地役権 地役権の対抗要件

地役権

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/17 03:25 UTC 版)

地役権の対抗要件

地役権の対抗要件は登記である(177条、不動産登記法3条4号・80条)。原則として登記なくして第三者に対抗することはできない(大判大10・1・24民録27輯221頁)。なお、民法施行法37条も参照。

地役権の効力

地役権者の権利義務

  • 地役権の内容
    地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供することができる(280条)。地役権の当事者関係は承役地及び要役地の各土地権利者(所有者のほか地上権者・永小作人・土地賃借人)に及び、要役地上の地上権者、永小作権者、賃借人は地役権を行使しうる[4]
  • 物権的請求権
    地役権も物権(本権)であり物権的請求権が認められるが、占有すべき権利を含まないため物権的返還請求権は行使できない[21][22]
  • 地代支払義務
    民法には地役権の対価たる地代について規定はない[23]。過去の判例には地役権は無償に限られるとしたものがある(大判昭12・3・10民集16巻255頁)。しかし、学説は一般に地役権は無償のものに限られるものではないとし、対価については設定行為により定まるとみる[4]。ただし、対価は登記事項に含まれず登記することができないため第三者に対抗できず(大判昭13・3・10民集16巻255頁)、この点で囲繞地通行権や賃借権とは異なる[23][4]

承役地所有者の権利義務

  • 地役義務
    承役地の土地権利者は地役義務(忍容義務あるいは不作為義務)を負う[24]
  • 承役地所有者の工作物設置義務・修繕義務
    • 設定行為又は設定後の契約により、承役地所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物の設置義務又は修繕義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人も、その義務を負担する(286条)。
    • 承役地所有者は、いつでも、地役権に必要な土地の部分の所有権を放棄して地役権者に移転し、工作物の設置義務や修繕義務を免れることができる(287条
  • 承役地所有者の工作物の使用
    承役地所有者は、地役権の行使を妨げない範囲内において、その行使のために承役地の上に設けられた工作物を使用することができる(288条1項)。この場合、承役地の所有者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない(288条2項)。

地役権の存続期間

沿革的にはローマ法以来、地役権は永久のものとみられていた[25]。地役権の存続期間については民法上にも規定がなく、設定行為で定めることは可能であるが、不動産登記法上の登記事項でないために登記方法もない[20][21]。登記を肯定する学説もあるが登記実務上困難であるとされる[26]。現代の法解釈においても永久地役権は可能であると考えられており、地役権は承役地の所有権に及ぼす影響が少なく著しく制限するものではないことや地役権には土地同士の利用の調整目的機能がある点がその理由として挙げられる[20][14]。なお、溜池が埋め立てられた場合の溜池からの引水地役権など行使の目的が失われる場合には地役権は消滅する[25]


  1. ^ a b c 内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、176頁
  2. ^ a b c d 近江幸治著 『民法講義Ⅱ 物権法 第3版』 成文堂、2006年5月、282頁
  3. ^ 川井健著 『民法概論2 物権 第2版』 有斐閣、2005年10月、209頁
  4. ^ a b c d e f g h i j 川井健著 『民法概論2 物権 第2版』 有斐閣、2005年10月、211頁
  5. ^ 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法2 物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1996年12月、256頁
  6. ^ 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法2 物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1996年12月、261頁
  7. ^ 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法2 物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1996年12月、258-259頁
  8. ^ a b c d 川井健著 『民法概論2 物権 第2版』 有斐閣、2005年10月、210頁
  9. ^ 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法2 物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1996年12月、256-257・259-260頁
  10. ^ a b c d e f 近江幸治著 『民法講義Ⅱ 物権法 第3版』 成文堂、2006年5月、284頁
  11. ^ 川井健著 『民法概論2 物権 第2版』 有斐閣、2005年10月、210-211頁
  12. ^ a b c 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法2 物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1996年12月、258頁
  13. ^ 近江幸治著 『民法講義Ⅱ 物権法 第3版』 成文堂、2006年5月、283頁
  14. ^ a b 川井健著 『民法概論2 物権 第2版』 有斐閣、2005年10月、215頁
  15. ^ 川井健著 『民法概論2 物権 第2版』 有斐閣、2005年10月、215-216頁
  16. ^ 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法2 物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1996年12月、259-260頁
  17. ^ 川井健著 『民法概論2 物権 第2版』 有斐閣、2005年10月、216頁
  18. ^ a b 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法2 物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1996年12月、263頁
  19. ^ a b c 川井健著 『民法概論2 物権 第2版』 有斐閣、2005年10月、212頁
  20. ^ a b c 近江幸治著 『民法講義Ⅱ 物権法 第3版』 成文堂、2006年5月、287頁
  21. ^ a b 川井健著 『民法概論2 物権 第2版』 有斐閣、2005年10月、214頁
  22. ^ 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法2 物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1996年12月、260頁
  23. ^ a b 近江幸治著 『民法講義Ⅱ 物権法 第3版』 成文堂、2006年5月、289-290頁
  24. ^ 近江幸治著 『民法講義Ⅱ 物権法 第3版』 成文堂、2006年5月、286頁
  25. ^ a b 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法2 物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1996年12月、265頁
  26. ^ 川井健著 『民法概論2 物権 第2版』 有斐閣、2005年10月、214-215頁
  27. ^ 川井健著 『民法概論2 物権 第2版』 有斐閣、2005年10月、219頁


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