外積代数 歴史

外積代数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/01 07:18 UTC 版)

歴史

外積代数は1844年、『拡大の理論』(Ausdehnungslehre) の包括的な言葉の下にヘルマン・グラスマンによって初めて導入された[注 8]。これはもっと一般に量の拡大の代数的(あるいは公理的)な理論について言及しており、また早い時期における現代的なベクトル空間の概念のさきがけの一つとなっている。アデマール・ジャン・クロード・バール・デ・サン=ブナン英語版もまた同様の exterior calculus の概念を著しており、それがグラスマンに先駆けて成されたものと主張した[6]

外積代数それ自身は、アーサー・ケイリージェームス・ジョセフ・シルベスターの重ベクトルの理論の形式的側面を捉えたいくつかの規約あるいは公理から組み立てられたもので、それゆえに幾何学的な言葉での形式的な理由付けの面を抜きにすれば、命題計算のような「計算」(calculus) の類である[注 9]。 特にこの新たな発展は、それまで座標の観点からのみ説明されてきた性質である次元の概念の「公理的な」特徴づけを可能にした。

このベクトルと重ベクトルに関する新しい理論の重要性は19世紀半ばまでには失われ、1888年ジュゼッペ・ペアノによって詳しく調べられるまで顧みられることは無かった[7]。ペアノの仕事にも幾分不明瞭な部分が残されていたが、世紀が変わる頃には、微分形式の計算にグラスマンのアイデアを応用したフランス高等師範学校のメンバー(有名どころはアンリ・ポアンカレエリ・カルタンジャン・ガストン・ダルブーら)によって主題の統一をみた。

そのしばらく後にアルフレッド・ノース・ホワイトヘッドはペアノとグラスマンのアイデアをもとにして普遍代数を導入する。これは確固たる論理的基礎の上に代数系の公理的な概念を与えることで、20世紀抽象代数学の発展を可能にした。


注釈

  1. ^ Grassmann (1844) では拡大された代数 (extended algebra) として導入されている (cf. Clifford 1878)。おそらく現代的な線型代数学において定義されるところの outer product との区別のために、グラスマンは彼の定義した(今日では便利に外積 (exterior product) と呼ばれる)積 (produkt) を指し示すだけのために äußere(逐語訳すれば外の (outer) あるいは外部の(exterior))という言葉を用いた。
  2. ^ 注意すべきは、多元環 ⋀(V) の任意の元に対して成立が要請される結合性や双線型性とは異なり、ここに挙げられる 3 つの条件は、この多元環の部分空間である V 上でのみ制約として課せられているということである。ここで条件 (1) と条件 (3) は同値であり、条件 (1) と条件 (2) は K標数2 でない限り同値である。
  3. ^ これは標準的な定義の一つ。See, for instance, MacLane & Birkhoff (1999).
  4. ^ 慣習的に、特に物理学では、楔積を
    で定義することがある。この定義は本項での定義とは一致しないが、交代テンソルの話とは繋がりがある。
  5. ^ 主張のうち が全射を全射に写すという部分はより一般に VW が環上の加群である場合にも成り立つ。See Bourbaki (1989, Proposition 3, III.7.2).
  6. ^ このことは VW が可換環上の射影加群である場合にのみ一般化できる。そうでない場合には が単射を単射に写すことが一般には期待できない。See Bourbaki (1989, Corollary to Proposition 12, III.7.9).
  7. ^ このようなフィルトレーションはベクトル束や可換環上の射影加群についても取れる。これはしたがって、上述の直和に対する結果よりもっと一般的な結果である。実際、他のアーベル圏では必ずしも短完全列が分裂するとは限らない。
  8. ^ カネンバーグはグラスマンの仕事の英訳 (Kannenberg 2000) において AusdehnungslehreExtension Theory と訳している。
  9. ^ かつてはこの計算についてさまざまな呼び方が成されており、calculus of extension (Whitehead 1898; Forder 1941) とか extensive algebra (Clifford 1878) とか、近いところでは extended vector algebra (Browne 2007) などがある。

出典

  1. ^ この面積の公理化はレオポルト・クロネッカーカール・ワイエルシュトラスによる; see Bourbaki (1989, Historical Note)。近代的な取り扱いについては、see MacLane & Birkhoff (1999, Theorem IX.2.2)。初等的な取り扱いについては、see Strang (1993, Chapter 5)。
  2. ^ このことのもっと一般な証明はたとえば Bourbaki (1989) に見ることができる。
  3. ^ See Sternberg (1964, §III.6).
  4. ^ Bourbaki (1989, III.7.1) および MacLane & Birkhoff (1999, Theorem XVI.6.8) を見よ。一般の普遍性に基づくより詳細な議論は MacLane & Birkhoff (1999, Chapter VI) およびブルバキの著作の至る所で見ることができる。
  5. ^ See Bourbaki (1989, III.7.5) for generalizations.
  6. ^ J. Itard (1970-1990). Biography in Dictionary of Scientific Biography. New York .
  7. ^ Bourbaki 1989, p. 661






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