で、従来 (POTS) の電話回線を公衆交換電話網に接続するだけでなく、DSLからFTTHへの置換にも関係している。通信プロトコルとしては、Asynchronous Transfer Mode (ATM) などが使われている。

電話回線やデータ回線の全てがまとめられるため、基本的にマルチプレクサ/デマルチプレクサを通さずに接続することはできない(ただしPON方式もあるため、局外にマルチプレクサ/デマルチプレクサがあるとは限らない)。

ケーブルテレビは複数のテレビチャンネルを多重化して送信しており、20世紀終盤以降は電気通信事業者と同様のサービスを提供開始した。IP放送も多重化に依存している。

映像処理

映像信号の編集/処理システムでは、多重化とは音声と動画をインターリービング処理によって単一の同期したMPEG-2システムにすることを指す(時分割多重化)。

デジタルビデオでは、そのようなトランスポートストリームは通常コンテナフォーマットの機能であり、コンテナフォーマットにはメタデータ字幕などの各種情報も含まれている。音声ストリームと動画ストリームは可変ビットレートの場合もある。そのようなトランスポートストリームやコンテナを生成するソフトウェアは一般にマクサー (muxer) と呼ばれ、統計多重化を行う。一方、デマクサー (demuxer) は多重化されたストリームやコンテナを分解するものである。

デジタル放送

デジタルテレビデジタルラジオのシステムでは、複数の可変ビットレートのデータストリームを多重化しており、統計多重化によって固定ビットレートのトランスポートストリームにしている。これによって複数の動画と音声のチャンネルを他の各種サービスと共に1つの周波数チャンネルで送信することができる。

デジタルテレビのシステムでは、複数の標準画質映像 (SDTV) 番組(特に DVB-T、DVB-S2、ISDB、ATSC-C) あるいは1つのHDTV番組に補助的に1つのSDTV番組を加えて、6から8MHzの帯域幅を持つ一つのテレビチャンネル上で送信する。これを行うデバイスを統計マルチプレクサと呼ぶ。いくつかのシステムでは多重化によってMPEGトランスポートストリームを生成する。DVBの比較的新しい規格である DVB-S2 では、複数のHDTVを多重化して1つのストリームにすることができる。もっとも、それ以前のDVBの規格でもより高機能なMPEG-4圧縮ハードウェアを使えば複数のHDTVチャンネルを多重化可能である。

衛星放送ではこれを multiple channel per carrier (MCPC) と呼んでいる。トランスポンダが1つしかないなど多重化が現実的でない場合、single channel per carrier (SCPC) というモードを使う。衛星テレビ放送における多重化は一般に地上の放送局またはアップリンクセンターで行われる。

デジタルラジオでは、Eureka 147IBOCDRM などがチャンネルの多重化を可能としている。DABでは多重化が必須だが(DABではこれを ensemble と称する)、IBOCのシステムでは完全に省略可能である。

アナログ放送

FM放送などのアナログラジオでは、音声信号が送信機変調される前に副搬送波を加える処理を一般に多重化と呼ぶ。この場合の多重化を MPX と略記することもある(ステレオFMなど)。


  1. ^ a b c Bates, Regis J; Bates, Marcus, Voice and Data Communications, ISBN 978-0-07225732-8 
  2. ^ 通信総合研究所 (2001年11月6日). “周波数利用効率1.6 bit/s/Hz,世界最高密度の光多重伝送に成功”. 2012年1月18日閲覧。





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「多重化」の関連用語

多重化のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



多重化のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの多重化 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS